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鬼頭真琴の場合 06


第十一節


「どゆこと!もう戦わないって言ったよね!」

「まだ戦うなんて言ってない!話を聞いてたところだ。ちゃんと丁寧に断ろうと思ってたんだよ!」

「信じらんない!彼女いるのに別の女とこんな!」

「これは!…あんたも言ってくれよ!」


 思わず真琴に助け船を求めてしまう橋場。


 ぽりぽり頭をかく真琴。


「あー…はっきりいってちょっとうらやましいくらいに誠実な彼だよ。誰もみてないのに、彼女がいるからあんたみたいなのとは話してるところを見られて誤解されたくないってちゃんと言ってたから」

「…」


 美夕がふるふる震えているのが分かる。こりゃ修羅場だ。


「これで分かってもらえた?」


 相変わらず飄々としている。


「ということで断りたい」


 なるべく間をおかずに断っておきたい。


「何でよ?彼女公認でメタモルファイトってところじゃない」

「だからもう余計な戦いはしない。バトルマニアならそれなりに知ってる。戦いたいならそいつらとやってくれ」

「ふん…まあその話はうけたまわっておくけど、あたしはあんたと戦いたい」

「なぜ?」

「何故かな?わかんないけど。どうよ彼女さん」

「あたしは潮崎美夕しおざき・みゆって名前があります!「カノジョ」じゃありません!」

「じゃー美夕さん。やましいところは無いから一試合やらせてよ」

「なっ!」


 真っ赤になる美夕


「あ、ごめんごめん。表現が下品だったかな?でもお願い」

「どうせあんたも相手を女にして女装させる能力持ちなんでしょ!?」

「そりゃそういう能力だもん」

「駄目!絶対駄目!」



第十二節


 考え込んでいる真琴。腕を組んで目をつぶっている。ぱっ!と目を開いた。


「提案なんだけどさ、あんたがた別れなさい」


「は?」

 これは橋場。


「ここまで心が離れてたらどうせ続かないよ。こんなに誠実な彼氏の言い分を全く聞こうとせず、一方的に自分の主張ばっかりする自分勝手女と一緒にいたら不幸になるばっかり」

「うるさい!」

「何を言い出すかと思えば…挑発してるつもりか?」

「違うよ。提案だよ提案」

「断る。ついでに対戦も断る」

「本当に誠実なんだね。益々好きになったわ」

「…何だって?」

「このうるせー女と別れてあたしと付き合ってよ」


 一瞬沈黙


「はぁ?」

「あたし欲しかったんだよねー。メタモル能力持ちの彼氏がさー」

「な…にを言い出すんだよ」


 余りの発想の飛躍についていけない。


「だって心置きなくケンカして相手…つーか彼氏を女の子にしてお仕置き出来るじゃん?メタモル能力持ちならどうせ戻れるし」

「…そういう理屈かよ…」

「そーそー」にこにこ。

「何言ってんのよ!そんなの認めない!」

「でもあんた、自分の彼氏が女になったり女装させられたりするのがイヤなんでしょ?でもあたしは別に嫌じゃないもん」

「え?」

「だってあたし自身がメタモル・ファイターだしさ。言ってみれば同じ職場にいるみたいなもんだから、相手に対して理解があるわけよ。必然的に」

「…わけわかんない…」

「普通に考えても、メタモル能力持ちの彼氏と一般人の彼女のカップルなんて続く訳ないわ。メタモル能力持ちはメタモル能力持ち同士、仲良くやろうよ」

「…」

「何を考えてるのよ橋場くん。まさかその女の言う事きくつもりじゃないでしょうね」


 漆黒に血の様に紅いスカーフの制服が今は鬼に見える。


「これは彼女のためでもあるんだって。こんな特殊な立場のあんたに付きあわせること無いってば。あたしと付き合うかどうかは後で決めてくれてもいいけど、ここはスッパリ別れてバトルしょーよ」

「…別れない」

「ん?」

「あたし別れない!絶対に別れない!」


 肩をいからせて美夕が叫んだ。


「おやおや?まさかとは思うけど人に取られそうになったら途端に惜しくなっちゃったかな?」

「…るせーよ」

「オトコはあんたの持ち物でもオモチャでもねーんだよ。余り勝手に振り回すんじゃないの」

「黙れよビッチが」

「威勢がいいこと。メタモルファイターと一般人が戦ったらどうなるか分かってる?」



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