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我が為ノ夢物語  作者: 好き書き帳
TRY ANGLE
11/76

『石の家』

 ライアは忘れてはいけないと、男たちが道端みちばたに置いて行った紙袋を拾った。

 中を確かめなくても触れただけでわかる。

「あうう、お肉が冷めてしまいました」

 がくりと、うなだれる。

 お肉は温かいうちに食べるのがおいしいのに。

 熱を失った紙袋はどこか物悲しい。


「おい」

「お待たせしてすいません。ではいきましょう」

 すっかり冷めた紙袋を抱いてライアは早足で歩き出した。

 ダーイングもまた歩き出す。

 しかし、男の身長はライアの頭ふたつ程高い。

 歩幅も違うため、普通に歩くだけですぐにライアを追い越してしまう。


 ライアは気をつかって普段より一割ましで歩調を早めていたが、その差は大きかった。

「大公様は背が高いから、足も速いですね」

「おまえは遅いな」

「失礼を。エルディング大公」

「ダーイングでかまわん」

「では、私もライアでお願いします」


 歩調の合わない二人はそのまま、『石の家』へ向かった。


 ◆◆


 裏路地を抜けて、しばらく歩いた後。

 ライアは立ち止まる。

 幸いなのか、他に通りをゆく人の姿はなかった。


「着いたか」

「はい。あちらが私の家でお店。『石の家』です」


 ダーイングに指し示すのは、どっしりとした大岩を思わせる荒削りの石材で組まれた建造物だ。

 両開きの大きな正面扉。磨かれたドアノブから扉全体に、華美にならない調和の取れた上品な装飾が施されている。


 しかし、店といったが店名を示す看板らしきものはない。


「寂れた場所にあるのだな」

「それでも、なかなか繁盛していますよ?」

「何を扱っている」

「もちろん『石』です」

 ああでも、とライアは大事なことを付け加えた。

「魔石はお受けしていません」


 魔石を取り扱っていないことに、ダーイングはやはり疑問を持った。


「なぜ受けない」

「それは、私の魔力値が……」

 ライアが答えようとした時。

 

 バタン、と扉が開く音がして、白髪の男性が顔を出した。


「ただいま帰りました、先生。こちらは」

「その男はなんだ」


 スプルスは、ダーイングを睨みつけている。

 今にも、片手で掴んで投げそうな目つきだった。


「ええと、大公様です」

「……大公だと?」

 

 スプルスの眉間のシワが深くなる。

 ダーイングを、目をさらに細めてより強く睨んでいる。


「『エルディング』のか?」

「そうだ、それがなんだ?」

「消え失せろ」


 スプルスの言葉には、拒絶と不機嫌が十対十で配分されていた。

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