第一話 俺の名前は神宮寺 皇王。
「九州平定大義であった」
今威厳たっぷりに話しかけてきているおっさんは、俺の父だ。名前は、神宮寺 正孝。
あ、ちなみに俺の名前は、神宮寺 皇王な!!
「ひとまずよくやったと褒めておこう」
めちゃくちゃ上から目線で話してくるこのおっさん。もとい俺の父。誰しもが、執務室で普通に喋る俺たちを想像するだろう。だが、その想像は大間違いだ。
「なぁ、まずパンツ履けよ」
そう、このおっさんはパンツを履いてないのだ。そして、顔はぼこぼこ。殴られた跡だ。つまり、こいつは顔がぼこぼこの上、裸で執務室の椅子に座り何事もなかったかのように話しているのだ。
なぜこうなったかどうかは、10分前に遡る。
浮気がバレた父が母様にぼこぼこにされ、身包みを剥ぎ取られた。そして今に至る。ちなみに母様はぼこぼこにして気が済んだのか帰った。
「なぁ、初登場だからって威厳保とうとするなよ。惨めだぜ。ぷぷぷ」
思わず笑いがこぼれてしまう。だって、そうだろう。無理して取り繕おうとしてるのだから。もう滑稽で滑稽で。
「ふん!男は浮気する生き物だ!それを許す度量がなければならない。」
まだ、威厳保とうとしてるよ、、、このおっさん。ちょっと意地悪な質問してみるか。
「それ、母様の前で言えます?」
長い沈黙が流れた。なんか見てられねぇな。意地悪な質問したの俺だけど。
ここで、バラしたほうが面白そうだな。悪魔の閃きだ。
「ちなみに、浮気バラしたの俺」
再び長い沈黙が流れる。
「ハハハハハ」
突然、父が笑い出した。それに釣られ俺も笑う。
「ハハハハハ」
そして、笑いの後、また長い沈黙が流れる。
「よく来たな。皇王よ。さて、本題に入るか」
え、無かったことにしたよ。このおっさん、、、。今までの会話無かったことにしてるよ。もう無理だって。
「今日お前に編入試験を受けてもらおうと思って呼んだのだ。」
あ、ほんとに無かったことにしやがった。
ていうか、編入試験か。確かに、今年で俺は高校生だ。高校の簡単な勉強なんて全て修了している。ていうか、大学の勉強も。今更、高校への編入か、、、。まぁ、神宮寺財閥の跡取りとして高卒認定は必要か。
「どこの高校に編入するんだ?」
「金閣学園だ。」
金閣学園か。金閣学園は、我が神宮寺財閥の傘下の高校だ。
日本の各地から、財閥、会社の社長の子供が集う学園。名実ともに、世界有数の学園だ。
「んで、そこでお前には、庶民としてそこに入学してもらう」
は、、、、?え、、、?なんでだ。いや、そういうことか。このおっさん浮気をバラした俺への仕返しをしようとしている。
「メリットあんのか?」
一応メリットを書いておく。暴論で返されるに決まっているが、一応ね、一応。
「おもりそ、、、じゃなくて、仕返し、、でもなくて、今この学園は身分格差がすごいのだ。この学園は、平等をもっとうにしている。だから、お前には庶民として入学してもらいその格差を無くしてもらいたい。」
うわぁ、すげえ暴論。思ったより暴論。ちゃんとした理由に見えるけどすごい暴論。てか、はじめ面白そうって言いかけてなかった?そんなのそのままの身分でもできるじゃん。てか、そっちの方がやりやすくね。でも確かに、庶民として入学するのは面白そうだ。庶民にいい人材がいれば後々神宮寺財閥への勧誘もできるしな。
「わかった。庶民として入学するよ。従ってやるんだから、偽装とかはそっちでしてくれよ。」
「もちろんだ。」
俺が嫌な顔せず言ったのにも関わらず、やけに素直だ。それにひっかかったが、まぁ特に気にしない。とりあえず、編入の日が楽しみだ。
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編入式、いや金閣学園高等部入学式の日、俺は時間ちょうどに学園に着いた。学園に入るとすぐにバスが登場した。俺は、AからEまであるクラスのうちEクラスに所属することになっているので、Eクラスのバスに乗る。さっきも言ったが、AからEまでクラスがある。そして、基本成績順で分けられている。社長、財閥の子供たちは、中等部からこの学園に通っており、120人いる。1クラス30人なので、AからDクラスに振り分けられる。もちろん、成績順でな!この世界有数の金閣学園に中等部から通っているから、編入生なんかより成績がいいだろうというおかしな理由からそのように振り分けられている。だからEクラスへの差別はすごいらしい。なんじゃそら。あのおっさんとんでもねぇクラスに入れてくれたな。
バスの中に入ると、談笑するクラスの人たちがいた。この学園は、東京ドーム数十個分の広さがあるので学園内では、バスが通っている。
一番後方の席が空いていたのでそこに座る。どうやら俺が最後のようだ。
「こんにちは。一年間よろしくね!」
座ると、隣の美人というより可愛い女の子が喋りかけてきた。てか、結構可愛いな。おい。パーティで芸能人とは、何回も喋ったことがあるが、芸能人レベルじゃないか。庶民でもこんなレベルがいるのか。名前なんて言うのだろう。実はどこかの財閥の娘だったり、、、
「ああ、よろしくな。名前なんて言うんだ?」
「西野 カンナ!カンナって気軽に呼んでね!」
西野財閥なんて聞いたことがない。てかやけに馴れ馴れしいな。財閥とか社長の娘にこんな自己紹介するやついないし。じゃあ庶民なのか。
てか、喋った感じとか雰囲気から思うが男子からの人気もありそうだな。
そんなふうに色々考えていると
「あら?こんな超絶美少女に声からられて下の名前で呼んでいいなんて言われて、かたまっちゃった?」
なーんて言ってきた。
いや、前言撤回。こんなやつがモテたら腹が立つ。俺こう言うタイプ苦手なんだよね。自信過剰っていうかなんて言うか。怒ったら一番怖いタイプだよ。
「てか、あんたの名前はなんて「静かにしたまえ」」
カンナが何か喋りかけようとしたとこで、先生らしき人が入ってきた。みるからに貴族主義って感じだな。この見下すやんな視線。なんかこわーい。
「私は、梅野、梅野 静香だ。三年間このクラスの担任になる。こんな庶民クラスの担任になることは不服であるが、信任なので仕方がないだろう。」
いや、そんな自己紹介するー?もう、もろに見下してる感出してるよ。クラスの皆んなもざわつき始める。三年間苦労するだろうな。嫌だ嫌だ。てか、この人もめっちゃ美人じゃん。まぁ、庶民見下してる感あるし、社長の娘とかかな。
「静かにしなさい。これだから庶民は、、、、まったく。」
いや、その元凶お前じゃーん。ざわつかせたのおまえじゃーん。なに人のせいにしてるのよ。
「これから入学式がある。そこではたくさんの著名人がご出席される。くれぐれも粗相の内容に。」
知ってますけど?それにそそうなんてするわけないじゃん。そんな威厳たっぷりに言われても(笑)。なんがだせーぜ。
「あ、その前に、出席確認だな。呼ばれたものは返事をしろ」
あ、はださい。あ、はださいよ。威厳出しててあ、はださい。威厳台無しだよ。
「それでは呼ばれたものは返事をするように」
そうやって呼ばれたものは一人一人返事をしていく。
「花畑 頭持」
ぷぷぷぷぷー。変な名前だな。なんかお花畑な頭持ってるみたいじゃん!
「花畑いないのか?」
一向に返事がない。あれ、もしかして、、、。おれ?
「はい」
返事をする。俺じゃないかもしれないが、一応。
「貴様は、学園長からマスクをする許可をもらってると聞いている。」
そう、俺は今正体を隠すためにマスクをし、白かった髪を黒に染めている。そして、目がかかるまで髪を伸ばしている。
そこで確信する。俺以外にマスクなんてしてる奴はいない。あの変な名前で、俺は三年間いなければならないのか。そこで思い出す。あの親父の余裕そうな顔を。
なんだこの変な名前は!!!!あのクソ親父!!!!!