休暇と案内と
カルロが頑張ります(え
宿屋が見つからず、神殿に泊めてもらった事を話すと、モーリッツ達はニコルに同情するような視線を向けた。何故そこまで気の毒に思われなければいけないのかと、少々気まずい思いをしたニコルだが、考えるのも面倒になり溜め息をつくだけで何も言わなかった。
「モーリッツさん達は、昨日の報告の為に?」
「ああ、貰うものは貰ったが、依頼を終えた事は報告しなきゃなんねぇからな」
「なるほど」
「それと、この前の襲撃者が少し気になってな……」
「ギルドに引き渡すと何か不都合なことでもあったんですかね」
「さあな、ただ俺達はギルドに所属する人間だ。組織に何かあった時に被害が出るのはこっちだからな、用心するに越したことはないのさ」
依頼の報告をしに来たモーリッツだったが、周りの同業者たちに聞こえぬよう、声を低くして襲撃者の一件が気になるとニコルに言った。
本来、襲撃者の引き渡しはトラブルを防ぐため、傭兵ギルドを通して行うものだ。しかし、エッカルトは、直接騎士団に引き渡して欲しいと言ってきた事を考えると、ギルドに何かあるのではと深読みをせざるを得なかった。
最悪を想定して動かなければ傭兵は成り立たない。モーリッツの考えも一理あると、ニコルは頭の隅に置くことにした。
「ニコルさんはこれからどうするんだ? 別の依頼でも受けるつもりなのか?」
「神殿からここに直行したので、朝ごはんがまだなんですよ。食べたら、ティアも連れて入れる宿を探そうかと。あ、ギルドの窓口で聞いてくれば良かったな……」
「に、ニコル、俺が案内してやるよ! セレストが拠点だから、詳しいぜ!?」
「え、別にギルドの人に聞くからいいよ。カルロだって暇じゃないだろうし」
「ニコルちゃん、俺らは報告しに来ただけだから! それが終われば今日は休暇なんだ。別にカルロを連れてったって、問題ないよ!」
モーリッツは、ベンノと一緒に受付のカウンターに行ってしまったため、ニコルもそのまま分かれて宿屋を探そうと思っていたところを、モーリッツのチームの若手が声をかけてきた。ベニトアで顔合わせをしたときに自己紹介はしたものの、何度か会話をしたことはあったが、ニコルはその若手の名前を覚えていなかった。今後も一緒に仕事をする予定もなさそうだったため、別に覚えなくても良いかとニコルは考えていた。
特に隠すような内容でもないため、ニコルはギルドを出た後の予定を話したが、ギルドのカウンターで宿屋の場所を聞いておけばよかったと後悔した。
カウンターに引き返そうとしたところで、カルロが案内役を申し出た。用事があってギルドに来たのだろうと断ろうとしたニコルだが、別の軽そうな男がカルロを連れて行けと追い打ちをかけてきた。
「いや、休暇なら尚更……」
「カルロの為と思って連れてってやってくれ!!」
「え、何でカルロの為?」
「それは、その……」
「まぁ、なんだ。とにかく、カルロも一緒に飯食ってこい報告は俺らがしといてやる!」
傭兵をしている人間は誰しも休暇の必要性を理解しているものだ。ニコルもその例にもれず、カルロの休暇を邪魔するつもりもなかったため、案内を断ろうとしたのだが、他のメンバーが必死にカルロを連れて行けと頼んできたため、困ってしまった。
カルロのためと言われても、よく分からないニコルは首を傾げていた。どうしてそんな話しになったのかと、カルロに視線を送ると、真っ赤になったカルロが気まずそうな顔になった。
カルロが他のメンバーに助けを求めるように振り返ると、軽そうな男がカルロをからかうような顔で、ギルドへの報告をしといてやるとカルロの肩を叩いた。
「せっかくの休みなんでしょ? 私に構う暇があるなら、休めばいいのに」
「ほ、ほら! セレストに付いたら飲む約束だったろ? それに、案内ついでに一緒に行けば一石二鳥だし」
「そう言えば、そんな約束もしてたね」
カルロに言われ、マナッセでセレストに付いたら飲みに行こうと言われていた事を思い出した。カルロの後ろの方で、他の傭兵たちが何時の間に誘ったのだろうと騒いでいたが、彼らと約束したわけではないため、気にしなかった。
「じゃあ、お願いしても良い? カルロの用事があるなら私の方はついでで構わないから」
「別に、俺は急ぎの用事なんかないし、そっち優先でいいぜ?」
「そう? ティアを連れてくるから表で待っててくれるかな?」
「分かった」
相変わらずカルロの背後が騒がしかったが、ニコルはしばし考えたのちカルロに街の案案内を頼むことにしたのだった。せっかく案内してくれると言うカルロの好意を無駄にするのも憚られたため、カルロの用事があるならそちらを優先してかまわないと伝えたのだが、特に用事はないと力説されてしまったため、ニコルが行きたいところに連れていいってくれることになった。
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