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我が為ノ夢物語  作者: 好き書き帳
TRY ANGLE
18/76

『WORKERS.2』

 着替えを済ませたダーイングは、カミュに案内され、また『石の家』の応接間に降りていた。

 そこでは、スプルスに加えて二人の男が、長椅子に行儀悪く座っていた。


 どちらもガラの悪い目つきをダーイングに向ける。


「こいつが大公?」

 跳ねた赤髪を髪留めで縛り、尾のように垂らしている青年が独特なしゃがれた声で質問する。


「ザイル先輩。エルディング様に失礼ですよ」

 カミュが言葉遣いをたしなめるが、青年は「けっ」と吐き捨て、改める様子はない。


 ダーイングは静かに新手の二名を観察していた。


 ザイルと呼ばれた青年は、両耳にいくつもの飾りをつけている。

 特に左耳。碧の石を加えた蛇の耳飾りが目立つ。

 同系色の緑のシャツの首元で、だらしなく緩めた黒いネクタイが下がり、腰には斜めにかけた太い革のベルト。

 赤に緑と派手で毒々しい。


「ギリクさんも」

「知らねえ」


 背もたれに肘をかけた巨漢も、あごを上げ、重低音の声で態度を改めることを拒む。


 次はギリクと呼ばれた男。

 こちらは、濃紺をさらに濃くした短髪に、浅黒い肌。

 太い首から続くのは、筋骨隆々とした肩や胸。腕に大きな手と足。

 裏にスパイクが打たれた重そうなブーツを履き、腰の黒いベルトには、ジャラジャラと金属のパーツが連なる装飾が下がっていた。

 太い指には、それに見合った指輪がはまっている。


「エルディング様は、お客様ですよ?」

「だからなんだよ。俺が貴族嫌いなの、知ってんだろ?」

 ザイルは目元を歪ませる。

「知ってますけど」とカミュは困った顔をする。


 ギリクは、ダーイングにガンを飛ばしていた。

 腕を組み、受けて立つ姿勢をとれば、「へえ、やるかよ?」と、長椅子をぎしり、と軋ませてギリクが立ち上がった。

 ニ〇〇センチ近い。

 巨漢が肩をいからせて歩いてくる。

 ダーイングは静かに全身に力を込めた。手を閉じては開く。


「やめろ」

「止めんなよ、じいさん先生」

 ザイルが不満をこぼす。


「ギリク」

「ちっ。スプルスのじいさまに感謝しな」

 巨漢は舌打ちして下がった。

 元いた席にどかり、と座って足を組む。

 重みでまた長椅子が軋んだ。


 はああ、とカミュが息を吐き出す。

 ダーイングも力を抜いて、手を開き、だらりと下げる。


「相手をしてやってもよかったのだが?」

「黙れ。さもなくば追い出す」

 スプルスは静かに断じた。


「カミュ」

「なんですか、師匠せんせい

「座りなさい」

「……はい」

 カミュは、スプルスと同じ長椅子の端に座った。

「おまえも座れ」とうながされ、ダーイングは向かいの長椅子を選んだ。


 疎ましげなスプルス。

 険のある目のザイルとギリク。

 そして、つまらなそうなダーイング。


「紹介してやれ」

「わかりました。エルディング様、ご紹介します。こちらの赤髪の先輩が仕入担当の『ザイル・ロッゾ』さん。隣が用心棒の『ギリク』さん。『石の家』の従業員です」


 カミュは居心地悪くソファに座りながら、二人を紹介した。

 二人から挨拶などはない。

 沈黙。




 ◆◆




 ──空気が重い!! カミュは助けを求めた。

 だが、師匠にも先輩たちにも、お客様にも無理な頼みだった。

 誰か、何か言ってください!!


 そこへ。

 扉が開く音と共に「お待たせしました」と救いの声がした。


「お待ちしてました! 『男爵』!!」

 カミュは、思わず大きな声を出してしまい、すぐに口をつぐむ。


「これでも急いだんですが、お待たせしてしまい誠に申し訳ありません。エルディング大公。それに皆さんも」

「おまえは、この店の何だ」

「私は『石の家』のオーナー。『エルクリッド・ユス・アルスフォン』でございます」

 エルクリッドは、にこやかな笑みを浮かべる。


「アルスフォン男爵家の長男で、『男爵』です」と、付け加えて。

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