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盛田出人の場合その2 03


第五節


「隣人の証言によると、いつもにもまして怒鳴り声が凄かったらしいが、何かが叩きつけられたり、割れたりする音がしたかと思うと三太郎が放り出されてきた」

「その際にドアが破壊されてる」

「うん。続いて日中訪ねてきた女が出て来ると、(たちま)ち三太郎の腹に一発喰らわせて気絶させ、そのまま抱えて運び出す」

「…スゲエな。大人の男だよな?」

「健康診断を受けてるわけじゃないが、三太郎は生まれつき体格は良かったらしい。身長一七五センチ、体重は八十から九十キロはあった」

「…八十キロだと?重量挙げの選手でもそんなのひょいひょい持てんぞ」

「ああ。しかもぐでんぐでんに意識がなくなってる人間は本当に重く感じるからな」

「何者だその小娘は?」

「何度も聞き込みをしたらしいが、女子高生くらいにしか見えなかったということで一致している」

「証人は何人だっけ?」

「二人だな。で、自宅近くの目撃証言はここまで。後は現場だ」

「それがここだな」



第六節


 現場げんじょうとなったプレハブ小屋の中を歩き回りながら続ける巣狩。


「その犯人にとって幸か不幸か、この小屋は近くの自動販売機を監視するために設置された監視カメラの守備範囲だった」

「ギリギリ映りこんでいるくらいではあるがね」

「自宅からは約五十メートル。この間には証言者もいないし、監視カメラも対象外」

「この小屋に放り込まれてからがスタートって訳か」


 べきべきとしなる床を歩きながらスライドするドアのそばに立つ巣狩。


「出入り口はこのドアのみ。反対側にはない」

「で、この小屋はなんだ?」

「近所の工事現場の休憩場所として臨時に設置されたものだ。椅子や机なんかは工事が終わったんで運び出してある」

「どうやって入った?」

「怪力でドアを開けた際にカギ部分がひん曲がって破壊されてる」

「じゃあ、密室とは言えんな」

「監視カメラで出入り口を見張ってるから密室と同じだ」

「反対側から出られるんじゃ?」

「反対側には出入り口が無い」

「そこは…プレハブなんだから「壁」を取り外すとか」

「専門家の鑑定だと、可能は可能だが少なくとも当日その様なことが行われた形跡はないらしい」

「む~ん」

「この小屋は裏の家の悩みのタネでな」

「ほう」

「割と何度も使われたらしいが、週末ともなると夜通しどんちゃん騒ぎをやるんでうるさくて仕方が無かったらしい」

「…小屋だもんな」

「業者によると周囲に民家も何も無い更地でよく使われるタイプだったんで、その調子で騒いじまったんだと」

「あるかもな」

「抱え上げた大男を放り込む小娘と、付いてくる男が監視カメラに映ってる」

「…不鮮明で良く分からんな」

「シルエットが確認出来るくらいだ」

「…不思議なことに、ここで三太郎が煙の様に消え失せる」



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