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傭兵ギルドの猫  作者: kay
第2章 旅路
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関所にて

 昨晩、イレーネの話をしにきたカルロに容赦なく追い討ちをかけた件に関しては、ニコル自身が寝ぼけた弾みで言ったことだったため、既に記憶があやふやになっていた。

 カルロはというと、目のしたにくっきりとくまが出来ており、ニコルは同室の騒音で眠れなかったのだろうと見当違いのことを考えていた。



「眠そうだが、大丈夫か?」


「きちんと睡眠はとってるので大丈夫ですよ」


「それならいいんだが、無理せんようになぁ」


「ありがとうございます」



 ティアの背中に揺られながら、ニコルはあくびをかみ殺した。昨日はカルロのせいで中途半端な時間に眠ったため、微妙な眠気が残っていた。

 気のいい中年傭兵が、心配してくれたが、ニコルが睡眠はきちんととっているため、心配は無用というと安心したようだった。

 どうして色々と気を使ってくれるのかと聞けば、ニコルと同年代の子供が居るらしく、小さいころはかわいかった、思春期になったら話してくれなくなったなどと愚痴だか惚気なのかわからない話を延々と聞かされた。



「今日はどのあたりまで進む予定なんですか?」


「セレスト領に入るための関所までだ。今日はそこで野営するらしい」



 馬に休憩を取らせるために止まらなければ、関所に着くまで話し続けていたのではと考えると、ニコルはセレストに着くまでに体力が持つかどうか心配になった。話をそらすように今日は何処まで進むのかと問うと、ベニトアとセレストの境にある関所で野営するようだった。

 関所を通るには、普通は旅券や身分証を持っているなど、身分がしっかりしている者でないと通ることは出来ない。旅券がない旅人は、身元がしっかりしている同行者に保証人になってもらわないといけないが、商人や傭兵はギルドが身分を保証してくれるため、ギルドの登録証を見せれば問題はない。



「……野営ですか?」


「ああ、ボレアの街にいた旅人に聞いたんだが、盗賊討伐の山狩りをしているらしい」


「じゃあ関所で詳しい話を聞いてからの出発になりそうですね」


「安全が確保できるなら、それが一番さ」



 ベニトアでセレストに向かう街道に盗賊が出没するという話は聞いていたが、セレスト領主の兵が山狩りをするほど深刻な問題になっているとはニコルは知らなかった。しかし、常駐している兵士が居る関所のあたりで野営するのは、安全を確保するうえで最善だった。




 隊商は日が沈む前には関所に着くことができた。

 セレストの関所は、ハールバット川の橋の上にあった。

 ハールバット川は大河と言えるほどの大きさはないのだが、流れは速く川底までが深かった。雨が多い時期になると木製の橋では頻繁に流されるため、石造りの頑丈な橋になっていた。関所も橋と同じく大きな石造りの門を備えており、戦乱の時代には、敵国の軍勢が来た際に橋を落とせない代わりに、この関で足止めをしたこともあると伝えられていた。


 門の周りには常駐している兵士たちの詰所や、伝令用の獣舎があり、ハールバット川からそれほど離れていないところに、野営をする人たちが集まる場所があった。 ベトニア側の関所の周辺にはニコル達の隊商と同じ理由で野営を始めている商人や旅人達がおり、ベルクマンは関所を越えた先の情報を得るためその集団の中に交じって話をしていた。



 野営地には、ベルクマンの隊商とは別にもう一組の隊商がおり、それとは別に3人組の傭兵と思われる男たちがいた。

 ニコルは野営の準備も終わり、盗賊の情報を集めに行ったベルクマンに話を聞こうと思い、ティアを連れ馬車を離れた。



「ねえ、君も傭兵なの?」


「そうだけど、あんた誰?」


「僕はライマー。まだ、新人なんだ」


「へえ」


「自己紹介したんだから、そっちも名前教えてよ」


「……ニコル」



 ニコルがベルクマンを探してうろついていると、見知らぬ男から声をかけられた。馴れ馴れしく声をかけてくるライマーという若い傭兵に違和感を抱いた。剣を持っているが、カルロのように鍛えているわけでもなく、魔術を使うならばある程度の魔力を補う装飾品をつけていてもおかしくないのだが、そのような気配もない。つまり、傭兵らしく見えなかったのだ。



「君もセレストに向かうの?」


「そうだけど」


「じゃあ、僕と一緒だね」



 苛立ったニコルはだからなんだというのだと、ライマーを睨み付けたがライマーはそれに気付かず野営地で待たされた愚痴をこぼしていた。適当に相槌を打ちつつ、ライマーの同行者だという男たちを観察していたが、一見、荒事になれた傭兵に見えるのだが、どことなく周囲を警戒しているように見えた。関所という周りに兵士が居る安全圏にいながら、まるで敵地にいるような警戒のしようだった。 



「あの人たちは、あんたの仲間?」


「そうだよ。僕よりずっと強いんだ」


「新人って言ってたけど、剣はあの人たちから教わってるのか?」


「うん、僕なんか足元にも及ばないくらい強いんだ」


「……へえ」



 ライナーの仲間を観察していると、立ち振る舞いは傭兵そのものだったが、傭兵というにはやはり違和感があった。リーダーと思われる人物は人相こそ悪くはなかったが、獲物に飢えたようなギラついた目をしており、見たところあまり信頼できる人物ではなさそうに感じた。



(なるほど、これはただの馬鹿な坊ちゃんが強い傭兵に憧れて飛び出したクチか)



 ニコルはライマーを心の中でそう総評すると、ベルクマンと今後の話をすべくライマーと分かれたのだった。



 

読んでくださってありがとうございました。



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