存在家族
不在家族の対になってます。
僕はとある国の、とある街で生まれた。確かに産声を挙げ酸素を肺に掬い上げる。
その感覚はもう、記憶にも無いけど今もこうして呼吸を無意識に行っているし、意識して呼吸を止めると21秒程度で限界を来たしてしまう。
つまり、僕は人間だ。
なのに、僕はいない。
生まれた時から一人だった様な気持ちになる程長い間一人ぼっちだ。
食卓には、必ず僕の席が設けられている。お父さんとお母さんの対面。お兄ちゃんは世の中で言う所の上座に座る。妹は僕の隣、僕は左利きだから、手があたってしまい少し邪魔になるが、致し方ない。冬になって、食卓が和室の居間になっても、その形成が崩された事は無い。
しかし、僕の眼前に温かいご飯が盛られた茶碗が差し出される事は無かった。
勿論僕にも部屋はある。うんと小さい頃には妹と同じ部屋で寝ていた。二段ベッドの上に僕は寝ていた。妹は寝付きが悪く、ぐずる程幼くはなかったけれど、不安に陥る程の子供らしさは持っていた。そんな日は、よく子守唄を歌ってあげる。
すると、妹はすやすやと寝息を起てて穏やかな眠りにつく。
夜中にお母さんが妹に、布団をかけ治してやるが、僕にはそれが無い。長方形に畳まれた、タオルケットを被る事もなくその侭睡眠におちる。僕への子守唄は誰が歌ってくれるのだろうか・・・少し哀しくなってしまう。
そんな寝床も妹の成長期と共に
失われてしまった。
今の僕はお風呂場で寝ている。
ふかふかのタオルケットは沢山あるし、調度僕一人が横になるスペースを確保出来るからだ。
一度和室で寝たけど、あそこは頂けない。イグサの匂いと、畳みの間食が僕には会わないのか睡眠を貪る事は出来なかったのだ。残念ながら。
勿論僕にも勉強部屋はある。
僕は学生では無いけれど、お兄ちゃんと同じ部屋に机を有している。
そこには僕自慢の色鉛筆と赤と青のペンが置かれている。それは数少ない僕の持ち物でもある。お兄ちゃんの机には、アルバイトをして貯めたパソコンや穴が均等に空けられた、紙が所狭しと置かれていて、いつの日か僕の机に境界線を越えて、押し寄せてくるのでは無いかと不安になる。だけど、お兄ちゃんは優しいからそんな事はしない。
自慢の家族なんだ。
お母さんは、僕の為にこっそりご飯を用意してくれる。冷蔵庫にはポテトサラダ、レンジにはチキンのソテーが、お鍋にはコンソメスープ、炊飯ジャーには寄り合わせで調度一人前のごはんが入ってる。僕はそれを食べる。料理が得意なお母さん。
お父さんは、僕の為にこっそり
お布団を用意してくれる。枕にはお中元でもらったイタリア製のタオルケット贅沢に畳んだ侭使用出来るのは、僕の自慢だ。
朝には必ず干してくれるから、いつだって、ふかふか加減を果たしてくれる。律儀ぶかいタオルなのだ。
だけれど、僕は妹と言葉を交わした事が無い。
慌ただしく、僕の寝室兼洗面所に妹が来る。寝癖が酷いのかドライヤーとブラシを使い必死にブローをしている。おはようと言う言葉はいつもドライヤーの音に邪魔されてしまう。
いつ迄も子供だと思ってたけど一人前のレディなんだな。
だから、僕は静かに寝室を後にした。
読んで頂き、ありがとうございます・∀・一応終わりです。尻切れトンボかもしれませんが、他の家族目線を書くかもしれません・∀・;。ご感想いただけたら幸です




