鬼頭真琴の場合 03
第五節
「…分からんけど、練習試合以外だと十試合も無いと思う」
「今までどんな格好したのよ」
「なあ、もういいだろ?」
「教えてよ!」
金切声だった。
「お前さあ…男の立場考えろよ。こんなこと彼女に向かって言わなきゃならんとなったらどう思うよ」
「…恥ずかしいんだ」
「当たり前だろうが!」
「でも知りたい。教えてよ。じゃなきゃ別れる」
「そういう言い方は卑怯だろうが」
「いいから教えて」
大きくため息をつく橋場。
「…いつもつるんでるアキラってのがブレザーの女子高生の制服能力を持ってて、初対戦の時に一度食らった」
「…!」
「それから…普通の普段着みたいな恰好」
「え?」
「こちとら女の服の名前なんか詳しくねえんだよ。長いスカートの格好だ。それからこの間廃工場でお嬢さま学校の制服着せられた。…ああ、なりゆきで飛行機のパイロットと対戦する羽目になって…CAっての?あれの制服も着せられた。…大体こんなもんだ」
びっくりしてワナワナ震えている美夕。かなり長い間があった。
「CA?客室乗務員?キャビンアテンダント?」
「全部同じだ」
「あの恰好したの?あの制服の。スチュワーデスさんだよね?」
「…ああそうだよ。悪いか」
「悪いかって…紫色のスカーフして、紺にピンストライプのスカート履いて、黒ストッキング履いたってこと?」
「それ以外ねーだろが」
ドン引きしている美夕。
第六節
「も一度聞くけど、女子の制服とか結構着せられてるよね?」
「…まあな。けどこっちもやり返してるぞ。てゆーか俺は殆ど負けたことねえの!たまに負けるくらいだ」
「でも、女子の制服とか着せられてるんだよね?ドレスとか」
「だからドレスは今回くらいだって。そういう能力持ちがあんまりいないから」
「それって…ブラもパンティもしてるんだよね?」
「…してるよ。ついでにその…なんだ、肌着とかも」
「スリップも!?」
「悪かったな!こっちだって好きであんなもん着てんじゃねえよ!」
「それって女装ってことだよね?」
「女装と言えば女装だが…」
「身体も女になるんだよね?」
「…ああ、なる」
否定しても仕方が無い。
気まずい沈黙。
「その…おっぱいとかあれとか身体に出来て、そこにブラとかシュミーズとか着せられて女子の制服姿になっちゃってるってことだよね?」
「うるせーよ。皆まで言わすな」
「…変態…」
「…やっぱりそう言うのか」
「だって変態じゃない!おかしいよ!橋場くん男の子でしょ!」
「うるせえよ!何度も言わすな!こっちだって好きで女になってブラジャーだの何だの付けてんじゃねえ!相手にやられるから服が変形してスカートになるのをガマンするしか無かったんだろうが!」
考えがまとまらず、表情をぐるぐる変えながら頭を振ったりうなずいたり色々している美夕。
「…幻滅したか?」
「…ちょっとね」
軽く吐き捨てる様に言った。
「俺たち終わりか?」
「橋場くん、もうメタモルファイトしないって言って」




