盛田出人の場合その2 08
第十五節
「しかもこの能力は人の精神を操ることまで出来たのだ!」
「…」
「哀れ女子高生となってしまった父親だが、元々働かんし暴力しか取り柄が無いし、バクチだ酒だ女だと家計の浪費マシンにしかなってなかったから、いなくなってもマイナスは何もない。むしろ浪費と食費が浮く」
「…」
「女子校生とされた父親は精神を操られ、どこかで身を粉にして働きながら一生自分の家族に生活援助を続けさせられているのだ!」
渋い顔をしている巣狩。
「…どんな方法で?」
「え?」
「そりゃどんな方法だよ。援助交際かキャバクラか、さもなきゃ風俗か」
「方法までは知らん。だが、かなりの額だったらしい。水商売系かもな」
「よくもまあ、そんだけムチャクチャなことを思い浮かべられるもんだ」
「…一番合理的に考えた結果だが」
「男を女にして精神的に操れるだと?」
「だってそうとしか…」
「そんな恐ろしい力があったなら人類はみんなそいつに操られて滅びてるよ!」
「しかし…」
「その金の出所については知らん。だがこうなってくると善意のあしながおじさんってところだろ。オレたちの出番じゃない」
「ちなみに気持ち悪いんで全額寄付したらしい」
「ふん…お前の推理が正しかったとしたら、女になってまで稼いだのに無駄になってるな」
「…事件解決…ってことなのか?」
「元々事件らしい事件なんぞ起こってない。単なる偶然の積み重ねだ」
第十六節
目の前でバリバリと音を立ててプレハブ小屋が壊されて行く。
「…これで物証も全て無くなり、事件は迷宮入りかあ…」
しみじみ盛田がつぶやく。
「だから事件なんぞ起きとらんと言っとろうが」
「…これも山の様にある事件の1つなんだが」
「馬鹿馬鹿しい。常識的に考えれば不思議なことなんぞ何も無いじゃないか」
「…とはいえ、一人の人間が行方不明になってることだけは間違いない」
「年間に我が国で起こってる行方不明事件は届け出があっただけで二万五千人だ。その内の一件というだけにすぎん」
「いいよなお前はそうやって割り切れて」
「一つ一つの事件にいちいち思い入れたっぷりにやってたら身が持たんぞ」
「まあな。…決定的な事案だと思ったんだがなあ」
「もしかして超常現象のか?」
「…ああ」
「怪奇ドラマの見過ぎだ。次の事件行くぞ」
「そうだな。次はこれよりもう少し複雑だ」
「そういえば三太郎の苗字って何なんだ?聞くのを忘れてた」
「掬井図というらしい」
「何だって?」
「『すくいず』だ。掬う井に図だ。変わった苗字だ」
「聞いたことも無いな」
「明治時代に適当につけられた苗字の1つで、ほぼ現存してないらしい。昔は表記が違って「すくいいず」と発音したらしいが」
「どうでもいい」
「仕方が無い。次の事件行こう」
「…まさか次の事件は、男が女にされてセーラー服にされた事件…とか言うなよ?」
「何で分かったんだ!?予知能力か?」
巣狩は“やれやれ”というジェスチャーをした。




