『選定の丘』
ライアがいたのは、王都から少し離れた丘だった。草に覆われて起伏はほとんどない。
ピクニックなどしたら気持ちの良さそうな場所だった。しかし、ここはあと数日で『王剣』同士が血を流し合う場となる。
レイゼンの提案で、ライアと三振りの王剣、十三位は『選定の丘』に立っていた。
「ここで、剣選が行われました。──そして、儂は負けました」
「ならば、次は死んでも勝て。屍は丁重に葬ると誓おう」
ファリスタはまるでダーイングのような、苛烈な言葉を老騎士に告げた。
「我が主のみならず、第十三位まで、そう申してくださるとは。感謝いたします」
「勝負の前に、喝をくれてやっただけだ。我が第二の剣」
レイゼンは、首を垂れる。
「足場としちゃ、悪くねぇ」
ザイルはにんまり、と嗤う。一人であちこち歩き回り、靴で地面を踏み、うんうん、とうなずいた。
「いい土じゃん。畑には、向かねえけど」
「いよいよ。『祖王』に近づける」
ダーイングは、期待に胸を高鳴らせている。
ここは『建国時代』からあるものだから、それよりも古き時代。祖王の時代のものではない。
しかし、剣の国の祖のように、この地で。
──剣を持って、戦える!
「おまえ達、『まともな王』の支払いとやらをしたいなら。頑張れ。当日、私は観ているだけだ」
だが、とファリスタは考えた。
「望むなら、天への祈りくらいは捧げてやるが、どうする?」
「おまえの祈りよりも。勝負のあと、女王の賛辞の方がいい」
「失礼でございますよ。ダーイング様……」
「おまえのバカ正直なとこ、悪くないって、俺は思う」
ファリスタは「私より、君の励ましの方が効果がありそうだ。一言頼む」とライアに役割を譲った。
「──では、恥ずかしいですが」
ライアは、三騎士をまっすぐに見つめた。
「騎士達よ。その手に栄光を、その瞳に勝利を、その胸に輝きを。──勝て。ただそれだけを、願います」
宣告に剣がこたえる。
「我が女王に勝利を誓い、剣に魂を込めて。騎士としての初陣をご覧にいれよう──見ていてくれ」
ライアは、ファリスタに振り返る。
「私も観戦できるのでしょうか?」
「……私の侍女としてなら、可能だと思う。アルフレドに手配させよう」
◆◆
その日のうちにアルフレドは、ヴィエッタにライアが当日着る侍女服をあつらえさせた。
「もうちょっと、早く言ってよね!」と、剣王国で恐れられる伯爵は、怒られた。
巻き尺の女王はライアに似合う、最高の侍女服にしたかったと、伯爵に詰め寄り、出来る限りの素材を要求した。
「彼女には、私も勝てん」と、アルフレドはこっそり愚痴をこぼした。




