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傭兵ギルドの猫  作者: kay
第2章 旅路
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引き渡し

5 モーリッツはエッカルトから持ち出された話を茫然と聞いていた。周りには自分の部下たちが殺気立ちながらも、モーリッツの決定を待っていた。



「モーリッツ殿、此度の襲撃者で捕えた者の身柄は、こちらで引き取らせて頂きたいのだが良いだろうか?」


「……どうなさるおつもりで?」


「盗賊討伐の残党と思われるため、詳しく取り調べをする必要があるのです」

 

「は、はぁ……。エッカルトさんが、取り調べをなさるんで?」



 事の発端はモーリッツが捕えた男たちをどうするかと話をしているところに、エッカルトが話しかけてきたことだった。

 もし、捕えた者たちが盗賊団の一味ならば、ギルドに報告すれば賞金が出るため、大変だろうが連れて行く方向で決まったところだったのだ。

 エッカルトが襲撃者の身柄の引き渡しを求めたのを聞くと、傭兵たちは一斉にエッカルトに視線を向け、自分たちの取り分を横取りされるのではないかと疑心を抱きつつ耳を傾けていた。



「ギルドに連れて行けば、褒賞が出るはずです。それをむざむざと引き渡すとお思いで?」


「それも尤もな話。ですが、ギルドに渡すのではなく騎士団に直接引き渡すと考えていただければ結構です。ギルドと同等の報奨金は約束いたします」


「それができる証拠がどこにある!!」



 エッカルトとモーリッツの周りに群がっていた傭兵の一人が叫んだ。モーリッツが一睨みをすると、その傭兵は口を噤んでしまったが、他の傭兵たちもエッカルトに懐疑心を抱いていることは一目瞭然であった。襲撃者を何人も屠ったエッカルトの強さは事実であるが、これほどの強さがありながら名が知られていない不可解さもあり、エッカルトに対する傭兵たちの心象はいまひとつ良くなかった。



「申し遅れました。私はエッカルト・レヒナー。セレスト領主より、騎士団の副団長の任を任されております」


「なっ!?」


「本当に騎士様なら、なんで討伐に参加してないんだよ!」


「所要で部下のマルセルと共に、セレスト領主のご子息の護衛をしておりました」


「証拠がどこにある! その剣だって討伐隊のを手に入れただけかも知れないだろ」



 エッカルトは腰に下げていた剣の紋章を掲げ、自身の素性を明かした。思いがけないエッカルトの素性にモーリッツをはじめとして周りの傭兵たちも皆絶句した。何故騎士団の副団長程の地位のものがここに居るのかと、ざわつきだす。

 モーリッツが抑える前に、自分たちの獲物を取られると勘違いした傭兵たちがエッカルトに詰め寄り、それを侮辱と捕えたマルセルが剣を抜きかけるような物々しい雰囲気になっていた。



 ニコルも何の騒ぎなのかと、隣に居たベンノとカルロに話を聞き、近くに寄って聞き耳を立てていた。



「ベンノさん、私が思うに、あの人は本物の騎士だと思うよ」


「何故そう思う?」


「剣筋に癖が無さ過ぎると思うんだ」


「そう言われてみれば、一緒にいる若いのも同じ型だったな……」


「エッカルトさんが二人に教えてるせいじゃないのか?」


「傭兵独特の癖のある動きじゃなかったんだよ」


「そうなのか?」


「ああ、もっと洗練された軍の動きだ」



 エッカルトは騎士で間違いないとニコルは考えていた。襲撃の際に振るっていた剣はマルセルやライマーと同種の型で、傭兵の様な癖のある動きではなかった。

 持ち場が離れていたカルロはエッカルトの戦闘を見たことが無かったため、首を傾げていたが、ニコルとベンノが揃って同じ意見だったことで、そうなのかと一応納得したようだった。




 捕えた者たちの処遇はセレストの騎士団に引き渡されることになった。傭兵たちがエッカルトを信用に足るとは判断しかねるようで、引き渡しには渋っていたが、騎士団の副団長に足る実力があるとベンノが証言したことで、どうにか話がまとまったのだった。

 襲撃者に関しては、両手足を縛り動けない様にしたうえで馬車の荷台に転がしてある。エリシア親子たちと同じ空間に居るため緊張を強いることになるが、それ以外運びようがないため仕方がないと言えた。





「ベンノさんのおかげで早く出発できそうで良かったよ」


「あの状況じゃあ、仕方はないと思うがな」


「そうですね」


「まぁ、何にせよ人死が出た場所で一晩過ごしたくはないからな」



 ベンノの言葉はこの隊商の全員の心境だったようで、手当を受けた者は速やかに出発の準備に取り掛かり、馬車に大きな被害が無かったのも幸いし、程なくして出発することができた。だが、如何せん戦闘後の処理に時間を食ったため、余り進むことができなかった。



「さっきの場所とあまり離れてない気がするんだけど……」


「仕方がないだろう、坂道なうえに時期に暗くなる。さっきの場所じゃないだけ良いと思え」


「誤差くらいの距離な気がするんですが」


「気にするな。何か出ても、俺たち傭兵が仕事をすれば済むことだ」

 

「それを言ったら、昨日から頑張り過ぎてますよ」


「違いない!」



 ベンノに軽口をたたきながら、ニコルは周囲の見回りをしていた。ティアが特に反応しないため、特に危険は迫って居ないと判断し、馬車に戻った。



「少し良いだろうか?」


「何か用?」


「副団長が話をしたいそうで、付いてきてもらいたいんだ」


「……場所は?」


「あそこの距離標の近くの大きな木のあたりですが……」


「分かった。一人で行けるから付いてこなくても良いよ」



 見周りから戻ると、馬車のところでマルセルが待っていた。ニコルを視線で追っており、何か用事があるのかと話しかけようとした時に、声をかけられたのだった。

 遅かれ早かれ、エッカルトからは何か話を持ちかけられるだろうと予想していたニコルは、マルセルからエッカルトの居場所を聞き出すと、ティアを連れて言われた場所に向かったのだった。


 夜光石の距離標という目印はあれども、夕方になり薄暗くなった森は視界が悪い。光の魔術で足元を照らしながら、エッカルトの気配を探る。念のために、剣はいつでも抜けるよう手をかけておく。



「……来たか」


「こんなところに呼び出して何の用ですか」



 エッカルトは以前の物々しい雰囲気とは異なり、ニコルをどうこうするつもりはないようで、ニコルは剣から手を離した。しかし、言いがかりにも近い疑いをかけられて不愉快だったため、不遜な言い方になってしまったのは仕方ないだろうとニコルは考えていた。



「襲撃者から話を聞いた。君は彼奴等とは無関係だったのだな……」


「まぁ、最初からそう言いましたけどね」


「事情があったとはいえ、疑ってしまったことは事実。申し訳なかった」


「ちょ!? 頭を上げてください! 気にしてませんから!」



 エッカルトの様な人をまとめる様な立場の人間は、おいそれと頭を下げることは出来ない。それでも、ニコルに対して詫びる気持ちを伝えたかったのだろう、人払いをしているとはいえエッカルトが頭を下げたことにニコルは慌てたのだった。

読んでくださりありがとうございます。


亀更新になりつつあるのに、お気に入り登録件数が50件越えておりました。

ものすごくうれしかったので、活動報告にこの章で入れられなかった小ネタを書きました。

ほんの短い駄文ですので、読んでくださったお礼にはならないかもしれませんが、

気になる方はどうぞ……

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