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第2回:そもそも何故テンプレ作品が流行したのか?

 第2回の議題は「そもそも何故テンプレ作品が流行したのか?」です。


 第1回でテンプレ作品が批判される理由などについて書きましたが、そもそも何故テンプレ作品というのはここまで流行したのでしょうか。というところを少し考えてみました。第2回にして既にエッセイタイトルから離れている気がしなくもないです。

 だからどうという訳ではないのですが、以下の2点をメインに推察と憶測と独断と偏見を駆使してみました。第1回に続き長いです。



1・流行から批判への流れ

2・流行の理由



 興味を持って頂けましたら、少々のお時間、お付き合い下さい。



1・流行から批判への流れ

 理由について考える前に、ネット小説やライトノベルの流行がどのように「流行って批判されるに至る」のか、私なりに考えてみました。それを少し確認していきたいと思います。


【流行以前】

 流行の源流となる作品が現れます。

 VRMMOなら『ソードアート・オンライン』や『.hack』、異世界トリップは『ゼロの使い魔』、妹ものは『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』、基本的に最弱な能力が限定条件下では最強になるタイプだと『とある魔術の禁書目録』などでしょうか。今回はあくまで近年のラノベの源流であろう作品のみに絞りました。

 これらの作品が人気を得て、それを見ている人々は色々なことを考えます。

 読み手は「こういうのがあるのか、面白い」「こういう作品をもっと読みたい」

 書き手は「面白いなあ、自分もこういうの書いてみたい」「こういうのが受けるのか。じゃあ書いてみようかな」

 需要が高まり、供給する側にも意欲があるので、流行が始まります。


【流行初期】

 上記のような理由から、似たような作品が次々と作られます。最初期は勢いが全てですから、しっかりとした設定が練られたり、最後までストーリーが決まっていたりすることは稀です。

 この時点で既に作られる作品群は玉石混交です。ですがまだ作品の絶対数が少なく、読み手はそのジャンルに夢中で飢えているので、そんなことは構いやしません。流行に乗っている時、人は一種の熱病にかかったような、冷静ではない状態に陥ります。

 流行初期~中期の、作品に対する加点には二種類あります。一つは純粋に作品の内容が良かったという加点。

 もう一つは、作品の出来はともあれ流行ジャンルであるということへの加点です。ところが点数をもらう方はもちろん、入れた方も、熱病状態なのでジャンルへの加点と内容への加点の区別がつきません。

 こうして更に固定のジャンルに点数や人気が集中し、人の耳目が集まり、これまで流行に触れていなかった人がどんどん吸収されていきます。


【流行中期】

 流行中期の作品は、源流となった作品とそこから生まれた似たような作品群の影響を強く受け、流行界隈だけに存在する有名な設定を「テンプレ」と捉えてそれに従います。

 流行初期のものはテンプレの元であり、「テンプレ作品」と呼べるのはここからになってきます。

 流行初期同様の状態はまだまだ続きますが、読み手と書き手なら飽きるのは圧倒的に読み手の方が早くなります。書き手の方が、一つひとつの作品にかける時間が長いからかもしれませんね。

 大事なことなので2回言いますが、読み手の飽きは早いです。読み手にとって一部のお気に入り作品以外は、読み捨てといってもいいでしょう。


 夢中になって読んだ作品なのに、少し経ってみると「なんであんなに絶賛していたんだろう?」という気持ちになってしまう……そういう経験がある方、多いのではないでしょうか。飽きた、すなわち自分の中の流行が終わり冷静になったのです。

 冷静になった人々の中で、「まだテンプレが好き!」という人は好みのジャンルが流行してラッキーです。「今読んだら別に面白くもなんともない」と思った人は、流行り病にかかっていたのでしょう。

 流行中期から後期になってくると、冷静になる人が増える一方、テンプレ作品は変わらず数多に存在する上に「このジャンルはまだいける」と作品を作る人もいます。なので、冷静になった人々(もしくは、最初から流行に無関心だった人々)がやや鬱陶しく思い始めます。


 この頃になると書き手もただのテンプレに飽きてくるので、面白いテンプレ捻りや流行風刺が生まれたりするのですが、源流作品を読まずに作られる後追いの作品も生まれます。また、飽きによってエタる作品が激増します。

 沢山のテンプレ作品を見た人が「これなら自分も書ける」と思って安易に書き始め、ジャンル全体の最低ラインが下がってきます。

 最低ラインの作品でも、まだジャンル加点が入る時期であれば、それなりに点数が入ってランキングが上がり多くの人の目にとまります。当然、その中にはジャンル加点をしない人が沢山います。「何故こんなものがランキングに? けしからん!」と考えるわけです。(第1回2-1-1参照)

 ジャンル加点をしない人にも、流行の初期からいた人と、流行に少し遅れて覗きに来た人がいます。流行初期からいた人は、「このジャンルのせいで全体のレベルが下がった」と思い、遅れてきた人は「このジャンルこんなレベルの低い作品ばっかりか」と思うのです。

 これらが現在の批判の大元だろう、と私は考えます。


【流行後期】

 批判エッセイがいくつも投稿され、擁護する意見や「どっちでもいいだろう」という意見が出てきています。

 次第に状況が沈静化し、テンプレも細分化され、個人の好みジャンルまで落ち着いてくるんじゃないですかねえ。


 ……とまあ、流行後期の投げやり感が凄まじかったですが、こんな感じではないでしょうか。

 流行は、過剰に持ち上げたり時に強要する一部の読者もですが、深く考えずに手をつける書き手側の問題もかなり大きいと思っています。

 では本題である、「何故なの?」という部分にやっと入っていきます。



2・流行の理由

 テンプレものが流行った最も大きな原因は、「手軽で簡単だった」からだろうと思います。

 沢山の労力をかけて凄い作品を作るより、少しの労力でそこそこ面白い作品でいい。超長編の傑作より、さらっと読める良作でいい――なろう(というよりWeb小説全般?)ではそういう傾向があるようです。

 費用対効果が同じなら、少しでも労力は少ない方がいいというか。楽したいというか。

 細かい理由は後述しますが、テンプレは読む方も楽なんですよね。重々しい鬱展開や、主人公のガチ敗北は避けられやすく、ストレスを感じにくい作りになっています。

 それでは以下、細かい理由を読み手・書き手にわけてざっくり推測してみました。


2-1・とっつきやすいから(読み手側の理由)

 テンプレがあり、それを理解している人間にとって、テンプレ作品がとっつきやすいのは道理です。

 それに、大抵のテンプレ作品って気軽に楽しめるのです。気軽でお手軽なカタルシス。

 最近は便利な世の中なので、皆さん|コンビニエンス(便利)で|インスタント(即席)なものを好みます。

 人間一旦楽な物に慣れてしまうと、どんどん楽な方へ楽な方へ寄っていってしまいます。その結果が、第1回2-1-1で書いたように偏ったランキングです。


 野球漫画やバスケ漫画、サッカー漫画がとっつきやすいのは、日本で国民的人気があったり、中高の体育や部活動などでほとんどの人が一度は経験があったりするからですよね。大体のルールもわかっていますし。

 でも、これがカバディだったらどうでしょう。私も名前と「カバディカバディ」連呼している姿しか知らない、けれどもそれだけはやたら印象の強いスポーツです。

 そんな一般人に「カバディで世界と覇権争いする小説書いたんだ」と言っても、「え、でもルールとか知らないし、ちょっと……」となりませんか? いや、「新しいな、面白そう」という人もいるかもしれませんが。

 知っている土台があれば、少し違っても大体のところは理解出来ます。イタリア語はほぼローマ字読みなのでとっつきやすいけど、フランス語は「なんで頭のhと最後のt発音しねぇんだよ!」となるような、そんな感じです。多分そんな感じ。

 特別に好きというのでもなければ、とりあえず楽な方を選びたくなるのが人情というもの……なのかもしれませんね。


2-2・いい気分になれるから(読み手側の理由)

 現実を忘れていい気分になりたい、という話は時折目にします。

 テンプレ要素の内容を考えてみましょう。大抵は主人公に都合のいいことですよね。

 神様転生や異世界トリップは普通に考えれば都合が悪いはずですが、多くの主人公はこれを望んでいたり、すんなり受け入れたりする傾向にあります。まあ受け入れないと暗くなるからというのもありますが。

 主人公を嫌な気分にするものは、ギャグを除けば敵として俺TueeeeやNAISEIで排除されます。ストレスフリーです。

 純粋に物語として見れば、つまらない展開です。だって大した苦労もなく主人公が勝つことがわかっているんですから、「この強敵にどう立ち向かうんだ!?」なんてワクワクも緊張感もありません。「ハイハイ圧勝なんでしょ。わかってるわかってる」という気分になってきます。

 では何故こういったストレスフリーな作品が多いかというと、「努力も苦労もせず、全てを手に入れ賞賛されたい」という欲求が非常にストレートだからではないかと思います。

 勝利はしたいけれど、苦労は全力で惜しみにかかっている、というか。楽したい、の究極形と言いましょうか。第3回にて取り上げますが、この辺りは読み手の楽しみ方の違いが大きいようです。

 主人公に感情移入したり、成長を見守ったり、というのではなく主人公=自分というシュミレーションゲーム的な楽しみ方です。心理学で言うところの同一視の一種みたいなものじゃないでしょうか。

 そう考えると、ストレスフリーで俺最強展開は物凄くスカッとすると思うんですが……あまり自信がないです。反論異論等あると思いますので、是非お願いします。


2-3・簡単そうだから(書き手側の理由)

 テンプレを書こうと思う人の大半は、「面白いからこういうのを書こう!」か、「これくらいなら自分にも書けそうだ」か、「流行に乗れば人気出るに違いない」のいずれかのタイプではないでしょうか。例によって異論は全面的に認めます。

 テンプレというのは、キャラクターや話の設定、ストーリーの流れにある程度の大枠があるので、その通りに書けばそれなりの形になります。一から作り出すという、ある意味で小説を書く一番の楽しみであり、一番の苦しみでもある部分を簡単にクリア出来てしまうのです。

 プライドの高い書き手は、これを嫌う傾向にあると思います。自分の手でキャラクターや物語を生み出していくことこそが重要であると考えるからです。個々人の創作へのスタンスの違いですね。

 テンプレ作品は見た目だけは簡単そうに見えますが、本当はとても難しいです。何故なら同じ雛形を使っている以上、書き手の技量の差がはっきりと出てしまうからです。おまけにラストにはテンプレがないから、終わらせるのが難しい。

 それを知らずに書き始め、終わりが見えずにエタるのも最早一つのお約束でしょう。


2-4・人気ジャンルを書けば人気が出る(書き手側の理由)

 商業で後追い作品が大量に出るのと同じ理屈です。その時流行しているジャンルを書けば、流行に乗っている読者は大抵買ってくれます。

 俺妹が流行った後、妹ものがうんざりするほど乱発されました。ラノベや漫画の新刊タイトルは、スレタイのように長くあらすじめいたものになり、「妹」「お兄ちゃん」とつく作品がいくつもありました。

 これらの妹ものラブコメ、ぶっちゃけ内容は結構酷かったようですし、妹推しじゃない作品にまでサブヒロインとして妹を出す風潮が出始めるなど、弊害もありました。

 でも売れたんですよね。アニメ化した作品も複数ある以上、支持する層が確かにいたわけです。


 ランキング上位に入りたい、周りから賞賛されたい、という気持ちは人が当たり前に持っています。リスクを冒さず確実に賞賛を得るために、流行ジャンルに手をつけるのは間違った手段ではありません。

 ただ、やはり創作へのスタンスの問題で、こういったやり方を「読者への媚び」「人気取りのためにプライドを捨てている」と嫌う人もいます。多分創作物に対する認識が違うんじゃないでしょうか。

 流行を批判する人にとって、小説は作品です。人気を取るために流行ジャンルを選ぶ人にとって、小説は商品です。作品は客を意識しながらも自分のために作りますが、商品は客のニーズに合わせるのが当然なのです。

 本当に客のニーズに完璧に沿うものが作れるなら、それはそれで才能なので、他人がとやかく言うことではないかなぁと思います。それが一時になるか後世にも評価されるかは、後になってみないとわからないことでもありますし。



 なんかこの項目、本当に「なんでだろーねー」を憶測するだけの内容になってしまいました……。自分で書いておきながら、だからなんだよ感が凄まじいです。



 ここまで偉そうに書いてきましたが、少しは皆様のご理解を得ることが出来たでしょうか。

 貴重なお時間をお付き合い頂き、ありがとうございました。

 よろしければまた次回以降もお付き合い下さい。

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