盛田出人の場合その2 04
第七節
「ここからがオレたちの仕事ってことか」
ポキポキ指を鳴らす盛田。
「監視カメラの映像しか証拠が残っていないんだが、小屋の中にはあちこちに血しぶきや爪や皮の破片が散乱してた」
「相当手ひどくやられたらしいな」
「まあ、自業自得なんだがな。それらのDNAは三太郎のものと一致。ここに担いで運び込まれた映像があるから、「ある時点まで」はこの小屋の中にいたことは間違いない」
「うん。そこからが問題なんだよな」
「その通り。監視カメラには、謎の男女が出てきていずこかに去って行く映像が残されてる」
「うん」
「だが、三太郎が小屋を出た映像は残っていない」
「…」
「理論上はこの小屋の中に三太郎がいなくてはおかしい訳だ」
「普通に考えればそうなる」
「だが、翌朝発見されたのは制服姿の女子高生だった」
「本人とは似ても似つかぬ美少女だったらしいな」
「…そりゃそうだろ。ちなみに都内のとある共学校の女子の制服とほぼ同一であろうというところまで特定はされてる」
「煮え切らんな」
「この頃の制服はパーツが細かく分かれるからな。ベストなんぞは別に指定の物を使っていれば学校を通した一斉注文でなくても構わない」
「…そういうもんなのか?」
「破損したりした場合、スカートだけほぼ同じデザインのものをオークションで落としてそのまま使用する例も珍しくないらしい」
「はあ」
「この『謎の少女』…とりあえずこう呼ぶな…の身に着けていた制服も、九割九分某共学校のもので間違いないんだが、完全に一致しているかどうかは微妙らしい」
「ほぼ間違いないと」
「問題は、この学校の女子の予備制服のストックは減ってないらしい」
「…それこそ一式取り揃えたんじゃないのか?」
「現役女子高生にして制服マニア…ってのがお前の見解なんだな?盛田」
考え込んでいる盛田。
「折角なんで整理しよう」
手持ちの紙に乱暴に文字を書き始めた盛田。
第八節
「事件の進行状況はこんな感じだな」
1 謎の男女、三太郎の三人が小屋に入る
2 三太郎が殴られる(飛び散った血のDNAなどによる物証)
3 男女が小屋を出る
4 翌朝謎の少女が発見される
5 三太郎は行方不明
「…ああ。よくまとまってる」
「先に俺の推理からいいか?」
「どうぞ」
巣狩が促した。
「この男女の正体は不明だが、恐らく三太郎の暴力を見かねて駆け付けた勝手連の自警団みたいなもんだ」
「ほう」
「警察も頼りにならんから三太郎を成敗しに来た」
「…」黙って聞いている巣狩。
「小屋に放り込み、ボコボコにした上、この男女が特殊能力を使った」
「…何だと?」
「その能力によって哀れ三太郎は、いかつい大男から可憐な美少女に変身してしまったのだ!」
「…」目をつぶって頭を振っている巣狩。
「…というのが俺の推理だ」
「…オレはなんて答えたらいいんだ?」
あきれ果てた、という体で巣狩が答える。




