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#27「仕切り直し」

 妖精騎士の襲来が起きて以降、僕は残り約2週間の謹慎生活を病院で過ごした。朝起きてはリハビリをして、薄めに味付けられたご飯を食べて眠る。定められたスケジュールでただ動くだけの機械的日常を過ごしていた。


「……」


 辛かった。いや、そんなものはとっくに通り越して何も抱かなくなった。ただ怪我が回復すると同時に身体が鈍っていく感覚だけが身に染みていた。


「――はい、もう普段通り生活していいからね。お大事に。これを言うのが今回で最後になることを願ってるわ」

「……今日までお世話になりました。本当にありがとうございました」


 入院してからずっと僕の看病やリハビリをしてくれた看護師の方へ、最後に深く頭を下げる。体感10秒間下げ続けてからゆっくりと頭を上げ、振り向いて完治した身体を動かす。


 さぁ、仕切り直しだ。鈍った身体は後で少しずつ鍛えなおそう。でもまずは「ただいま」の一言で皆の心配を吹き飛ばすのが先だ。



 ――しかしそれより先に、黒い光が一瞬目の前に落ちた。あの日街を焼いたのと同じ、漆黒の雷が。


「――――――」


 気づいた頃にはもう、僕の身体は謎の爆発音と同時に吹き飛ばされていた。



 


 

「――ここで速報が入ってきました。つい先程、北海道札幌市の病院で巨大な爆発が発生しました。今も建物からは激しく黒煙が上がっているのが映像から分かると思います」


 この緊急報道が報じられたのは、学生達が昼休みに入ったばかりの時間帯。SNSでもその事態は速報として取り上げられ、様々な声が上がっている。「また異種族の仕業」だの「今回は流石にテロ」だの、根拠の抜けた意見が一つのトレンドの更なる火種となり、彩っていく。


 無論この報道は陽翔学園にも広く伝わっていた。理由など言うまでもないだろう。ここの生徒が一人、その爆発が起きた病院で入院していたのだから。


「美尊君……」


 その入院していた者の名を、青髪の少女は呟く。


(本当に美尊君は不幸に恵まれてしまってる。この学園に入学した時から……いや、小樽で初めて会った時からそうなのかもしれない。いつも彼の心は、微笑んでいなかった。顔では誤魔化せても、その奥に秘めるどす黒いものが……彼に取り憑いた『呪い』そのものがどうしても見えてしまう。それは今も同じ。お見舞いに行ったときもそうだった。身体は無事でも、まだ美尊君自体は完全に癒えていなかった。

 そんな中での今回の爆発だ。明らかに世界が……現実が彼に殺意を向けている。ボクにはそれを止める義務がある。一度彼に銃口を向け、彼の思いや覚悟が込められた刃を知ったのだから。傷ついた彼に、涙を流したのだから。


心から――――――死んでほしくないって、思ってしまったから。だから)



「……今、助けにいくからね」


 少女――遠野歩夢はすぐさま早退届を書いて教卓の上に置き、荷物を持って教室を後にした。昼休みで陽キャ達が騒いでくれていたからか、誰もボクがいなくなる事に気づかなかった。




「……桐生、これ」

「知ってる。あいつが巻き込まれてんだろ」


 彼の危機を悟ったのは歩夢だけでは無かった。しかしこちらは不思議と冷静だった。急いで助けに行く、なんて感情さえも湧かなかった。


「心配ならいらねぇよ。あいつは生きて戻ってくる。あの妖精騎士に襲われた時も生きてやがったんだ」


 (それに、俺はあいつと一度戦わなきゃなんねぇ。いや、戦いてぇっていう感情の部分が今は強ぇのかもな。何で一般人のあいつがこの学園に入学してきたのか……その先にあるあいつの『魔術師』としての強さを直接この目で確かめなきゃいけねぇ。そうでもしなきゃ俺自身があいつの存在を納得できねぇ。

 だから今死なれては困る。でも俺はここにドラゴンどもと対峙した際に、一度あいつの強さ『そのもの』を知っている。こんなテロ如きで簡単に死ぬようなやつじゃねぇ。この陽翔学園に生徒として認められたのであれば、な)


「――だからよ日向、このまま安心して黙ってろ」


 そう呟くと、芹澤桐生はふと立ち上がっては昼食を買いに購買へと向かった。一人取り残された涼宮日向は去り行く桐生からライブ配信でニュースが流れるスマホ画面へ視線を移す。


「……あれ」


 思わず目を凝らして画面を見る。そこには小さく黒い竜が病院を囲うように映っていた。しかしそれらは前にこの学園で見たものとは明らかに異なっていた。


「これは……!」


 偶然配信中のカメラが少しズームしてくれたおかげで、若干だが見えた。無数の竜に鎧を付けた人が乗っている姿が。俗に言う竜騎士というやつだ。


「……やっぱやばくないかな、これ」


 今回限りは、親友である桐生の言葉が信じられる気も起きなかった。

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