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我が為ノ夢物語  作者: 好き書き帳
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21/76

『与えるもの』

「請求が『王』だと?」

「はい、エルディング様」

「俺に継承権がないことは、承知しているな?」


 ウィスタードは静かに頷いた。

 わかっていて、か。


『大公』でありながらも、ダーイングには継承権がない。

 この国では、高位の貴族。

 ましてや王族ならば『魔剣』を扱える。いや、扱えなければならない。

 この国が『剣』の王に統治された国である以上それは必然だった。


 しかし、ダーイングに『魔剣』はない。

 魔剣どころかまともに扱える『剣』が存在しなかった。

 ──『剣を持てない王族』。

 それが、ダーイングの呼び名だ。


 ダーイングが使用した剣はどのようなものだろうと。

 壊れる。

 割れ、砕け、錆びつき、折れ、曲がり……。

 ただの一振りで使い物にならなくなる。


 魔法による『身体強化』に剣が耐えられないのではない。これまで、できるだけの剣でそれを試し、確かめてきた。


 しかし、一本も『剣』はなかった──……。


 ◆◆


「申し遅れましたが、私どもが請求する『王』とはあなた様のことではありません」

「では、誰だ」

「『第十三位継承権保持者』です」

 ダーイングは、眉をひそめた。

 ならば、必要なことがある。必要なものがいる。


 それに、なれと言っているのか?

 この俺に。


「よろしいでしょうか?」

 こつり、とライアが歩き出した。

「お客様。貴方あなたが『まともな王』をお支払いくださるのなら……」

 ダーイングの前まで歩き、立ち止まる。

「私は、そのひび割れを治し、貴方に『剣』をご用意します」

「剣を用意する?」

「腕によりをかけましょう」

 ライアはダーイングの目をまっすぐに見ていた。

「どうなさいますか?」

 変わらず、穏やかな微笑みを浮かべている。

 ダーイングはそれを見た。


「失礼します」


 横から声をかけられ、顔を向ける。

 エルクリッドが黒い木板の上に挟んだ横長の紙を差し出していた。


「こちらは、請求書になります。ご承諾しょうだくいただけるのでしたらご署名を」


 請求額の欄には、はっきり『王』と記されている。

 ダーイングはもう一度ライアを見る。


「どうなさいますか?」


 差し出されている請求書。

『剣』。

 もし、自分に振るえるものが。

 そんなものがあるのなら──。

 ダーイングは手を伸ばした。

「この店は随分ずいぶんと、高い支払いを請求するな……」

 ダーイングは、請求書の一番下に署名をした。


「これでいいか」

「はい。当店のご利用ありがとうございます、お客様。ご満足いく物を用意させていただきます」

 ダーイングの眼差しを受け止めて、ライアは揺るがない。

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