ある王城の会議の席3
本当にまったく、何度来ても落ち着かない。
それでも慣れたと言えば慣れたのだが。
いや、そんな慣れるほど何度も来てはいないと思うが。
いま俺ことノアは、またまた王城の会議室にいる。
もちろんパーティメンバーも全員一緒だ。
右側前方、会議室の上座に相当する場所に配置されたテーブル。
その中央の席にはエストノール王。
向かって右側にヨハンソン宰相、反対側にフリーデン騎士団長。
ついさっきまで別の会議をされていたようで、その纏めに手間取っている模様。
ご多忙なのでしょうけど、そんな姿を我々に見せてしまって宜しいのでしょうか。
まぁ我々は大人しく静かに待っている立場なんですけど。
我々の正面側のテーブルには高官達が6人。
彼らも基本的に静かにすわって待機しているが2人ほど小声で何か話し合っている。
彼らも先程まで王様たちとアレコレ話し合っていたが我々が到着したので一先ず中断ということらしい。
王様たちは中断しきれていないが。
あとこちらのテーブルには、前からアメリア、カミーユ、俺、アンドレスだ。
座り順は前回から指定されるようになった。
と言っても、パーティリーダーで勇者を襲位予定のアメリア、聖女を襲位予定のカミーユを前に据えて、俺とアンドレスは適当じゃないかな。
アンドレスはデカいから後ろという感じかも知れない。
さて。
王様たちが落ち着いたご様子なので、そろそろ会議が始まりそうだ。
あ、ヨハンソン宰相が立ち上がった。
「アメリア殿たち、お忙しいところ足を運んで頂き有難う御座います。
他の皆さまも引き続きご都合つけて頂き有難う御座います。
当会議の趣旨は予めご案内済みですので、すぐ本題に入らせて頂きます。
前回、王様から提示のあった勇者および聖女の襲位と騎士団長付き特別指南役について、本日お返事を頂けると伺っております。
アメリア殿と皆さま、お願い致します」
時間がないのかスピード進行だね。
まぁ返事の趣旨は固まっている。
先ほど、今回も会議室まで城内を先導してくれたアクセル副団長から「遣いの兵士から聞いてはいますが」と確認されていたので、我々の意思は彼の直属上司フリーデン騎士団長を通じて既に王様たちに伝わっているはず。
なので、これは公式の発言を促されているわけである。
アメリアが横に控えている俺達の顔を見渡したうえで立ち上がって王様たちの席側へ向き直り、右手を胸に当てて一礼をした。
このあたりの彼女の所作が実に様になってきたと思う。
「王様。
勇者と聖女の襲位、そして二名の騎士団長付き特別指南役につきまして、私アメリアとパーティ一同、謹んでお受け致します」
高官達がおおーっと拍手をするのを満足気に見渡した王様が、彼らを制止して話しだした。
「ありがとう、アメリア殿たち。
本件について希望があれば可能な限り取り計らうつもりなので言って欲しい」
王様が話し終えた後、宰相から促されてアメリアが着席したところへ見計らって、出席者各自の手元に数枚の資料が配布された。
「勇者、聖女、騎士団長付き特別指南役の概要」という表題で、それぞれの役割や権限、報酬に至るまで記されている。
前回の会議終了後に王立図書館で調べた内容とほぼ同じだ。
「ありがとうございます、王様。
実は既に我々もこの件について話し合っておりまして、幾つかご相談したいことを申し上げます」
「何なりと言ってくれたまえ」
予め我々が話し合っていたことを、アメリアとカミーユから説明を始めた。
一つ目、襲位後の自分たちの立ち位置について。
指示命令を出す出される上下関係ではなく、国と対等に相互協調する関係性でありたい。
これは王城で徴兵の件で話した通り。
権限についても本音では不要だが、これからの共闘関係を維持するために必要なのであればその限りではない。
「それはさほど問題ない。
多少の調整は要るがな。
よいな宰相?」
「はい、王様」
「ありがとうございます」
二つ目、支給されるものについて。
一等地に用意されるという邸宅、いや豪邸は不要。
国や教会が所有する同物件の譲渡は勿論のこと執事やメイドの派遣も不要。
専用の馬車や御者も不要。
王族でもない我々が、国民の血税で過分な衣食住を充てがわれるのは全力で遠慮したい。
なお俺ノアとアンドレスの2人はその対象ではない…筈だったが資料をよく読むと勇者と聖女と活動を共にする特別指南役も対象に含むとある…マジか。
「よく調べておいでですね。
しかしこれは勇者殿たちを、いわば国賓としてサポートするために必要なものですので受け取って頂きたい。
皆さん別々のお住まいだと警護にも支障がありますし、共同であっても部屋数が人数分しかない規模の住居ですと、特に聖女殿についてになりますが、教会関係者や全世界の信徒から抗議を受けてしまいます」
「私たちの身の安全を案じて頂いて有難うございます。
しかしこのような規模の大きな…庭園まであるような豪勢なお屋敷では逆に気が休まりませんので、そういった物件を扱う不動産業者や人材派遣業者を早急にあたることに致します。
あっ、教皇様には私からお願いしてみます。
枢機卿と同等の権限があるのなら話くらいは出来ます…よね?」
「うーむ」
王様が唸ってしまった。
王様を困らせようとしたわけじゃないのですが、ここは我々も引けないのです。
「少し宜しいか?」
フリーデン騎士団長が挙手して発言を求めてきた。
唸った王様と何やら相談し始めていたヨハンソン宰相が彼に発言を促した。
「嬢ちゃん達のパーティは、依頼で得た報酬はどのように管理してるんだ?」
その問いにはアンドレスが挙手して応えた。
「俺が一括管理して、給料制にしています。
生活費はそれぞれで、パーティ活動で使うものは共同資金から使っています。
もちろんリーダー決済のうえで」
そう。
アンドレスは装備だけじゃなくて金庫番も担当してくれているのだ。
もっとも、実際のお金は銀行に預けているのだが。
「報酬の分配、つまり給料の額面で揉めること無く上手くやっていると考えていいか?」
「…」
露骨に怪訝そうな顔をしたアンドレス。
「あぁ、申し訳ない。
そんなことをなぜ訊くんだと思うよな」
質問の意図について説明を始めた騎士団長によると。
派遣を考えていた執事とメイドは騎士団のOBとOGで構成しているのだそうだ。
彼らなら荒事への対処は勿論のこと出自や身元がはっきりしている。
なおOBやOGとはいえ執事以外はさほど年齢はいっていないそうだ。
我々で人材を雇用をするのであれば彼らと契約することを検討して貰いたいという趣旨だった。
なるほど。
でもなー、元騎士団かー。
「念のため申し上げますが、我々は貴方たちを国の監視下に置こうと考えている訳ではないですよ」
宰相の補足発言にドキッとした。
え?俺いま心の声が漏れ出ていましたか?
横目でキョロキョロしたがそういうわけではなかったらしい。
よかった。
宰相が続けて「ご提案なのですが」と発言した。
どうやらこれについて王様と相談していたらしい。
宰相曰く。
我々からの1つ目の申し出に則って、協調関係に関わる契約を締結する。
いまは仮にパートナー契約と呼称する。
勇者のパートナー契約については、細かい条件や報酬について後日詰める。
聖女についてはこれから教会に協議申し入れを行う。
騎士団長付き特別指南役は国の労役にあたるため正規の給金が支払われる。
これらの収入をパーティの共同資金として雇用と住居に充当する。
雇用は騎士団長の提案のとおり。
住居は優良な民間の不動産業者を紹介するからそれ相応の施設を備えた物件を買って欲しい。
うんうんと騎士団長も頷いている。
彼もそういうことが言いたかったらしい。
宰相が続ける。
「先ほど騎士団長からも同様の質問がありましたが、有り体に申しますと、この提案をご採用頂いた場合、貴女方パーティの家計管理方法によっては不公平感を生むことにならないかと危惧した次第です」
パーティとして依頼を達成して得た報酬以外に個々の契約でも収入が出来るから管理を分けたほうがいいのではということを仰っている。
個々で独立採算にしているパーティのほうがむしろ多いらしいからな。
「まぁ、皆さんなら大丈夫そうですね。
給料制ということは個々の業績も考慮していらっしゃるのでしょう」
アンドレスはもちろん我々も頷き、その点については問題ない旨は宰相殿たちにご理解頂けたようだ。
ちなみに俺ノアが魔法陣開発特別チームに従事していたときの報酬は、5割をパーティ口座に入れて残り5割を俺の給料に加算して貰っていた。
このときも皆んなから「全額ノアでいいのに」と言われたが「パーティ活動を制限させてしまうから」という理由で納得して貰った形だ。
メンバー皆んなが概ね同じような考え方を持ってくれていると思う。
かくして、国から豪邸やら何やらを充てがわれることは回避できた。
そのぶん報酬や給金に上乗せされそうだが…
きっとアンドレスが同じことを考えて遠い目をしている。
「最後に、三つ目ですが」
二つ目の話が長くなってしまったが、カミーユが三つ目の希望について説明を始めた。
三つ目、公表について。
国や各種行政機関および教会の上層部に限定し、一般国民には伏せて欲しい。
大々的に公表されると、衆人環視に晒され、これまでのように自由に外を出歩けなくなって、付きまとってくる輩が現れる可能性も考えられる。
「そういうことから守るためにも生活環境を提供させて頂くつもりだったのですが、お考え直しをなさいますか?」
すかさず宰相の言葉。
そうですよね、そう言いますよね。
「国民の心の支え、兵士の士気の高揚。
大々的に公表することで多くの者が希望を見出せるんだがな」
続けて騎士団長の言葉。
そうですよね、そう言いますよね。
「まぁ、諸君の気持ちも理解している。
今までの生活を変えたくないのであろう?」
そこへ王様の言葉。
「はい、王様!」
アメリアが満面の笑みで即答する。
苦笑交じりの騎士団長殿と困った表情の宰相殿が非常に対照的だ。
王様が交互に二人へ耳打ちする。
「分かった、アメリア殿。
一般公表は避けて限定的に知らせるものとし、箝口令を敷くこととしよう」
「王様、ありがとうございます」
「但し、貴女方も王城に出入りすることが増えているわけですから、いずれは、姿を見かけた一般兵や国民から噂が立つことが考えられますので、そこはご容赦ください」
「人の口に戸は立てられないからな」
「宰相様、騎士団長様、解りました」
やれやれ、概ね我々の希望は叶えて頂けそうだ。
皆んな安堵の表情をしている。
これから宰相様達は色々と調整や根回しが必要なんだろうけどそこは気にしないでお任せしておこう。
その宰相様は我々の向かいの席の一つ空いた席に座って高官達と何やら話しているので、その根回しが既に今始まっているのかも知れない。
なお前回から一括りに「高官達」と言っていたが、聞こえてくる会話から彼らは大臣や副大臣であることが判った。
まぁ王様との会議に出席しているほどなのだから当然と言えば当然か。
ここまでその他大勢的な描写をしてしまって申し訳ないです。
ちなみにこのとき初めて、騎士団長様が実は軍務大臣であることを知った。
大臣ってずっと執務室にいるような人物と思っていたのだが、騎士団長のような如何にも武人という方が執務室にじっとしていられるのだろうか…なんて失礼な。
なお軍務大臣は王国騎士団と近衛師団を統括していて、大臣が騎士団を、副大臣が近衛師団の団長を兼任しているようだ。
あとここには財務大臣、外務大臣、内務大臣が出席していた。
ええと、6人いるので、1人は欠席しているようだな。
あと今更だが…
それほど高位の方々と、王様との席の距離が我々と変わらないのは、大丈夫なのだろうか。
『勇者は国政において大臣と同等の権限を有する』とは言えど、彼らにすれば我々のような者がそのように扱われることは面白くないのではないだろうか。
彼らとも親交をもつよう考えたほうがいいかも知れない。
後で皆んなの話も聞いて宰相様か騎士団長様と相談してみよう。
この後すこし休憩ということでお茶菓子が振る舞われた。
王城で出されるお菓子である。
アメリアがキャアと騒ぎ出してカミーユがそれを諌めたのは言うまでもない。
休憩と言いながら会議が完全に中断したわけでなく宰相様たちは引き続き話し合っている。
他にも文官らしき方が何人か寄り合って手元の紙に慌ただしくカリカリとペンを走らせている。
「では会議の纏めを行います」
出席者全員が元いた席に着いた後、宰相様が話しだした。
「先ず会議開始と同時にご宣言を頂戴した件を繰り返します。
アメリア殿、勇者ご襲位。
カミーユ殿、聖女ご襲位。
ノア殿とアンドレス殿、王国騎士団長付き特別指南役ご就任。
改めまして宜しくお願い致します」
続けて国と勇者とのパートナー契約の概要が話された。
・相互協調を基幹とする
・勇者は国の指揮下に入らず、原則これまで同様に任意で活動できる
・同活動において必要な人材は勇者に一任する
・共闘作戦発動時においては、勇者と軍務大臣が同列にてこれを管理運営する
・勇者は、同作戦およびこれに付随した活動に必要な物資や資金を国に申請できるものとし、国は公正な審査のうえ支給する
・報酬も含めた細則はこれから纏めて後日に契約を締結する
「私共から住居と使用人をご用意することは断られてしまいましたので、パートナー契約の報酬の中で上乗せさせて頂きます。
金銭でしたら幾らあっても問題ないはずですからね」
「ありがとうございます」
アメリアが少し複雑な顔をしながら応えたが、それなりの住居を買うのであれば国の援助は非常に助かる。
我々の蓄えだと何十回かの分割になってしまうだろうし。
さらに使用人の雇用もあるし。
さらに宰相が続ける。
「聖女と特別指南役は後ほど。
先に住居と使用人についてですが…」
・推薦する民間不動産業者の紹介
・住居に最低限必要な設備、間取り、構造等
・推薦する執事およびメイドの略歴
・これらの紹介状と推薦書は後日に提出
・これらの契約に係る費用の試算と、同費用の最大全額を国が間接的に負担すること
・これらの契約主体は我々になること
「住居費の試算に少々驚かれたようですが、警備面や必要設備、使用人たちの人数を考慮すればこんなものでしょう」
「…ありがとうございます」
アメリアが更に複雑な顔をしながら応えたがそれなり以上の住居を買うのであれば国の援助が無いと無理だ。
また使用人も全員が戦闘要員兼任のため一般的な使用人の給料ではなかった。
うん、国の援助は助かる。
結局は分不相応な屋敷…邸宅に住むことになるかも知れないが、自分たちで決めることに意義がある。
「次に、聖女様につきましては教会へ協議を申し入れてからになりますが、今の教皇様は柔軟性があって人望もある方ですので問題ないかと存じます。
カミーユ殿、これにつきましても後日ご報告させて頂きます」
「はい、宜しくお願い致します」
「次にノア様とアンドレス様」
「はい」
王国騎士団長付き特別指南役について。
・月におおよそ3日、原則任意で修練場に出向いて指導する
・月ごとに、王国騎士団、同傘下の魔導師団、王直属の近衛師団を対象とする
・非常勤ながら正規の雇用契約を締結する
「一応は軍規もございますが、お二方は騎士団長付きですので組織に縛られないような配慮をさせて頂きます。
何かご要望があれば随時ご相談ください。
騎士団長、そういう事で宜しいですね」
「ああ、それで問題ない。
ノア殿とアンドレス殿。
俺か、あるいは、アクセル副団長に言ってくれれば対応するからな。
貴方方には相応の裁量権が与えられるから、よほどのことでなければ大概の話は通ると思ってくれていい」
「分かりました、ありがとうございます」
「さて最後に、勇者と聖女の公表範囲についてですが」
ちょっと失礼、とコップの水を飲む宰相様を見て我々も一口。
宰相様は勿論だが我々も慣れない場所で王様たちを前に喉が渇く。
国内
・エストノール王
・ヨハンソン宰相
・大臣および副大臣(フリーデン騎士団長は軍務大臣)
・アクセル副騎士団長
「国内では、以上を公表対象と致します。
あとは、今後の活動において遠征先の領地で何かしら便宜を図る必要が生じた場合は、その地の領主にも公表を検討致します。
他国においては同盟国には近日のうちに親書を届ける段取りに致します。
なお同盟国内においても我が国と同様に取り扱って貰える予定です。
このような感じで宜しいでしょうか」
「はい、それで構いません」
「ありがとうございます。
纏めは以上です」
その後は大臣と宰相の間で二点ほど実務的な質疑応答があった程度。
きっと会議続きのためだろう、王様の表情も疲労の色が隠せないようなので早く会議を終わって休んで頂きたいところだ。
「そうだ、嬢ちゃん」
騎士団長…いや軍務大臣と呼ぶべきか。
彼がいつもの調子でアメリアに話し掛けた。
「何ですか、師匠殿」
「少し前にだな、アクセルの奴が嬢ちゃんたちが四人揃って鍛冶工房に入って行くのを見たってんでな。
上位の冒険者なんだから自分たちの装備くらい作らせるだろうって言ってやったんだが、気になることを奴が言ったんだ」
「気になること?」
「実は奴も、例の覚醒魔法陣の被験者なんだが、魔力が上がってだな」
「あぁー」
「ノア殿、気付いたか。
貴方が抱えていた包みから非常に高い魔力を感じたと言うのでな、かなりの素材を持ち込んだのではないかって、少し興奮してやがった。
俺も気になってしまってな」
「コホン」
「あぁ、すまない宰相」
「もう会議は終わりますので、そのあたりのお話は後ほどお願い致します」
「承知した。
王様、お疲れのところ申し訳ありません」
「構わんよ。
但し、私も気になるので後で報告するように」
「はい、承知致しました」
え?
いや、話しても差し支えないけど、勝手に決めないでくれる?
でも王様も気になるものなのね。
その後すぐに会議は終了。
かなりお疲れの王様が退室する際に挨拶をし、続けて宰相や大臣たちの退室も見届け、騎士団長と共に隣の小さめの会議室に席を移した。
更に騎士団長に呼ばれたアクセル副団長も参加。
どうやら彼は着席する前に給仕に声を掛けたのか、お茶と軽食まで用意されてしまった。
これでは暫く帰れそうにない。
「で、ノア殿、あれは何だったのでしょう?」
騎士団長ではなく、アクセル副団長が口火を切った。
そんなに気になっていたんだ。
「ノア殿、言えないのであれば、そう言ってくれればいい」
「とか言ってるけど、師匠殿。
さっき王様に報告するとか約束してたじゃないですか、勝手に」
「すまん、嬢ちゃん」
「もう… どうかな、皆んな」
「俺は差支えないと思うけど、なぁアンドレス」
「あの素材に詳しいのはお前だ。
ノアと、もちろんリーダーのアメリアさえ良ければそれでいい」
「かなり希少なものなのですか?」
「まぁ希少ですが、別に遺物級とか神話級とかではないですよ。
何か、どんどんハードルが上がって期待させちゃうので話しましょうか」
俺がパープルアイアンウッドの組成やその入手経緯について、その後でアメリアが双剣のバランスに苦慮し始めた話をした。
「親父さん、自分の剣を大事に使って貰って、きっと喜んでいるな」
「そうだといいんですけど」
「それで、いつ出来るんですか?」
「おい副団長。
今いい話をしていたんだぞ?」
「あ、団長スミマセン、つい」
「あはは、いいですよ。
アクセルさん、まだ判らないけど、たぶん何ヶ月か先じゃないかな。
ねぇ、ノア」
「そうだな。
今はまだ、素材のやっつけ方を考えているところだと思いますよ。
あ、そうだ」
「どうされました」
「この件で、サラさん…サラ博士にお願いがあって、彼女に手紙を送ったんですよ。
もう届いたかな」
俺は、パープルアイアンウッドの成形のために魔法陣が必要で、その相談を持ち掛けていることを話した。
一緒に仕事をしたことがあるとは言え、彼女は王城所属の職員である。
先に宰相様あたりに相談しておくことが筋だったかも知れないとも付け加えた。
「特に私的な依頼というわけでもないし、それこそパートナー契約に含まれるものとしても差し支えないだろう」
「騎士団長の仰ると通りかと。
そうだ、この後サラ博士を訪ねては如何ですか」
「え、特に約束を取り付けていないけど失礼にならないでしょうか」
「いいと思いますよ。
無理そうなら適当な人に伝言をお願いしましょう。
私もご一緒させて頂きますよ」
「ありがとうございます。
では是非お願い致します」
「よし、行ってきな。
じゃあ頼んだぞ、アクセル」
「はっ!」
「じゃあね、師匠殿!」
「あぁ、嬢ちゃん」
騎士団長様に挨拶をし、我々はアクセル副団長に連れられて先に退室することにした。




