班決め
「それでは、これから校外学習の班決めをしたいと思います。」
「先生、班決めってどうやってするんですか?」
生徒の一人が手をあげて聞いた。
「自由にしていいですよ。一班に五人です。なので合計六班ですね。では、どうぞ」
先生は私たちにしおりを配り、端的に説明をした。
(自由でよかった)
安心していると愛華が私の所まで来てくれた。
「香~、同じ班になれるよ」
愛華がまぶしい笑顔で言った。
「そうだね。一緒に行動しよう。でも後三人誘わないと」
「うーん、誰かいるかな」
愛華はクラスメイトとのほとんどと難なく会話することができる。だから同じ班になってくれてとても心強い。二人で相談していると一人の男子生徒がこちらに向かってきた。
「あのさ、俺一人なんだけど同じ班に入れてくんない?」
そう声をかけてきたのは谷村君だった。
「あれ、翠ってあの子たちと仲いいんじゃなかったっけ?」
愛華が少し先にいるグループを指さしながら言った。
「いや、そうなんだけどさ、ちょうど一人余ったんだよ」
「あ~そういことか。全然いいよ。香、いいでしょ」
「もちろん」
これで私たちの班は三人になった。そしてすぐに谷村君と同じ理由であった京ちゃんも同じ班になった。この時点で残っていた者がクラスに一人いた。周りを見渡している先生と目が合った。先生が私たちの方へ向かってくる。私は先生が言うことがなんとなく想像できた。
「ねえ、あなたたちまだ班のメンバー全員そろってないよね?冬理君を入れてあげてくれないかな?」
先生がそう言うと愛華が少し気まずそうにして答えた。
「え、あ、まあ私は大丈夫ですけど。みんなはいい?」
愛華が私たちにそう聞いた。谷村君も京ちゃんも不服そうな顔はしたがもう余っているのは冬理君くらいしかいないので了解するしかなかった。そういうことで私達の班に冬理虎が加わった。
「じゃあみんな、仲良くしてあげてね」
先生は小学生に言うようなことを言って、その場を離れた。残された私たちはみんなで顔を合わせた。
「ちょっと心配だよね。冬理君っていつも何考えてるかわかんないし」
京ちゃんが私たちに囁いた。みんなもどう対応すればよく分からなさそうで困っていた。
「大丈夫だって。特に何にも考えてないよ、きっと」
私は適当にそう答えた。実際何を考えているのか私にもさっぱりわからないが特にわかりたいとも思わないので別にいいと思う。
「まあ、何とかなるだろ」
谷村君も私と同じで特に深くは考えていないようだ。愛華も京ちゃんも初めは気にしていたが私たちがあまりにも楽観的だったので、大丈夫な気がしてきたと安心した。
一番気が気じゃないのはおそらく冬理君の方だろうなと私は内心面白がっていた。ふと彼の方を見ると、先生が班が決まったことを伝えているところだった。今日も相変わらず俯いていて表情は読み取れないが静かに聞いているようだ。
(上西先生って冬理君と話すときは嬉しそうだな)
恋する少女の目とは程遠いが先生の目を見てそんなふうに思った。