『The whereabouts of the Bird』
ダーイングの行方がしれなくなって数日が経った。
レイゼンは、ルディラス侯爵家の屋敷の自分の部屋にいた。深いため息を吐く。
「失礼いたします。レイゼン様」
「何か」
「お客様がお見えになっております」
『魔狩りの剣』の遣いかと思ったが、執事の表情でそうではないと察した。
「誰が来た」
「それが『フォルド子爵』でございます」
レイゼンは怪訝な顔。
長い髭をなでながら、何故かと考えた。
当家と、かの子爵家に繋がりはない。
当主の名は聞き及んではいたが、面識もなかった。
「どうなさいますか?」
しばし考えた後、レイゼンは「会おう」と執事に伝えた。
◆◆
ルディラス侯爵家の客間では、一人の美男子が立ちのぼる茶葉の香りを楽しんでいた。
だが、部屋にレイゼンが入室すると立ち上がり、両手を広げた。
「これは、ルディラス前侯爵。お会いできて光栄です」
緩やかに波打つ茶髪はやや長く、髪留めで一括りにしてサイドに流している。ロングコートの襟や袖、シャツには刺繍。
革のブーツには煌びやかな装飾。
冷たい青を基本とした石が散りばめられていた。
「私はフォルド子爵家当主。『ルシアス・セレナ・フォルド』。この度は突然の来訪をお許しください」
ルシアスは滑らかな動きで優雅に一礼する。
「うむ。我は『レイゼン・オルグ・ルディラス』。フォルド子爵が当家を訪れた事を喜ばしく思う」
「感謝いたします」
レイゼンは先にソファに座ると子爵にも座るように促す。
「それで、何用で参られた」
「それが早急にご相談したい事案がありまして」
「子爵が当家に何の相談かの」
現当主である息子ではなく、前当主である自分に一体何の話をしに来たのか。
──『氷結子爵』の呼び名を持つこの男は。
「実は先日、私の知り合いが鳥を拾いまして」
「鳥?」
突然の鳥の話。
レイゼンは不信感を抱きながら、子爵の話に耳を傾けていた。
「ええ、それが大きい鳥でして、一体どこから逃げ出してきたのやら?」
「逃げた?」
子爵が言わんとしていることが、侯爵として貴族の世界を生き抜いてきたレイゼンにはわかってきた。
ルシアスは微笑を浮かべながら、紅茶のカップを持ち上げる。
ふぅ、吐息を吹きかけ湯気を揺らす。
「実はルディラス前侯爵も鳥を育てておられることは耳にしております。ただ前侯爵の鳥は、籠の外へ羽ばたいてしまったとか」
レイゼンの前に置かれた紅茶の杯からも湯気が立ち上っている。
「よろしければ、一度ご覧になられませんか? もしかしたら同じ鳥かもしれません」
レイゼンは涼しい顔をした子爵を睨みつける。
「脅しか?」
「いいえ、違います」
両手を上げて、敵意はないと示すルシアス。
「実は、本題は別でして……話を続けても?」
「よかろう」
ありがとうございます、と子爵は両手を下ろす。
「それで、本題とは?」
訝しげに眉を顰めるレイゼン。
「私が宣伝を担当しております『石の家』についてです」
ルシアスは美貌に華を咲かせた。




