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『MY TEACHER』
「これで何人目だ」
──先生は苛立った口調で大きく息を吐いた。
ライアは決まりが悪そうに答えた。
「ええと。忘れました。いつものことなので」
「……まったく。ろくでもない羽虫が多すぎる」
スプルスは、窓の外に視線を向けていた。
ライアもまた、そちらを見ていた。
そこには、遠ざかっていくエビンの背中があった。
「二度と店に近づくな。ライアに声をかけるな」と。
スプルスに片腕で爪先が床から離れるほど、持ち上げられながら注意されたのが、効いたらしい。
ライアは、一難が去ったことに胸を撫で下ろした。
スプルスは警戒を解き、肩から力を抜いて「……そろそろ昼食の時間だ。何か作ろう」と、言いかけた。
が、ライアはそれを阻止した。
「いえ、串焼き屋さんで買ってきます!」
ライアは、急いで財布を取りに自分の部屋に向かった。
スプルスは首を傾げて、ライアが戻ってくるのを待った。
「では、いってきます!!」
財布と買い物籠を手にしたライアは、スプルスの前を駆け足で通り過ぎ、扉に手をかけた。
スプルスは「気を付けてな」と、ライアを見送った。