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傭兵ギルドの猫  作者: kay
第2章 旅路
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事後処理と……

 満身創痍とまではいかずとも、負傷者は多かったが死者が出なかったのは幸いだった。

 被害としては、初めに降り注いだ矢で商人と傭兵数名が負傷し、馬が一頭使い物にならなくなった。応戦中に相手の剣を脇腹に受けた傭兵が、いちばんの重傷者だったが出血は多かったものの、命に別状はなさそうだった。


 

 怪我人は手当を受けるためその場に残り、エッカルトたちを除く動ける者たちは襲撃者の亡骸を埋めに森の中に入っていった。血の匂いは肉食系の魔獣や獣たちを引き寄せるため、亡骸は埋める必要があった。嫌な作業ではあるが、旅の安全を考えると必要なことだった。

 苦い想いをしながら、ニコルは他の傭兵たちと一緒に穴を掘り、襲撃者の半数近い10体の亡骸を埋めた。生存している3名は既に縛って捕えられ、残りは逃亡している。エッカルトが後を追ったが、森の奥に逃げ込まれたため深追いせずに戻って来ていた。

 埋葬を終えて馬車に戻ると、手当を受けていたカルロが一人沈んでいた。



「怪我は大丈夫?」


「……まぁな」


「戦闘になれば怪我をすることは多いよ」


「……そうだな」



 包帯を巻いているところを見て、怪我をして落ち込んでいるのだろうとニコルは思った。真っ青な顔をしているだろうカルロは、ニコルに顔を向けることなくつぶやいた。



「お前さぁ……、傭兵やってて辛いって思ったことあるか?」


「そりゃあるよ」


「そう、だよな……」


「もしかして、戦闘になったのは初めてだった?」



 盗賊と相対するような街道を行き来する傭兵は、危険が付きまとうが純粋な労働よりも多く金を稼ぐことができる。カルロもそれを理解して傭兵になったのだろうが、戦闘になったことはなかったのかとニコルは問いかけた。



「何度か、戦いにはなったことはあるけど……」


「……傭兵だからって、殺しに慣れる必要はないと思うよ」


「っ!」



 相変わらずニコルの方を向かずに首を振る。皆まで語らずともニコルにはカルロが言おうとしたことが分かった。おそらく、カルロは今まで人を殺したことはなかったのだろう。盗賊とはいえ初めて人間を手にかけた重みと感触。これから傭兵を続けていくにあたって再び殺しをしなければいけないのではないかという不安。それらでカルロは押しつぶされそうになっていた。



「カルロが悩むのは悪いことじゃないよ。むしろ、初めて人を殺して悩まない方が変だ」


「……」


「盗賊とはいえ相手が何を考えて剣を抜いたかを考えていたら、キリがない。それに、こちらに敵意を向けて剣を抜いたのなら殺されても文句は言えないと私は思ってる」


「そうだな」


「あとは、モーリッツさんたちに話を聞くといいと思うよ。私も傭兵として、まだまだ若輩者だからね、カルロに説教する権利はないのさ」



 ようやくカルロは顔を上げた。

 無理をしている顔つきだったが、後はカルロが自分で傭兵という仕事と向き合っていくかを考えるべきだとニコルは思っていた。あとのことは、モーリッツをはじめとした傭兵仲間を頼るべきだと言うと、カルロの側を離れたのだった。




 ニコルは大きな怪我はしていなかったものの、いくつかの切り傷ができていた。ティアの荷物の中に傷薬があるため、取りに向かうとユリアに腕を掴まれ、問答無用で馬車の近くに連れてこられた。



「女の子なんだから、顔に傷をつくっちゃダメじゃないの!」


「え!? あ、すみません?」


「エリー! 鞄に入ってる薬持ってきて!」


「はーい」


「ちょっ! ユリアさん、く、首が痛いです!」



 ユリアはエリシアに薬を持ってこさせると、ニコルの傷の状態を確認し始めた。

 ニコルはユリアに言われるがまま座ると、無理やり顔を正面に向けさせられ首がグキッとなった。 エリシアにこっそり視線で助けを求めたが、エリシアはユリアと同じく怪我人は大人しくしなきゃダメよと言った。有無を言わせないユリアの剣幕に引きながらも、ニコルはおとなしく治療を受けるのだった。



「はい、終わり! 顔を洗う時にこの傷薬をつかってね。薬が落ちないようにテープで押さえておくこと!」


「は、はい」


「何度も言うけども、女の子なんだから、痕に残るような傷をつくっちゃダメよ!」


「……分かりました」



 傷薬は薬草の青臭くツンとする匂いだったが、我慢できないほどではない。ニコルはユリアから薬の入った瓶を受け取り、何度目かの忠告を大人しく聞いた。ベニトアからセレストまでの短い道中ではあるが、親身に接してくれるユリアの心がうれしかった。



読んでくださりありがとうございました。

短めでした。

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