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傭兵ギルドの猫  作者: kay
第2章 旅路
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予兆

 昨晩の風呂場での騒動があったにもかかわらず、隊商の出発の準備は滞りなく進んだ。ベルクマンの隊商とは別の宿屋に泊ったライマーは、モーリッツの部下達がそろって顔に青痣を作っていたことに興味を持ったようだった。青痣を作った傭兵たちは、そろってニコルに視線を向けないようにしていたが、それが却ってライマーの興味を引いたらしく、ニコルに聞くようなことはせず、カルロに何があったのかと話しかけていた。


 ニコルは離れた場所で領主の兵士と話をしているエッカルトを見ていた。特に理由があったわけではないが、どことなく兵士たちの態度がおかしいように見えたのだ。



「マルセルさん。一つ質問していい?」


「ん、なに?」


「エッカルトさんって何者? 本当に傭兵?」


「どうしてそう思う?」


「なんとなく? 実力があるってはっきりわかるのに、傭兵として名が通ってないのは変だ」


「別に変じゃないよ、実力があって個人契約でやってる傭兵だっているよね?」


「……」



 なんとなく感じる違和感の正体を確認するべく、ニコルは近くにいたマルセルに問いかけた。マルセルは個人契約をしていたためと語り、それならば名が知られていなくてもおかしくはないと思ったが、ニコルの違和感はぬぐえなかった。

 個人契約をしていた依頼主を聞くことも考えたが、それはマルセルに聞くことではないと思い、ニコルはこれ以上の質問はやめたのだった。



「……おい、もう出発するってよ」


「分かった、今行く」



 隊商の出発準備が整い、カルロがそろそろ出発するとニコルを呼びに来た。カルロは昨日の一件で気まずそうな顔をしていたが、ニコルは特に気にした様子でもなかった。



「あー、ちょっと待って」


「なんだ?」


「これ、半分はアンタの分だから」


「半分?」


「昨日の慰謝料」


「は!? 受け取れねぇよ! お前の慰謝料だろうが」



 カルロは差し出された革袋を、なんだろうと首を傾げながら受け取り、何が入っているのだろうと中身を確認した。中身は銅貨と半銀貨が数枚入っており、何のお金かは容易に検討がついた。



「賭けの対象になったことで貰った慰謝料だからね、カルロには半分貰う権利があるよ」


「いや、だからってなぁ……」


「私だけ貰ったんじゃ、フェアじゃないでしょ」


「でもな、俺が覗いたことに対しての慰謝料も入ってんだろ」


「あれは、鳩尾一発でチャラって言ったでしょうが! それとも、蒸し返すようならここでもう一発殴るよ?」


「全力で遠慮する!」



 受け取った金を突き返そうとするカルロに、ニコルはそちらにも受け取る権利があると言って譲らなかった。カルロ自身はニコルの下着姿を覗いたことに対しての慰謝料だと思っていたのだが、ニコルは蒸し返すくらいなら殴ると宣言すると、一撃の威力を思い出して血の気が引いたカルロに硬貨の入った袋を押し付けたのだった。





 ベルクマンの隊商の傭兵が、兵士に呼び止められるというトラブルもあったが、昼前にはマナッセを出発することができた。

 マナッセは森の中にある宿場町のため、町から一歩外に出ると深い森になっていた。太陽は高い位置にあるとはいえ、街道は木が日の光を遮り薄暗く、風が吹くとざわざわと木の葉がさざめいていた。



「なんか、物騒な傷がそこら中にありますね」


「おそらく、盗賊討伐の戦闘があったようだな……」


「気を引き締めないといけないですね」


「そうだな」



 周りの木々にごく最近付けられたと思われる戦闘の跡と思われる傷や、踏み荒らされた下草をみてニコルがぽつりと呟いた。ベンノもその様子を見て、おそらく数日前に出た討伐隊と盗賊の戦闘の跡だろうと言った。油断をしているつもりはないが、激しい戦闘があったことが予想でき、前方の商人や傭兵たちも、ニコル達と同様に気を引き締めたようだった。

読んでくださりありがとうございます。

今回は少し短めでした。


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