春涙 0
親愛なる「あしながおじさん」へ――
拝啓
少しずつ暖かくなってきた今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。
私は院内コンクールに向けて、日々練習を重ねています。
初めてのコンクールですが、サイガ先生がこれまでと変わらないスパルタなおかげで、余計な不安や緊張を感じる暇もないくらいです。
友人たちも励ましてくれるので、彼らの応援に応えるためにも、このまま頑張っていきたいと思います。
他の生徒の皆さんもコンクールに向けて緊張感を高めているようで、もうすぐ迫ってきた春休み、私も負けずコンクール一色の日々になりそうだと思っていたのですが――。
それだけというのももったいないような気がして、学院の紹介で小さな演奏会に参加することにしました。
地方の小さな教会で、子どもたちのために行われる演奏会です。
ブランシュ領へ戻る途中に立ち寄り、一日から二日ほど滞在する予定です。いつものようにローゼと一緒というわけではないのですが、学院長先生も問題ないだろうと仰ってくださいました。
その時、"彼女の容態"についても聞きました。
油断は禁物とはいえ、その時が近付いている、それならばやはり、大げさな警戒はせずに行ってみてもいいかと、少しだけ楽観的になっています。
こうして楽観的になれるのも、おじさんのおかげです。
このわがままも、どうか、許してくださればと、思います。
それでは、近い内に会えるその時を楽しみにしています。
どうかお元気でお過ごしください。
敬具
テア・ベーレンスより――