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贋作鍛冶屋の押しかけ弟子  作者: ものうちしのぎ


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20/21

二十 エピローグ

 ご訪問ありがとうございます。


 鍛冶屋と弟子のちょっとヘンテコな物語も、本編としてはここで一区切り。

 ぜひ最後までお付き合いください!

 “魔剣騒動”が終わってから、半年が過ぎようとしていた。


 折れたことで“魔剣”はその力を失っていたが、念のためということで、ベルナルドの手によって“魔剣”の残骸は鋳溶かされた。


 破壊されたギルドの修理はあまり順調とは言えず、元通りになるにはあと何年もかかるという話だった。


 ファルツォは騒動の責任を追及され、僻地へと転任させられてしまった。



 マルコの家では、ベルナルドが荷造りをしていた。


「マルコ、儂はそろそろシルヴァナへ帰るぞ」

「そうですか」

「なんだ、やけに嬉しそうだな。口うるさいのがいなくなって、ホッとしてるのか?」

「否定はしません」

「こいつめ……」


「マルコ、ちょっとこっちに来てくれる?」

 鍛冶場にいたエウラリオが呼んでいる。


 マルコが顔を出すと、


「師匠、これ僕が打ったんです。よかったら使ってください!」

 リタが手のひらほどの布包みを差し出した。


「リタ、もう腕は痛まないのか」

「あんなのすぐ治っちゃいました」

「無理するなよ。ゆっくり治せばいいんだ」


 あの日、リタは死ななかった。


 何の気まぐれか、ストゥルタスは剣の腹でリタを打ったのだ。

 子供を斬るのをためらうだけの良心が残っていたのか、あるいは単に、まとわりつく蝿を追い払うような気分だったのかもしれない。


 ともあれ、おかげでリタは腕の骨を折るだけで済んだ。


「マルコを驚かせたくて、内緒で打ったんですって」

「またか……材料だって安くはないんだぞ?」

「ヘタでも何でも、どんどん打った方がいいって、師匠がいつも言ってるじゃないですか」

「それにしたって、限度ってもんがあるだろ……」


 マルコは布包みを開いた。


「これは(たがね)だな?」

「はい!」

「ふぅん……なかなかよく打ててるじゃないか」

「えへへ、頑張りました」

「リタ、あまり調子に乗るなよ」

「はい!」


「丁度良い、マルコ……その鏨で、あの剣にお前の銘を刻め」

 ベルナルドが目を向けた先には、壁に掛けられた〈魔剣折り〉があった。


「銘を……」


「そうですよ、師匠。あれは師匠のオリジナルなんだから、堂々と師匠の名前を刻んでください」

「マルコ、これで“贋作鍛冶屋”の異名も返上ね」


「……そうもいかねぇよ。食っていかなくちゃいけねぇんだ……依頼があれば、贋作だって何だって打つさ」


「ははは、それも良かろう」

「師匠、早く早く!」


 わくわく顔のリタが、〈魔剣折り〉を台に据える。

 フェロがやってきて、そ~っと剣に手を伸ばした。


「おいで、フェロ」

 リタがフェロを抱きかかえる。


 仲間が見守るなかで、マルコはリタの打った鏨を剣の(なかご)に当てると、勢いよく鎚を叩き込んだ。



 〈終〉


 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


 『贋作鍛冶屋の押しかけ弟子』、これにて本編完結となります。


 次回はオマケ編として、もしも物語がちょっと違う始まり方をしていたら?

 そんな“if”な世界を描いた短編と、四コマ漫画をお届けします。


 もう少しだけ、この師弟と一緒にいていただけたら嬉しいです。


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