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傭兵ギルドの猫  作者: kay
第3章 精霊のいとし子
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精霊神殿とセレストのギルド

新章です




 窓から差し込む日差しの暖かさで、ニコルは目を覚ました。宿屋にしては高すぎる天井をぼーっと眺め、昨晩は宿を取れずに精霊神殿に泊めてもらった事を思い出した。

 木製の礼拝用の長椅子は毛布を体に巻きつけても寝心地は良くなかったが、屋根がある分雨風はしのげるうえ、冷たい石の上で寝なくて良いだけマシだった。今日は早めに宿を決めなければいけないと考えつつ、ニコルは長椅子から下りて大きく伸びをした。



 見上げるほど高い石造りの天井は細かな彫刻が施してあり、窓から差し込む光で荘厳な美しさに思わずため息がこぼれる。

 外していた籠手などの防具を見に漬けていると、神殿の奥から秘色≪ひそく≫の神官服を着た男がやってきた。長くのびた鈍色の髪を邪魔にならないようポニーテールにしており、髪の隙間から見える尖った耳は精霊の末裔であるエルフ族の特徴を表していた。

 細身が多いエルフ族だが、ニコルの目の前に居る男は、がっちりとした体格のため神官服を着て居なければ、間違っても神官には見えなかった。

 まるで似合っていない神官服は窮屈そうに見え、おまけに不精髭を生やしており一介の傭兵と紹介された方がしっくりくる外見だった。



「おはよう、よく眠れたか?」


「おはようございます。昨日は遅い時間だったのに泊めてくださってありがとうございました」


「こんな場所ならいくらでも貸し出してやるが、寝心地は悪かったろう?」


「おかげで首を寝違えちゃいましたよ」


「ははは、憎まれ口を叩ける元気があるなら大丈夫だな!」



 豪快に笑う神父の姿にテオドールの姿を重ねて、ニコルは少ししんみりした気持ちになった。長椅子に置かれた荷物を仕舞い終え、ティアに荷を括りつけた。

 神官にここは宿屋ではないから朝食のサービスは無しだと冗談めかして言われ、ニコルは神官に礼を言って神殿を後にした。




 神殿から外に出るとすがすがしいまでに晴れ渡った空が目に入った。セレストがベニトアよりも標高の高い場所にあるためか、日差しがきつく感じられ、眩しさのあまりニコルは目を細めた。


 まずは商業ギルドに顔を出して、アンジェラに連絡を取らないといけないと思い神殿の敷地を後にしたのは良かったのだが、夜も遅く見知らぬ道をティアの先導で歩いたせいで、中心街に出る道がわからなくなっていた。

 神殿はセレスト中心街から少し離れた場所にあった。中心街にあるベルクマンの店からさほど離れた場所にあるわけではないのだが、それほど詳しくない街の夜道をティア任せで歩いたため、ニコルは中心街に出る道すらわからなかった。



「……ティア。どっちから来たか覚えてる?」


「にゃあ?」


「仕方ない。適当に歩いて人に聞くかぁ」



 一応、ティアに昨日通った道が何処なのかを聞いてみたが、逆に何を言っているのだろうという顔で首を傾げられてしまった。出足で躓いた形だが、この場所にとどまっていても埒が明かないため、ニコルは周りを見渡し、住宅が続いている道をまっすぐ進むことにした。

 しばらく進んでみたが、一向に住宅街から出られる気配がなく、白塗り壁に平たい石を積み上げたとんがり屋根といったベニトアでは見られない変わった形の建物が続いた。鮮やかな赤や黄色といった原色の花が咲く花壇がある家や、洗濯物を干している主婦の姿があった。

 朝早くによそ者が住宅街を通るのが珍しいのか、ニコルの隣を歩くティアが珍しかったのかは分からなかったが、通り過ぎるたびに視線が合い、ニコルは若干の居心地の悪さを感じた。

 結局、進めど住宅街が続き、領主の館らしき建物が見えてきてしまったため、一度引返すことになった。ニコルは何件目かに見かけた主婦に中心街に行く道を教えてもらい、ようやく中心街の通りに出ることが出来たのだった。




 中心街の通りは、ベニトアに比べるとそれほど幅は広くない。山に沿うような形で造られた街らしく、石畳が坂の上まで続いていた。両脇にある店は料理屋が多い場所らしく、まだ時間が早いため殆どの店は空いていなかった。

 遠くで鍛冶屋が鉄を打つ音が響き、何人かの傭兵たちとすれ違った。おそらくギルドで仕事を受けた傭兵だろうと、ニコルは同業者を横目にギルドの建物を探した。

 中心街の商家も、住宅街と同じような建物が並んでいた。二階建てになっている建物は少なく、二階建てになっている傭兵ギルドはすぐに見つかった。



 ティアをギルドの裏手にある騎獣舎に預け、建物の中に一歩入ると中に居た同業者が一斉にニコルに視線を送った。何処のギルドでもこういった洗礼はあるため、ニコルは特に気にせずに中に入った。堂々としたニコルの様子に、視線を送ってきた同業者はある程度の実力者だと認めたらしく、興味を失ったように視線を戻す。

 熟練者のみが集まるベニトアとは異なり、ニコルと同年代くらいの若手の姿もあった。セレストの傭兵ギルドの内装はベニトアのギルドとさほど大差はなく、手間取ることもなくまっすぐ受付カウンターに進み、空いているギルド職員にギルド員の証である水晶を渡した。



「しばらくセレストでお世話になります、ニコルです。今日は挨拶に来ました」


「確認しました。ニコルさんですね。ようこそセレストへ、私はベルタと申します。当ギルドは初めてでしょうか?」


「いえ、二年ほど前に兄と一緒にこちらで依頼受けたので一応は……」


「でしたら、特に他のギルドとは変わった点とかはないと思うので、何か受けたい依頼がありましたら、受付までお願いしますね」


「分かりました」



 ギルドへの顔出しも問題なく終えた。別に顔出しはしなくても問題ないのだが、仕事をスムーズに行ううえで、ニコルは傭兵団に居た時から、ギルドの職員に顔出しをしておくことにしていた。



「あれ? 嬢ちゃん?」


「?」



 帰ろうとした時に後ろから声をかけられた。振り返ると、モーリッツ率いるチームのメンバーだった。セレストに着いたのが夜だったため、ギルドへの報告が後になっていたのだろう。



「おはようございます。モーリッツさん」


「おはよう。やけに早いが、昨日は何処に泊まったんだ?」


「神殿に泊めてもらったんです」


「は!? 神殿? 宿屋は空いてなかったのか?」


「それほど詳しくない街なので、何処が宿なのか分からなかったので……」



 宿屋にたどりつけなかった事情を説明すると、モーリッツ一行は黙ってしまった。カルロを含む他のメンバーが後ろでこそこそとしていて気になったが、ちらりと視線を向けると黙ってしまい、何なのだろうとニコルは首を傾げた。



「別に、そこまで気を使ってもらわなくても大丈夫ですよ?」


「いや、そうなんだが……」


「水臭いこと言うなよ、嬢ちゃん。あの後、酒場で打ち上げをやったんだが、嬢ちゃんも後ろから付いてきているもんだとばかり……」


「だから待っててやればいいって言ったじゃねぇか。ごめんなぁ嬢ちゃん」


「いえ、宿泊費が浮いたと思えば大したことはないです」



 特に気にするようなことでもなかったため、宿泊費が浮いてよかったと言うと、他のメンバーが目頭を押さえるようなしぐさをしたため、少々気まずい思いをしたニコルだった。





新章に入りました。

一応この章のプロットも作ったので、その通りに更新出来ればいいなと思っています。

それと、登場人物紹介とか作った方が良いでしょうか?

基本的にはニコルの単独行動ですが、ちょっと気になったもので……


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