鬼頭真琴の場合 07
第十三節
「美夕、やめろ。絶対に勝てない」
「なんで橋場くんまでそういうこと言うのよ!」
「戦うってのはマジで殴り合うって意味だよ。メタモルファイター同士は互角でも、一般人とは比べ物にならない。絶対に勝てない」
真琴は加減を知ってそうではあるが、その気になれば凄惨なことになるのは容易に予想できる。
「聞いたかな?縁が無かったんだよ。もう帰って、どうぞ」
「…いいもん」
「何が?」
「あたし、橋場くんが一時的に女になっちゃってもガマンするから!」
「ガマンねえ…ねえ、あたしだったら女同士で一緒にデート行くけどどうよ?」
「…余り惹かれんな」
「冗談だよ。でも、少なくともあたしは「ガマン」はしないね。同じメタモルファイターとしてはさ」
「あたしだってガマンしねえっつてんだろうがこのドブスがぁ!」
何だかえらいことになってきた。
「(泣きながら)…もう大丈夫だから。メタモルファイトしてても負けてもいいから…」
最後の方は良く聞こえない。
真琴はふうとため息をついた。
「何よこれ?あたし悪役?」
「今はそうだな」
橋場が追い打ちをかける。
「ふんだ。今日のところは引いてやるわ。でも対決はしてよね?それくらいはいいでしょ」
「…受けよう」
距離を取る二人。
第十四節
「一応言っとくけど、あたし強いよ」
「…だろうな」
真琴は高校生の女子にしてはかなり背が高い。橋場と同じくらいだ。
先日のリーゼントとは体格差があったが、橋場となら互角だろう。
「方法は?」
「…条件決着ってこと?まあ、ガチでもいいけどどっちかが投了したらそれでいいわ」
「解除条件は?」
「無し無し。決着が付いたらそれまで」
「了解した」
「じゃあ受けてくれる?」
「受けた」
俊足で間合いを詰め、回し蹴りを放つが払われる。再び距離を取る。
「へー…基本は出来てるんだ」
「そっちこそ。誰に習った」
「習ってない」
「?」
「自分で言うけどあたし天才みたいでさ。理屈じゃなくて感覚で戦えるわけよ。後で理屈説明されたけど、言われなくても勝手に出来たから」
きゃーっ!という悲鳴があがる。
美夕の声だった。
橋場の学ランがぐにぐにと変形し、あっという間にセーラー服姿の女子高生になってしまう橋場。
「あ…あ…」
負けた自覚すら無い圧倒的敗北だった。




