鬼頭真琴の場合 08
第十五節
スカートの頼りない感触に、しっかりした足首までの靴下と女子の通学用革靴の履き心地がアンバランスだ。
制服に溶け込むかのような緑なす黒髪が背中まで流れている。
「はしば…くん…」
見事なまでに「お揃い」の制服に身を包んでいるカップル。
「はい完了。ま、こんなもんでしょ」
「鬼頭…あんた…」
少し背が低くなっているのが分かった。年齢設定は十六~十七の女子というところか。
身体の内側に腕を巻き込むように添えてしまう。挙動も女子っぽく操られているらしい。
「むっふふ~可愛いよ可愛い。そうやって男の子が自分の可愛らしさに戸惑ってるところを見るのが最高の娯楽でさぁ…」
恍惚の表情の真琴。
「うりゃっ!」
思い切り橋場のスカートをめくる真琴。
「きゃーっ!」
反射的に悲鳴を上げて、ばさり!と空気を巻き込む音をさせながら舞い上がるスカートを必死に抑え込む。
素脚が大いに露になり、スリップがむき出しとなって一瞬だけパンティが見えた。
「あひゃひゃひゃひゃひゃ!あー可愛い可愛い!サイコ―!あははははは!」
ひょい!ひょい!と距離を取った真琴がパンパン手を叩いて喜んでいる。
変身決着ではないので、まだまだ終わってはいない筈なのだが、橋場は余りの実力差にすっかり戦意喪失していた。
「…っ!」
ふと気づくと目の前に真琴が迫っている。
ぐいっと清楚なセーラー服姿の女子高生と成り果てた橋場を抱きしめる真琴。
「あ…」
ジーンズ姿にボーイッシュで背が高いので美少年と美少女のカップルに見えなくもない
ほぼ同じ身長だったが、橋場が性転換されたため、見上げる様な格好になってしまっている。
「嗚呼、いい匂い…とっても可愛いよ…それじゃ…」
ドン!と体当たりしてくる美夕。
「駄目ぇ!」
第十六節
不意を衝かれた…ということなのか、真琴と橋場…セーラー服の女子高生姿の…がほどけた。
「…びっくりしたあ…。メタモルファイト中とはいえ、一般人のくせしてメタモルファイターに直接攻撃なんてあんた勇気あるねえ」
呆れて言う少年みたいな見た目の真琴。
「どうして来た!」
長い髪を振り乱す女子高生。声こそ甲高いが、口調までは「武士の情け」か男のままだ。
「もう駄目!限界!ここまでにして!」
真っ赤になった目で二人を睨みつける美夕。
「あーはいはい。本当はここから女子校仕込みのテクニックでメロメロにする予定だったのにさー」
ぐすぐす立ち尽くして泣き出す。もうバトルと言う雰囲気じゃない。
「…こりゃ今日はここまでみたいね」
「すまん」
「いーってこと。勝負はあたしの勝ちでいいよね?」
「無論だ」
セーラー服の女子高生がシブく答えるのがシュールである。
きゅっと引き締まったウェストから綺麗に広がって垂れ下がるひだスカートが織りなすプロポーションが実にフェミニンである。
「ならもう戻れるよ。解除条件無しで」
「悪かった」
「彼女大事に。お墨付きあるからまた戦ってね」
ウィンクをする真琴。しなれているのか。
「そうしよう」
真琴はポケットに両手をインすると、とてとて2~3歩あるき、唐突に振り返った。
「最後に一つ」
「何だ?」
「もっと強くなっといてもらえる?張り合いないからさ」
と、いいながらも楽しそうな表情である。
これが橋場たち一行と、最強ファイター鬼頭真琴との出会いであった。
*橋場英男 メタモル・ファイト戦績 六勝三敗一引き分け一無効試合 性転換回数十回
(練習試合除く)
*鬼頭真琴 メタモル・ファイト戦績 三〇五勝0敗0引き分け0無効試合 性転換(変身)回数0回




