『汝こそ、我等こそ』
「レグさん……」
格下のunder相手に倒れ伏した同志。
信じられないことばかりで、凍りついているカプルに追い討ちをかけたのは。
石つぶてだった。
カツン、コツ、ゴツッ、容赦なく打ち付けられる石の雨。
同時に浴びせられるのは、罵倒。
「化け物! バケモノ!!」
丘を見下ろす観客は、恐ろしい目でカプルを見ていた。
その恐ろしさに足がすくむ。
だが。
「黙れ」という一言が場を鎮めた。
肝が冷える圧倒的な暴君の命令。
声の主は、薔薇色の貴婦人を従えた偉丈夫。ヴァルクル侯爵。
この国で最も恐れられる番人。
「怒ってますね……」
「怒っているとも……」
アルフレドとレニスは、ファリスタの席の後ろに身を潜めていた。
二人は身内だが、恐ろしいものは恐ろしい。
「次に石を投げた者どもを罪人と認定する。よいな?」
感情が読めない瞳は、不在の剣王の席に向けられ、カプルの祖父の動向を伺っていた。
その視線を受けたカプルの祖父は、口を開こうとしたが、できなかった。
「止メないで下サい、お祖父様!!
俺は、レイゼン卿に負けたくない!!」
若人の言葉に、二人の老爺が固まった。
そう。
どちらも、負けたくなかった。
あの日、あの時。
──本当なら、どちらかがもうこの場にいなかっただろう。
しかし。
レイゼンが負けた。
だから、二人はここにいる。
レイゼンは、汚名とともに苦しみを背負ってきた。
アルディも、疑問を抱きながら、長い時間を生きてきた。
そして、現在。
苦しみの中にありながら、カプルは剣を握りしめている。
勝ち目はない、そう理解してなお。
負けたくない。
──泣いているのだろう。
震える声で、兜の下から精一杯に声を張り上げる姿に感銘を覚えた。
「若人と侮っていた。非礼を深くわびる」
レイゼンは、頭を下げて謝罪する。
そして、胸いっぱいに空気を吸い込み、声を響かせた。
「観衆よ、見たまえ! これこそが王の権威を担う者ぞ!!」
さらに、息を吸い込み、大声を張り上げる。
「化け物などではない!!」
カプルが、手を伸ばして兜を脱ぎ捨てた。
鼻水と涙を流した青年が、誇り高い面ざしをこちらに向けていた。
「レイゼン卿。──感謝申し上げます。そして、お覚悟を」
「おうとも。いざ、主の権威をここに示そうぞ」
両者ともに清々しい面持ちで、歩み出し。速度を上げ、激突。
全身の肉と骨を軋ませて、腹の底から声を出して、相手を叩きふせんと、激しい攻防を繰り広げた。




