『カウントダウン-3-』
「建国王と守護竜が定めし剣の選定にふさわしき勝負を行うことを!!」
進行役の長い宣誓の言葉がようやく終わった。
選定の丘の周囲に土魔法で築かれた客席に座る貴族からの拍手が響く。
「では、王剣よ。その力をそれぞれ示されよ」
進行役の指示に従い、『魔力測定器』を持った魔導士が六人の前に立つ。
「こちらに、血を捧げてください」
「へー、へー」
用意された針を無視して、ザイルは面倒くさそうに、指を噛んだ。
ツゥ、と流れた血の筋は玉になって測定器に落ちた。
フラスコ型の容器の中に収められた、測定用の魔石と血が反応し合う。
そして、青い魔石は赤みを帯びる。
その色合いから魔導士は魔力値を判断した。
「第十三位第三王剣、ザイル・ロッゾの……クッ。クク、魔力値……九」
魔導士は笑いを噛み殺しながら、測定したザイルの魔力値を会場に告げた。
同様の嘲笑と侮蔑がコソコソと声音を抑えていても客席から聞こえてくる。
「なんて低俗な数値」、「本当に騎士なのかしら」と。
『10未満』=underを嗤い者にする。
それが、ダーイングには耳障りだった。
「せっかくの初舞台を汚されるのは我慢し難いな」
「気にすんなって。俺、農民だし。こんだけありゃ多い方じゃん」
嘲りの的にされている当のザイルは、気にした様子はなく、余裕の風体。
ダーイングは沸々と煮える思いを腹の底に沈める。
「そうだな。たいていが、五か六だからな」
「よく知ってんな。意ッ外」
「領地の農家と付き合いがあるのでな、畑仕事も経験がある」
「まじか、ちょっと好感度上がった。なんの野菜の」
「そこまでになされ」
レイゼンは畑のことで、盛り上がりつつある二人を鎮める。
「魔力の数で笑うのは、礼儀知らずと親に教わらなんだかのう」
ザイルを担当した魔導士はレイゼンが目を細めると、笑いを消して黙り込んだ。
そして、同様に油断の色をその目に宿していた相手の第三王剣、獅子鎧の騎士は「ご忠告感謝します。敵を前にして、魔力値程度で油断するなど、恥もいいところです」と、深々と頭を下げた。
「なんか、素直に謝ってるけどよ。テメェはぶっ倒すからな」
ザイルはいらぬお世話とばかりに、レイゼンを睨み、勝負の相手も睨む。
「嫌われたものだ。私は何か恨まれることをしたかな」
「恨んでねえ、けど。恨んでるやつとつるんでるから、俺、おまえ、キライ」
「よくわからんが、嫌いならそれで結構。我が剣を預ける方の邪魔ものは敵だ」
牙をのぞかせるように唇を釣り上げるザイル。
「第一位第三王剣、レグ・ラサラ・スライオン。魔力値三十五!!」
魔導士が読み取った魔力値を告げると、獅子はザイルを見下ろして、獰猛な笑みで牙を剥いた。
「噛み殺されたくなくば、棄権しろ」
ザイルは鎌首をもたげる様に、圧を放つ獅子の顔を下から見上げた。
「上等。テメェこそ、噛みつかれてから、後悔しやがれ」




