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我が為ノ夢物語  作者: 好き書き帳
TRY ANGLE
13/76

『もはや遠い彼方の地』

「ごちそうさまでした」

 ライアは、おいしいお肉とパンと野菜に感謝を込めて、手を合わせる。

「お嬢様、唇にソースがついております」

 ちろり、と舌を出して唇を舐めると串焼き屋の秘伝の味がした。

「はしたのうございます」

 ウィスタードは、ライアをたしなめた。


「お客様はいかがでしたか?」

 空になった皿を見て、ライアはにこやかに問いかけた。しかしダーイングはそれには答えない。


「食事などどうでもいい。それよりも『これ』だ」

 右手を掲げてひび割れを見せる。


「これは何だ?」

「それは『ひび割れ』です」

「見たらわかる」

「おまえはなぜこれが視える」

「それは、私が……」

「待て。ライア」

 スプルスが言葉を遮り、ダーイングを睨み据えていた。


「いい加減、帰ったらどうだ」

「いい加減、やかましいな。黙らせてやろうか」


 先ほどからずっとこれだ。いい加減に飽きた、とダーイングが苛立ち混じりの視線を向ける。

 相対するように紫の瞳がうとましそうに輝き、色味を増した。

 ウィスタードも警戒している。


「先生。私がご招待したんですから、説明させてください」

「……手短にな」

 しぶしぶとスプルスが折れた。

 ライアはうなずくと、居住まいを正し、胸に右手を添える。


「私はこの『石の家』の職人──『輝石師きせきし』です」

 胸を張って、そう打ち明ける。

 ……が、やはり。

 それが何なのか知らないダーイングは、わずかに首を傾げていた。


「『()()()()()()』の言葉ですから。わからなくて当然ですよ」

 

『シャングリラ』。

 これも、自分は知り得ていてるが、ダーイングにはわからない言葉で。

 やはり。

 ダーイングは、眉をひそめていて、ライアはにっこりと微笑んだ。


「もう、とおい。ずぅっと遠い場所のことですよ」

 その言葉に。

 

 スプルスの瞳は哀愁の深い紫をにじませた。

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