表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追い駆けて転生 出逢いとDIY  作者: 樹カズマ
第一章 (仮)平穏と始まり
3/21

ある王城の謁見の日

 王城。


 白や淡いオレンジ色を基調として、柱や壁面の至るところに厳かな装飾が施されていて少し触ることすら躊躇われる。


 彫刻などの美術品もお決まりのように幾つも飾られている。お抱えの絵師なのかと思い一つの作品のプレートに目をやると王族らしき名前が。芸術を嗜む方もいらっしゃるわけなのだな。


 床はかなり磨き込まれ、白と濃い茶色の格子柄だが我々の姿がうっすら映りこむほどである。


 一定間隔で灯りが設置されているが松明の類いばかりでなく魔道具らしき発光体も使われている。高いんだろうな。

 また石造りのため寒々しく思えるのだが実際は非常に快適な温度で保たれている。これもきっと高価な魔道具が…。


 …と、ざっくり城内の様子を解説してみたが、俺・ノアの表現力はこんな程度なのでご容赦頂きたい。


 さて、その王城の広く長い廊下を我々は歩いている。

 俺とアンドレスが並んで、その前をアメリアとカミーユ。

 我々の前後を、城門の前で仰々しく我々を待ち構えていた騎士が計四人。前を行くのは第一騎士団の副団長だと自己紹介していたが少しチャラいかも。後から来るのはその部下で真面目そうな面々が三人。全員が銀色の甲冑と王国の紋章が刺繍されたマントを身に付け腰には使い込まれたと思しき剣が入った鞘を提げている。

 我々が城内で問題を起こすようなら彼らが一人ずつ相対するということだな。起こさないから安心してくれ。


 中庭の脇の廊下を歩いている。

 ここは初めて立ち入る場所だ。会議室は謁見の間から離れているのか。

 その中庭、中庭といっても庶民の家を5〜6軒は建てられる広さだが、花壇には色とりどりの花が咲いている。庭師らしき人を5人ほど見かけたが他にも大勢いるだろう。城の外には更に城を建てられそうな広さの庭があるのだから。

 アメリアとカミーユが歩を止めて見入ろうとしたが先導の副団長に促されてまた歩き出した。そうだよね、謁見が控えてるのだから。


 廊下を曲がって、濃紺の絨毯が敷かれた上を進みかけたところでまだ歩くのかと思いきや、重厚な扉の前で副団長が歩を止めてこちらに振り返った。どうやら着いたらしい。


「こちらでございます」


 少しチャラく見えるが物腰は副団長のそれと言える。チャラいというのは俺の主観が入ってるので、まぁ気にしないでおいて欲しい。


「武器の類いはこちらでお預かりしたいのですが、宜しいでしょうか」


 アメリアが背中に担いだ双剣を降ろして騎士の一人に手渡し、俺も腰の短剣を違う騎士に手渡した。弓矢は自宅に置いてきた。

 カミーユの杖は背丈の半分もなく軽量のため危険がないと判断されたようで携行を許された。

 アンドレスはいつものデカい大剣なぞ担いでいたら物々しいため最初から丸腰で来ていると話して受け入れられた。いや、彼はアイテムボックスの中に大剣だけじゃなくて斧やら槌やら危険なもの満載だぞ。言わないけど。

 これも言わないけど我々は装備がなくとも並の騎士なら相手になる者は滅多にいないと思うが。


 やがて扉が開けられ室内に通された。だがここは会議室というほど広くないため前室か何かのようだ。騎士たちとは別に男女の士官が一人ずつ控えていた。


「先ほどお預かりした武器はこちらの部屋で丁重に管理させて頂きます。あと恐縮ですが念のためボディチェックをお許し下さい」


「わかりました」


 男女の士官は共に姿勢良くお辞儀をした後、手慣れた様子で両手を使って俺達の身体の上から下までチェックを始め、やがて問題ありませんと告げられて完了した。


「それでは皆さま、会議室へ入室をお願い致します」


 前室の入口の対面にある扉を開けられ今度こそ会議室に通された。

 会議室?舞踏会でも開けるのではないかという広さがあって絵画もそこかしこに飾られている。そのうち一つのプレートには先ほど見かけたのと同一人物らしき王族の名前がある。

 扉側の、部屋の半分近くがそのような空間で、壁際では飲み物や軽食がワゴンに並べられて給仕係らしい男女が数名控えていた。またも我々に向いて彼らがお辞儀をするのを見て、何ともいえない居心地の悪さに未だ慣れていない自分を実感し、視線が泳いでしまった。


 四人はやや緊張の面持ちで、いやアンドレスは冷静なようなので三人がそんな状況だったが、ほどなく後から入室した副団長に促され、彼の後について部屋の奥へ歩を進めた。

 その先には黒い光沢のある石板製のテーブルが、大人三人分の背丈分はあろう長さがあるが、長細い「ロ」の字状に十数脚並べられている。



「よく来てくれた」


 威厳のある声が脳髄まで響くようだった。

 王様だ。

 入室した時点でその方が既に待っていたらしい雰囲気を感じとって汗が噴き出そうだったが、奥中央の席に如何にも高貴な佇まいの初老手前らしき男性が静かに腰掛けており、彼から発せられたその声を聞いて更に背筋が伸びる思いだった。

 他の席にも重要な役職に就いているであろう重鎮らしきやはり高貴な人物が何人か腰掛けていた。


(他の方はともかく、なぜ王様が既に待っておられる?我々が時間を間違えて遅刻したのか?)


 そんな考えが頭をよぎる。いや、王城に着いた時点で騎士たちからそのようなことは聞かされていないから時間は合っていた筈だ。

 しかし背中は汗でビッショリだ。


 先を歩いていた副団長がテーブルのやや手前で歩を止めて王様に向かって敬礼を行い、改めて我々の到着を同席者に報告した。

 彼が王から「ご苦労だった」と労いの言葉をかけられた後、王の横の席に着いていた強面長身でがっしりしている武官から何か指示を受けて、少し離れた位置で待機したようだ。

 それと殆ど同時に反対側の隣の席に着いていた頭の切れそうな細身の文官から、我々に対して席に着くよう促された。

 このお二人とも王様の最側近なのだろうか。王様が若いときの教育係も務めていたのかもしれない。


 部屋に待機していた給仕らしき方たちがそれぞれ席を引いてくれ、着席するやいなや、アメリアが切り出した。


「王様!私たち時間を間違えていましたか?」


「ちょ、姉さん、ご挨拶もなしにいきなり…王様、ご無礼をお許し下さい」


 姉妹のやりとりに王は少しキョトンとしたが、代わりに答えようとした文官を軽く制して、王が答えた。


「我々を待たせたのかもと心配したのなら、問題ないぞ」


「私どもが時間を間違えて、王様や皆様をお待たせしてしまったのではないかと、私も含めて恐らく全員が同じことを考えたのですが?」


 アメリアの切りこみ隊長っぷりはいつものこととして、姉をフォローしたカミーユも同じだったのか。しかしアンドレスはどこ吹く風のような気が。


「いやいや、何かと問題が立て込んでいてな、会議の時間中に来てもらうしか都合がつかなかったのだよ」


 引き続き答えて下さった王様だが、問題が立て込んでいるなんて言って良かったのかな、ほら、文官さんが注意しているっぽいし。あ、ちょっと王様がバツの悪い顔をした。


「隠し立てするようなことではなかろう、彼女たちの行く末にも影響があるやも知れないのだから、最初から会議に出席していて欲しかったくらいだ」


 え?行く末って何?あと会議に出るのは嫌だなあ。

 王様、今度は武官さんから何か言われてるし。


 やがて、我々も到着したばかりで疲れているだろうという話にすり替わり、王様たちの休憩も兼ねて飲み物と菓子が振る舞われることになった。

 これにはアメリアとカミーユの姉妹が大喜び。


 しばしティータイムを過ごした後で、我々が呼び出された本題について話し合うことになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ