盛田出人の場合その2 06
第十一節
「まあ…でも、その女の子がおっさんを自称する意味って何だよ」
「知るか」
「いや、知るかって…」
「確かにこの子は現状だと手がかりが全く無い。入院させられた後の取り調べでも遂に自分の本名も名乗らなかった」
「一応、指紋は取ってあるんだよな?」
「一週間目に逃亡してそれっきりだが、確かに部屋に残されてた指紋を参考までに採取はしたが…三太郎と同じ指紋が出た」
「ほれみろ」
「見舞いに来たんだろ?行方不明の三太郎が。まさかこの女の子が三太郎本人で、指紋が男時代のものそのまんまだった…なんてことは言うなよ?」
「違うのか」
「…じゃあ、オレの推理な」
「おう」
「男女に小屋に放り込まれた三太郎はある程度の抵抗は試みるが、二人掛かりでかなり手ひどく殴られて気絶してしまう」
「うん」
「問題は一か所しかない出口から、監視カメラに映らない様にどうやって出たかだ」
「出てない。女の子になったからだ」
「黙れ。確かに壁も窓も開かないプレハブだ。しかし…」
巣狩がすたすた歩いて部屋の隅の床板を持ち上げる。
「…床板が開く」
「…!?これは」
第十二節
「建て付けが悪くてここの床板だけ固定してなかったらしい。ここを通れば監視カメラに映らない出口になる」
「ちょっと待て!」
「何だよ」
「じゃあ、この疑問にどう答える」
どこからか出てきたサインペンでまた書きつける。
1 三太郎が床板を外して脱出したとすると、何故監視カメラを避ける必要があったのか
2 謎の少女の正体は?
3 三太郎は何故行方不明になったのか?
4 謎の少女も床板を外して入って来たのか?何のために?
5 床下に人が出入りした証拠は残っているのか?
「どうだ?」
「いいだろう。順番に答えてやる」
「ああ」
「まず「1」だ」
1 三太郎が床板を外して脱出したとすると、何故監視カメラを避ける必要があったのか
「簡単だ。あの男女に手ひどく痛めつけられた。出口で見張ってるかもしれないとなれば出口以外から脱出を試みるだろ」
「床板について知ってたってのか?」
「脱出の方法を模索すればこんな広さの小屋で見つけられてもそれほど不自然じゃないだろ」
2 謎の少女の正体は?
4 謎の少女も床板を外して入って来たのか?何のために?
「それこそ「偶然」だよ」
「「偶然」!?」
「謎の少女も今じゃ行方不明で何とも言えんが、典型的な家出娘ってところだろ」
「はあ」
「三太郎がどこに行ったのかは分からんが、外れてた床板から暖かそうな小屋に入り込んで中で寝ただけだ」
「入り口があるのになんで床下から入るんだよ」
「正にそこが心理の盲点さ」




