表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が為ノ夢物語  作者: 好き書き帳
TRY ANGLE
9/75

『Hard rejection』

「返してくれませんか?」


 エヴァンと男たちに囲まれて、ライアは普段の通り道とは違う通りに入っていた。

 男たちは常に逃さないよう周りを囲み、紙袋を誘蛾灯のように揺らしてライアを路地の奥へと進ませていた。


「もうちょっとだよお嬢ちゃん」

「ほーら。こっちこっち」


 この先は行き止まりだ。

 しかし、男たちはその先のこと。

 自分達を金で雇った貴族の御子息様が見た目も良くない、少女と間違えられてもさしつかえない小柄な娘をどうするのか。

 それについてはあらかた予想がついていた。


 割れた石畳は男たちに踏まれるたびに、がたガタ、と音を鳴らした。

 道端に転がっていた欠片を、男のくつが蹴りつける。


 石は、高く飛び、壁にぶつかると砕け散った。


 その音をまるで目覚ましのようにして、路地の左右の空き家の壁に挟まれて眠っていた男はまぶたを開いた。

 瞳の先には、男たちに行き止まりへと連れられていく女の姿があった。


 道端に転がっている『石』のようだ、と思った。


 ◆◆


 路地の行き止まり。

 高い壁の前、ライアはさらに小さく見える。


「返してください。お肉が冷めてしまいます」とライアがひどく困った声を出した時だ。


 エヴァンがライアの顔の横、石壁に手をついた。


「ライア。俺と一緒になろう」

「すいません。お断りします」


 ライアは変わらず、拒絶する。


「私には貴方とお付き合いする気はまったくありません。諦めてください」

 一部の隙間もない。


 男たちはやれやれと、首を振っている。

 エヴァンの瞳の温度がす───っと下がった。


「こんな真似はしたくなかった。けど、君がそういうなら……」

 ライアの頬にエヴァンの手が触れようとした時。



「ならどうする?」



 驚いたエヴァンはびくりと、肩を跳ねさせる。

 男たちはすでに声の主の方を見ていた。


「誰だ」

 エヴァンは怒りと驚きを混ぜ合わせた表情で、通って来た路地を振り返る。


 薄暗い路地の中央。そこに『ひび割れた男』がいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ