65/78
『回想/スライダー』
ザイルの訓練はひたすらに地を滑ることだった。
靴底に貼り付けたサーペント種の革をヴィエッタに何度も張り替えてもらい、より滑りの良いものに。
ヴリテンの地面は荒れていて硬い。
転んで口に入った小石を、吐き捨てる。
「はああ、あいかわらず、やりにくい土地」
こんな土地じゃ、作物もろくに育たない。
剣王国に放置された荒れた島。
開拓しようにも、この土地には祖王の時代からの決まりがある。
『ここは女王の島。何人たりとも手を出すべからず』。
それを破って島に上陸しようとした連中はいたそうだが。
海蛇やクラーケンの餌になった。
はたまた、白騎士の亡霊に斬り殺された。
とも、云われている。
「そりゃ、女王様の墓に、土足で踏み込んだら、怒るだろ。返り討ちだ」
ザイルは、擦り傷で血に染まった掌をズボンで拭いた。
「服を汚すんじゃないわよ!!」
すかさず、ヴィエッタのビンタが飛んだ。
頭にクリーンヒットした一撃は思いのほか痛かった。




