『つかれた大公』
翌日の朝。
ライアとダーイングは、串焼き屋の野外席で食事を取っていた。
もぐもぐと、元気に肉を食べているライアと机に肘をついてそれを眺めるダーイング。
「朝から肉か」
「これから忙しくなりますから。しっかりと栄養補給です」
「そうか」
ダーイングはあまり食が進まず、皿の上の串焼きに手をつけない。
ヴィエッタさんにたくさんお着替えしてもらってお疲れなんでしょうね。
そう。ヴィエッタは『石の家』の従業員を着せ替える事を何よりも楽しみにしている。
今回、ダーイングは『お客様』だったが。ヴィエッタには些細な事だった。
男爵が話を持って行った時にも、「大公閣下で着せ替えができる機会なんてこの先あるかわからない。ぜひ、行かせて!!」と、腕にしがみついて『石の家』までついてきたそうだ。
そして、ダーイングがヴィエッタの手から解放されたのは昨日の夜。
「うふふ! やりがいがある仕事だったわ!!」と、彼女はご満悦だった。
ダーイングはとても疲れた目をしてたけれど。
その後、『石の家』の隣。従業員用の建物に泊まってもらった。
朝になり顔を見せたダーイングを「ご飯に行きましょう」と誘い、いまである。
向かいの席に座っているダーイングは今、ラフな黒いシャツにズボン。取り付けられた釦はすべて黒い。
この衣装は、とりあえず普段着にとヴィエッタがダーイングに着せたものだ。
着ていた服は汚れなどがあったため、直してから返すとヴィエッタが預かっている。
「お持ち帰りにしますか?」
「いい」
「なら、それいただいてもいいですか?」
ウィスタードさんに怒られるかもしれませんが。肉に熱い視線を送ってしまう。
「やる」
「いただきます!」
ライアは、ダーイングの皿から肉を取り、パクリと口に入れた。うん。おいしい。
串焼き屋の主人は肉を焼きながら、二人の様子を盗み見ていた。
「今度は、まともそうな男……かな?」
これまでライアに交際を申し込んできた相手とはどこか違う雰囲気だ。
先生に追い払われない限りは、様子を見よう。
店主は二人を見守ることに決めた。




