表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が為ノ夢物語  作者: 好き書き帳
TRY ANGLE
4/75

『To go shopping』

 ライアは両開きの扉の片方を開けて外に出ると、中央の通りに向かって足をすすめた。

 

 店は大通りから離れたところに、居を構えている。

 この一帯は、ライアの店のずしりと重たい岩のような威容の圧力ゆえか、住むものが少ない。

 喧騒から離れた、静かな沈黙があった。


 『石の家』。

 そう名付けてから十年も経つ、我が家を見上げる。 

 人目に触れることは少ないここで、生活し、働いて、それなりに繁盛している。

 

 ライアの仕事は『石』を扱う。

 だが、一般的な魔石ではない。むしろ、それ関連の仕事は受けていなかった……。

 

 魔石類の扱いがないことは、一見、不利なことのように思われるが。

 そこは、『お兄さん』が何とかしてくれていた。

 

 おかげで。

 今日も、ライアはこうしてごはんを買いに行けるのだ。



 ◆◆


 いつもの串焼きだけでは少し、栄養不足ですね。何か、お野菜も買って……。

 あとパンも、いります。と考えながら、ライアは歩いていた。

 

 ここのところ仕事が立て込んでいて、ライアもスプルスもまともな食事をとっていなかった。

 食べていたのは、保存用に置いていたドライフルーツやナッツ、乾燥パンばかり。

 

 ライアの頭の中は、すぐに食べ物のことでいっぱいになっていた。

 そんなことを、ぼうっと考えながら、ふらふらとした足取りで進むうちに。


 角を曲がったところで、男とぶつかりそうになった。


「おっと危ない。ごめんよ、お嬢さん」

「こちらこそ、すいません。前を見てませんでした」

「ハハ、いくら王都の治安がいいからって、注意した方がいいよ」

「そうですね」


 ライアは、大きな黒縁メガネの位置を戻しながら、男の意見に賛成した。

 さすがに、気を抜きすぎだった。

 

「ご忠告ありがとうございます」

 深々と頭を下げて、お礼を述べると灰色の長い髪がふらりと垂れて、メガネの位置がまたズれる。

 男は、ライアに手を振ると「じゃあね」と、その場から去っていった。


 男の足音を背後に聞きながら、ライアが頭を上げる。

 そこには、石畳の街路。左右には、煉瓦レンガ造りの家が並んで、その間を、たくさんの人々や馬車が行き交っていた。

 

 今日も、王都ソルダムの街並みは騒がしくて、明るく、活気があった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ