盛田出人の場合その2 01
第三章 盛田出人の場合その2
第一節
「こちらです」
地元警察の壮年の警察官が案内してくれる。
「どうも」
公安警察内に設置された部署(名称未決)に所属するたった二人の所属刑事、盛田出人と巣狩颯太が案内されてきた。
「じゃあ、私はこれで」
カラカラと戸を閉めて出て行ってしまう警察官。
「…いいのか?」
盛田が不安がっている。
「何が」
「いや、勝手に現場を占拠して」
周囲を見渡す巣狩。
何の変哲もないプレハブ小屋だ。
「構わんさ。所轄の所長には話を通してある」
手元の資料をめくっている巣狩。
「…っつってもさあ。公安のデカが現場を荒らすのも…」
「機捜も鑑識も仕事は終わってる。この部屋に物証なんぞ何一つ残っちゃいねえよ。現場写真だって展覧会開けるほど撮ってある。心配すんな」
「ならいいが」
ぺらり、ぺらりと書類をめくる音だけが響く。
第二節
「盛田はこの事件について完全に知ってるんだな」
「…いや、余り。ただ、現場に配布してた「該当事案」条件を満たしたってんで通報を受けたから来た」
「…これまでもずっとそんな調子で事件を採取してたのか?」
「ああ。手当たり次第に」
「…やれやれ。じゃあ、この事件については報告書を穴が開くまで読んだオレの方が詳しいってことでいいんだな?」
巣狩が念を押した。
「そういうことになる。ここはひとつ頼むよ」
軽くため息をつく巣狩。
「やれやれ。まあいいだろう。せっかくだからもう一度繰り返そう。目撃者が多いから全体像を浮かび上がらせるのはそれほど難しくない」
「お、おう」
かつかつと歩き回りながら巣狩が話し始める。
「家族構成は姉が一人、弟が一人、両親の四人」
「うん」
「ついでに猫が一匹そして、…父親の…三太郎は虐待の常習犯だった。過去に何度も通報されている」
「…全く、警察は何をしてるんだ」
彼ら自身が警察なのだからこれはブラックジョークである。
「所轄署は『民事不介入』を盾にこの件に関わらない様にした」
「やれやれだ」
「訪問したことすら消されてたそうだ」
「ひどいな」
「児童相談所にも通報されているが、三度の訪問は全て門前払いされている」
「…彼らは警察って訳じゃないから強制捜査までは出来んからな」
「…くそが…」
唇を噛んでいる巣狩。




