表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雨の日


 昼間だっていうのに外は暗い灰色でとても寒そうだ。


隣の建物の薄汚れた白い外壁を、次々雨が流れ落ちていく。

裸足で窓際に立つとフローリングの床は冷たくて、足先がツキツキ痛んだ。



雨で濡れた窓の向こうには、工事中の覆いをかぶった背の高い建物がぼんやり歪んで見え、

遠く下の方に無限に伸びる入り組んだ路地は真っ暗で誰もいない。

パチパチと雨が窓をたたくだけの、静かで暗くてさみしい昼間。


暖かい珈琲の香りが、数字的には広くない、気持ち的に少し広くなった部屋をあっという間に満たした。


椅子に座って暖かくて柔らかいロールパンにバターを塗る。

一口かじると柔らかいパンの香りと塗りすぎたバターの冷たさとしょっぱさが口に広がって、

それから急に鼻の奥がツンとした。

目の奥がじわっと熱くなって、喉の奥もじわっと熱くなって、もう何の味もわからない。


この部屋は暖かい。

なのにわざわざこんな雨の中に出ていくなんて、

明日だってかまわないんじゃないの?


明日だったらもっと違ったかもしれないのに。



「バカだね、こんな日にさよならをしたら悲しいに決まってるよ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ