『カウントダウン-2-』
「縁とは、これ。このことかのう」
レイゼンは目の前に立つ騎士を見た。
その姿は、かつての戦いで合間見えた相手とよく似ていた。
それもそのはず。
カプル・ルゴート・アルディは王の席の横に立つ現王剣の孫であった。
「俺もまさか、祖父が負かした。いや、祖父との戦いを途中放棄した相手と戦うことになるとは夢にも思っていなかった」
カプルは不機嫌を隠さない。
レイゼンは過去の剣選で自ら剣を手放した。
そして『失格騎士』の汚名を背負った。騎士としてあるまじき者だ。
それなのに祖父は時折、カプルにこぼしていた。
『何故、私はレイゼンに勝てたのだろうか?』
カプルは、お爺様の方が強かったから、怖くなったのです。
そう、答えた。
祖父が弱気な発言をするのが、映えある王の剣がそんなことを言うのが嫌だったらからだ。
「ここで剣を引け。無様を晒すな、レイゼン・オルグ・ルディラス」
「聞けんな。むしろ、そちらが引いておけ。アルディの孫、此度は全力で参るでな……死しても怨むでないぞ」
カチャカチャ。
カプルの全身鎧が魔力の波動を受けて、音を立てる。
魔導師は青ざめながら、レイゼンとカプルの魔力値を口にした。
「だ、第十三位第二王剣レイゼン、オルグ・ルディラスの魔力値……四十二。第一位第二王剣、三十七」
前回の剣選の時の魔力値と違う。
カプルは己との差に驚いた。
レイゼンの魔力値は三十そこそこだったはず。そう記録には残っていた。
なら何故、これほどの誤差が出るのか。
「前は王弟殿下との契約で力を抑えられておったが、もはや儂に枷はないぞ。若造」
レイゼンの言葉一言一言に込められた魔力で鎧はなり続ける。
カプルの前には、かつて最高の剣と謳われた老騎士が身構えていた。




