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追い駆けて転生 出逢いとDIY  作者: 樹カズマ
第一章 (仮)平穏と始まり
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ある冒険者パーティ

前作「夢、異世界、記憶喪失。」は頓挫してしまいました。

欲張ってテーマを複数かかえて、まとまらず、書ききれず、脱せませんでした。

今回は構成し直してイチから再トライです。

日ごろ空想している「魂」や「自然」と、最近はまりかけている「木工DIY」を織り交ぜて書いてみようと考えています。

宜しくお願い致します!

 白銀色の弓。

 それは満月の光を受けて、さながら夜空に浮かぶ月のように輝く、長い円弧形状を成していた。優美な装飾を施されたその胴には古代文字のような紋様が端から端までびっしりと彫られている。


 弓に矢をつがえる。

 左右の両手首から先がぼんやり光り、それに呼応するように弓の紋様も青白く光り始めた。その紋様の光が、握っている手の傍から順番に両端まで伝わって拡がっていき、弦も端から徐々に白い光を蓄えていった。


 さらにやじりも同じように光を放ち始め、やがて光が収まると共に風を纏い始めた。

 狙いは月明りに照らし出された全長3m級の魔獣。弾ける火の粉が混じる赤黒い煙をバックに、漆黒の森林を背景にシルエットがくっきりと浮かんでいる。

 牙と角をもち、太く強靭そうな脚が支える身体は長い毛で覆われた、虎のようなやつだ。


 弓を引き絞り、やじりが一際輝いたその刹那。

 矢を放った。

 直後、鋭い風きり音と共に、真っ直ぐ長く渦巻く風と共に光を残す軌跡が、宙の先に描かれた。


 魔獣がよろめき前のめりにグシャリと地面に倒れるとき、その首に空いた直径10cmくらいの大穴と噴き出している血がシルエットとして浮かび上がった。


「さすがノア!」


 駆け寄ってきた彼女はヒューマンの双剣士、アメリア。

 この凛とした声にいつも勇気を与えられ、誇らしくなれる。

 背に「X」字に下げた二本の鞘に剣を収め終えた彼女とハイタッチを交わした。


「これで最後だな」


 ゆっくり歩み寄ってきた彼はドラゴニュートの大剣使い、アンドレス。

 様々な武器を使いこなすこの歴戦の猛者は思慮深さも兼ね備えていて、パーティーの参謀である。

 彼ともグータッチを交わした。


「お疲れさまでした」


 労ってくれた彼女はアメリアの妹、神官のカミーユ。

 いつも跳ね回っているアメリアと正反対で落ち着いた雰囲気で、教会の次期神官長と名高い。

 彼女ともグータッチ…あ、良かった。おずおず拳を出してくれた。嫌がられているわけではないはず。


「皆もお疲れさま、魔獣を処理しよう」


 俺はエルフの精霊魔術師、名はノア。

 得意なのは精霊を行使した魔術と弓術だけど、そこそこの元素魔法と、そこそこの剣術も組み合わせられる。そこそこ万能ってやつ?所詮そこそこデス。


 少年時代に森深くの村から飛び出して冒険者になり今に至るが、彼ら三人と巡り会えたことは本当に幸運だったと思う。旅を共にするに至るまでの話はいずれ機会があれば。



 四人は魔獣の死体処理に取り掛かった。希少価値のある角と牙を手早く切断。

 6頭分もあると手際が要求されるが全員が非常に手慣れているため20分とかからず処置を済ませることが出来た。


「あとは街に持ち帰って解体業者に任せよう!」


 アメリアの提案に一同賛成した。

 野営で1頭だけ焼いて食べるのならいざ知らず今夜はその予定はなく6頭分もあるのだ。放置するくらいなら火魔法で焼却するがこの魔獣の毛皮や骨、そして肉も需要がある。明日は城に呼ばれており寝坊するわけにいかないため、その判断になったわけだ。


 かくして角と牙を失った魔獣の死体はアンドレスのアイテムボックスに収納された。その名のとおりアイテムを入れるものだが、魔道具師の技術の粋を結集した大発明品である。

 このアイテムボックスの中では状態保全が効くため鮮度は損なわれない。時間が停止しているだろうかと考えられたが発明者にも研究者にも未だ結論は出せていない。

 食物の劣化や金属の腐食は保存条件にも左右されるのでそういった環境が適用されない特殊な空間にあるのではないかと推測されただけで結論には至っていない。

 メカニズムが完全解明されていないのに実用されているなんてものは、たしか麻酔注射もそうだったか?


 それはさておき。


「こんな感じで問題ないですか、ノア?」


「うん、これでいいよ、カミーユ」


 戦闘で損傷した木々には俺とカミーユの二人で回復魔法をかけている。枝葉くらいならいいのだが、幹や根を吹き飛ばしてしまうと放置できない。

 こんなことをやっている冒険者は俺達くらいのものだろう。俺が森を起源とするエルフだからだが、今ではそんな俺の生来の事情を皆が理解してくれている。


「では街に帰るよ、あ、その前に」


「これだな、アメリア」


 アメリアが瞬間移動魔法を使おうとしたとき彼女が何かを思い出し、アンドレスがそれに気付いたようだ。


「そうそう、ありがと!」


 アンドレスが目を細めながら、その手にあるものをアメリアに差し出した。まるで幼い我が子を見る父親のような目で。

 彼はアメリアやカミーユに対して時々こんな目をする。長寿の彼にとっては彼女たちは子供どころか孫に近しい存在かも知れない。


「魔法を一つ封じ込めておくことができる魔道具だったよね、姉さん」


「そうそう!これを持っておけば私でなくても場所をイメージするだけで飛んで行けるからね!」


 そう言いながら、アンドレスの指と同じくらいのサイズがある結晶のような魔道具を一つずつ彼から受け取って、両手で祈るように魔力を籠めていった。

 やがてそれが済むと彼女以外の三人が一つずつ受け取って作業は完了した。


「じゃあ今度こそ帰るよ!」


 そう言ったアメリアが瞬間移動魔法を発動させ、周囲の風景が寒冷地のダイヤモンドダストのようなもやに覆われたかと思ったら、次の瞬間には見慣れた城下街のそばに四人は降り立っていた。


 街明かりの数がやや少ないため家庭によっては就寝する頃合いのようだ。

 街の門番つまり城勤めの門兵に身分証を見せて開門してもらい、顔馴染みなので冗談半分に嫌味っぽく早く帰ってこいと諭されながら4人は街に入った。


「じゃあ皆、今日はこれで解散!明日は大事な日だから今日はすぐ帰って早く寝て、朝はいつものカフェで揃って朝ご飯で宜しくね!」


「そうしよう、では皆、おやすみ」


 アメリアとカミーユの姉妹を二人で見送り、俺とアンドレスもその場を後にし、それぞれの家路についた。

 さて、帰るか。

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