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#40「賭けの果て」

 乾いた銃声が響くのを最後に、僕の意識は闇に放り出された。痛みも疲労も絶望さえも何も感じないまま、僕はその場で立ち止まっていた。


「――弱い」


 背後から重みのある低音が聞こえてきた。鉛のように重く、心にのしかかるような『弱い』の一言だった。


「どうやら貴様の強みはその一時的な能力だけだったようだ。そこを省いてしまえば、そこらにいる有象無象と変わらん」

「……」


 何も言えない。口が開こうとしない。指先すら動かせない。一瞬の怯えさえもこの空間が許さない。


「俺も『派王』である身として実に愚かな行為だったものだ。貴様に一瞬でも己の魂を取り込ませたのだからな」


 刹那、陽炎の如く視界が揺れる。その最中(さなか)、眼前に人影が瞬時に現れる。振り向いたその瞳は黒く、僅かに蛍色の光を放っていた。


「黒神美尊。再び巡り会った際は、貴様の命は此処に無いと知れ」


 時と思考が止まった僕に、余命宣告が放たれた。その直後――斬撃が肉を裂く音と同時に視界が半分に開かれた。


「この『派王』()()()を見る日がこれで最後であることを祈るんだな」

「――!」

 

 レグノ。そうか……お前が、お前が彩芽を攫ったあいつらの――



 ――――――――――ここで、僕の意識は闇に消えた。これまでの記憶の数々が流れ落ちていきながら。



「はっ――」


 ふと目覚めた先に写る茜色の空は雲一つすら無かった。その下は焼け落ちた黒い残骸と斬撃の痕で満ちていた。所々に乾いた血痕が地面に付着していた。


「っ――」


 思わず血の気が引いた。更に吐き気がして手で口を抑えたその時、口元がぐちゃりと変な音をたてて何かが付着した。両手を口から離し、目を向けるとすぐに正体が判明した。


「――!!」


 手形スタンプでも押したのかと思ってしまうくらい両手に塗られた赤。いや、それを通り越して赤黒い何かがついていた。それが何かなんてもはや口にするまでも無い。


「殺……した……? 僕が、皆を……」


 だがしかし。僕はこの場であゆさんに負けて記憶を失ったはず。ならあゆさんは生きている……はず……


「え……」


 辺りを見渡そうと右を向いた刹那、その希望(事実)絶望(現実)に上書きされていた。僕に勝ったはずのあゆさんが、血を流して倒れている。無数の斬撃と風穴が開かれた状態で。これは間違いなく派王(やつ)がやったものだ。


「何で……あゆさんが……死んでるの……?」


 普通逆じゃないか。君は僕に勝ったじゃないか。あり得ないだろ、こんなの。


「何……で……」


 ゆっくり、ゆっくりと倒れる彼女に歩み寄る。そして声をかけようとした時だった。


「がっ……!?」


 ――刃が僕の背中を、ざくりと貫いた。振り向くと、そこにいたのは……


「……遠野さんを殺したのが、まさか君なんてね」

「え……」


 オフホワイト色の柔らかい髪に白い肌。百合の如く白い刀を持つその人物は、まさかの奏刃君だった。


「奏刃……君……」


 その目にかつての優しさは微塵も無かった。今は完全に僕を殺すべき敵としか見ていない。親友としての彼は、もう存在しない。


「さよなら――僕の唯一の、純粋な親友」


 刺された背中から剣が引き抜かれると同時に血しぶきが空を舞った。痛みすら感じることも無く、顔面から前に倒れた。



派王(やつ)の余命宣告は、思わぬ形と速さで実現した。




 西暦2030年10月3日 黒神美尊死亡を確認。これにより、飛翔学園追放は免除。彼の遺体は学園側で処理を行う事とする。

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