#18「再開せし学校生活」
「あ、改めまして……く、黒神美尊です。まだまだ不慣れな事ばかりで皆さんにこれからたくさん迷惑をかけてしまいますが、精一杯頑張ります。よろしくお願いします」
あれから事なきを得ずに謎の竜の群れを退治し終えた。その後数日間の臨時休校を挟み、学校生活が再スタートを切った。今度は何も起こらないまま自己紹介を終え、拍手が教室内に鳴り響く中、僕は席に着く。
ちなみに僕の席は最後列且つ右端の席である。つまり一番教室のドアから近い場所……授業中に廊下を歩く先生達に真っ先に目を付けられる結構危険な席である。
「はぁ……目立つとすぐこれだ……」
緊張から解放されたと同時に疲れがどっと身体を襲い、僕はため息をつきながら机に突っ伏してしまった。そんな僕の姿を見て、隣に座っていた少女がくすりと笑った。
「くすっ……でも、頑張ってるとこはちゃーんと、伝わったよ!」
「あ、ありがとう……って、君は……」
「私は星野愛菜! あれ、こないだ紹介したと思うんだけどなー?まぁいっか! とりあえずお隣同士仲良くしてね! 美尊君っ!」
「う、うん……」
とにかく元気いっぱいで、僕にはもはや太陽の如く輝いて見えてしまう。でも確実に悪い人ではないので、隣の席同士のよしみで仲良くしておこう。
「はい、これで転入生たちの自己紹介が全て終わりました~! 色々あって時間がかかっちゃったけど、皆無事に学校生活をスタート出来て先生は嬉しいよ~! まだ慣れないと思うけど、今日からよろしくね~」
にこっと先生が微笑むと、すぐに黒板の上に取り付けられているスピーカーからチャイム音が鳴る。学校でしか聞くことのない、独特な音色。今この時間は授業が始まる5分前を知らせる予鈴だと全員が察知しては各々教科書やノートを準備する――と思いきや、転入生組以外の全員が取り出したのは拳銃であった。
「え……?」
驚きに声が隠せない。教卓には誰もいないというのに何を皆そんな物騒な事を起こそうとしているのか。不思議でままならない。
「転入生に教えてやる。この学園の授業は……一味違ぇぜ」
――二度目のチャイムが鳴る。時計の短針が9の方向を指す。1限目が始まる。教室内が静まり返り、チャイムの音色だけが響き渡る。その最中に教室の扉が開き、お爺さんが杖を突きながら中へと入っていく。
刹那、一斉にお爺さんに向けて生徒達が銃口を向けた。
「は……?」
脳処理が追い付かないまま無数の銃声が静まった空間を破壊した。そのままお爺さんがハチの巣にされるかと――思いきや。
「っ――!」
「……!?」
なんと、お爺さんがこちらを向くことなく左手を翳した途端に目の前まで迫っていた銃弾がピタリと止まった。
「……今時の若いもんは詰めが甘いのぉ。儂がこの程度の銃弾如きを防げぬとでも思ったか? たわけにも程があるわい」
「くっ、今回もダメかよ。授業始まってからまだ1回も殺せてねぇ!」
「え……えっと……」
何が何だか分からない。何でいきなりお爺さんを殺そうとした? あと平然と銃弾止めてるお爺さんは一体何者なんだ? 雰囲気的に僕達がここに来る前からやってそうだけど。
「あ、転入生達には言ってなかったね。これは日本史の授業の始まりに行われる『暗殺チャレンジ』だよ。あそこのお爺さん……藤影直虎先生を暗殺出来たら、日本史の評価点が上がるっていうものだよ」
(何じゃそりゃっ……!?)
僕達転入生組に、奏刃君が優しく教えてくれた。しかし皆僕と同じ反応をしていた。それも無理ないだろう。やってることは殺人なのだ。しかも普通に銃刀法違反してるし。
「あ、これはこの学園で支給されてる護身用の拳銃だよ。この学園内でなら生徒及び先生方の所持が認められてるんだ」
(そ、そういう問題ですかねっ……!?)
まず普通の人間なら先生を殺すなんて事しないでしょ。というかよく学校側も護身用とはいえ拳銃支給したな! 暗殺チャレンジといい、この学園そのものが狂ってると思う僕の頭は正常……だよな?
「……じゃあ今日も儂を殺せなかったところで、日本史やるぞい!」
「も、もうついていける気がしない……」
「あ、あはは……」
この学園の常識で一気に幸先が悪く感じた。既に絶望しきっていた僕を、愛菜さんが苦笑いを浮かべる。
(零さん、僕来る場所間違えたよ……きっと)
ただ一言、僕は唯一の師匠に向けて心の中で呟いた。




