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夜の灯火  作者: 隠居 彼方
第7楽章
81/135

薔薇 5



――仲間、ね……。

そして、路地裏のいかにもといった風な空き地に、ローゼはいる。

そこに集った男どもはローゼに絡んできた男たちと似たり寄ったりで、ローゼにとって脅威と感じるほどではなかったが、その人数は彼女の想定の二倍だった。

仲間といって、全部で十前後程度であろうと勝手に思っていたのだが、ざっと数えただけでも二十数名はいる。

ケーレの街は首都にあって治安も悪くないと言われるが、この近辺にこういった手合いがこれだけいたのか、とローゼは半ば呆れる思いだった。

ローゼとライナルト二人に恨みを向けるとて、これはやりすぎではないのか。

「なんだ、黙っちまって、さっきまでの威勢のよさはどうした?」

その生まれゆえむさくるしい連中に囲まれることに慣れているローゼの呆れを別のものと勘違いしたらしく、ローゼを連れてきた男の一人がにやにやと言った。

人数を誇るより先に、これだけ集めないと安心できなかったのだろうことを恥ずかしく思ってほしい、とローゼは何を言う気にもなれない。

ただ一つ確認しなくてはなるまい、と集団を睥睨しながらローゼは尋ねる。

「……それで、ここまで来てあげましたけど、私の連れはどこですか?」

「あぁ? なんのことだ?」

下卑た笑いを浮かべながらわざとらしくとぼけてみせる男に、ローゼはカチンときた。

どうやらライナルトは口実に使われただけだったようだとはっきりして、踵を返そうとする。

「……ここにいないのならあなた方に用はありません。失礼します」

「おおっと、俺たちがただで帰すと思ってんのか?」

「私の邪魔をして、ただで済むと思っているのですか?」

行く手を塞がれ、ローゼは低い声を出した。

それに気圧され、目前の男は数歩、後ずさる。

だが、腕は立つようだが子娘相手に、と何とか見栄を張って、嫌な笑いを顔に貼りつけたまま宥めるように手をかざした。

「そんなこわい顔すんなよ。せっかく美人に生まれたんだ、それらしくしてみたらどうだ?」

大きなお世話だった。

「それに、こっちの用もあんたにとって悪い話じゃないかもしれねえぜ?」

何の話だ、とローゼは男の言葉に眉を顰めた。

その時である。

「ローゼ嬢、わざわざ足を運ばせてしまってすまない。そして感謝するよ」

場違いな声が、後ろからした。

知らない声ではなかったが、だからこそローゼは嫌な顔になるのを抑えきれない。

人相が悪く品性はなく知性も欠片ほどしか見当たらない、荒れた雰囲気の男たちの後方から姿を見せたのは、声だけでなくその姿もその中で異質な一人の青年だった。

外見は悪くはない。少しばかり線が細く頼りなげではあるが、女性に好まれそうな甘いマスクに、身につけているものは高価な品だ。

白い歯をきらりと見せつけながら近付いてくる青年を、ローゼはうんざりと見つめる。

彼はローゼと同じ、シューレ音楽学院の新入生だ。そして、先日、しつこく、非常にしつこく、ローゼをパートナーにと誘い、言い寄って、拒絶された男だった。貴族の末息子として生まれ甘やかされてきた坊ちゃんで、自分が断られることなど考えもせず、最初やんわりと断っていたローゼが恥ずかしがっているなどと勘違いして言葉を重ねてきた阿呆だ。

何度断っても聞く耳を持たないので、最終的には手厳しい言葉で振り払うことになった。

もう二度と顔も見たくないと思っていた相手の顔を見せられ、ローゼは嫌悪を隠さず告げる。

「……どうしてあなたがここにいるんです?」

「それはもちろん君をパートナーに迎えるためだよ!」

爽やかな笑顔で言い切られた。

まだ諦めていなかったのか、とローゼは口元を引きつらせる。

「……私は断りましたよね」

「ああ、君はこう言ったんだ。『私より弱い男はごめんです』と――。確かに僕は剣に優れているとは言えない。けれど僕にはこうして戦力を確保するだけの権力と資産がある! これも僕の力だ。僕は君を守ることもできるし、君より強く在ることもできる。だから――」

「黙りなさい、カス」

思わず、ローゼは乱暴に言い捨てた。

この男の、言葉が通じない、独善的なところに、ローゼは虫唾が走るのだ。

「あなたの力? 笑止千万ですね。権力に資産? どちらもただ親にねだったもの、自分で勝ち取ったものでもないでしょう? それをまるで自分自身の努力で勝ち取ったかのように――それで私の隣に立とうなどと、おこがましいにもほどがあります」

ローゼは嘲笑してやった。

彼が誇った力、それは彼自身で手に入れたものではないとローゼは承知している。

そしてそれは、与えてくれる存在が消えればそこまでなのだ。そのことを分からずに胸を張る男の、何と滑稽で愚かで哀れなことか。

ローゼもその力は持ち得ている。だが彼女は弁えていた。彼女が持つ富は領民の苦労の結晶、権力はそれと引き換えに彼らを守るために存し認められたもの。モーリッツが領主としての義務をこなしているからこそ、ローゼはそれらを持つことができるのだ。

だからローゼは彼らを守るために剣をとり、強くあろうとする。

育ててくれたモーリッツの力になりたくて、努力を続けるのだ。

その努力は、例えローゼが貴族という身分を失っても彼女に貢献してくれるだろう。

男のしていることは、そんなローゼにとって腹立たしいことでしかない。

「……ここまで誠意を見せても駄目なのかい」

「誠意の意味を履き違えていらっしゃるようですね。私も勉強が得意というわけではありませんが、その辺りも私より『弱い』男に興味はありません」

「そうか……」

芝居がかった様子で、男は肩を落とした。

「それでは、仕方がないな……」

ようやく諦めてくれるか、とローゼは思ったが、不穏な空気に身体は警戒を示す。

「もっと分かりやすく、僕が君よりも力を持っているということを見せよう。そうすれば君も僕の力が分かる。素晴らしいパートナーだと思えるようになるよ」

「……何を言っているんです?」

澱んだ目で、酔ったように男は言った。

悪寒がして、ローゼはそのまま一発決めてやりたくなったが、さすがにまずいだろうかと抑える。やるにしても手を出されてからでなければ正当防衛は主張できない。

「君の艶やかになびく髪、明るい瞳、凛と立つその姿、僕の隣に立つに相応しいのは君だけなんだ。だから――」

男が合図する。

ローゼは物騒な男たちに取り囲まれた。

ローゼに復讐するだけにしては人数が多すぎると思っていたが、この貴族の坊ちゃんが金を出して集めたからだったようだ。以前にローゼと縁があった連中が混ざっていたのが偶然か否かは分からないが、いずれにせよこの街でメンバーを集めたのなら、その中に混ざってもおかしくはない。

人数を集めればローゼが頷くとでも思ったのだろうか、知らないが浅はかである。

わざわざローゼがひとりで出掛けたのに合わせ、おびき出そうとしたのだろうが、こうして強面の男たちに囲ませて是と言わせることに何の意味があるのか。こんな事態が知れれば退学になっても仕方がない。そこまで考えが及ばなかったのだろうか。

そういう意味での口止めもしようとしているのか――、とローゼは辟易として、男たちの下卑た、いやらしい顔つきを眺めた。

男運が悪いとかそんなレベルではない。

さっさと逃げるが勝ち、と思うが、さすがのローゼも無手でこの人数を相手に楽に逃げられるとは考えられなかった。

「傷つけずに上手くしてくれたまえ」

貴族の青年の言葉を合図に、男たちがローゼの身動きを封じようと手を伸ばしてくる――。

ローゼは舌打ちし、右の拳で近くにあった男の顔面を狙い鼻の骨を砕いてやり、左手でやはり付近の男の目を潰してやったが、その間にも纏わりついてくる腕がある。それらをかわし、また対処しつつも、やはり二十対一という差は大きすぎた。

――せめて武器が、剣さえあれば……!

その思いが届いたかのようなタイミングだった。

ざわり、と男たちのどよめき。

「ローゼ!」

呼ばれると同時に、空から降ってくるものがある。

剣だ。

ローゼはそれを掴み取った。

「遅れてすまない!」

男たちの壁を隔て、向こうに見えたのはライナルトの水浅葱色の髪。

ライナルトはローゼに群がる男たちを殴り蹴り、その合間を縫いローゼの元へ辿り着く。

「ライナルト……!」

信じられない思いで、ローゼは手の中の剣と、駆け付けて来てくれた友人を見つめた。

口の中でその名を呟くと、答えるようにライナルトが気遣いの言葉を口にする。

「無事か」

「……ええ、おかげさまで」

ライナルトは返したローゼの無事を、聴覚だけでなく視覚でも確かめると、安堵の笑みを浮かべ、やがてそれは力強いものへと変化した。

「こちら側は任せておけ。お前の背中は、私が守る」

胸が熱くなる。

この時、明確にローゼの心に定まるものがあった。

だが今は、まず邪魔なこの男たちをどうにかするのが先だ。

「はい。――お任せします」

頷き、ローゼはライナルトと背中合わせに、思わぬ助っ人の登場に怯む男たちへ向け、鋭い眼差しを向けた。

やがて剣を手にしたローゼは不敵に笑い、殺気を撒き散らして告げる。

「手加減はここまでです。『クンストの剣』の一振り、このローゼ・フォン・ブランシュが、じきじきにあなた方の狼藉を成敗してやりましょう」











「……せっかくヤる気満々でしたのに」

「さすがは『クンストの剣』だな。名前だけで大層な威力だ」

シューレ音楽学院の三人のみを残し、その場に不届きな輩は誰もいなくなっていた。

ローゼが「クンストの剣」と名乗るや否や、人数にまかせていた男たちは顔を引きつらせ強張らせ、「『クンストの剣』だと……!?」「そんなこと聞いてねえ」「いくら積まれても命にかえられるか」「知らなかったんです」「オレたちはただ雇われただけで」などと口走りながら、散り散りに逃げていったのである。

ローゼが「クンストの剣」であることを男が意図的に隠していたのかどうかは知らないが、こうして、自ら得たわけではない力は簡単に失われてしまったようだ。

雑魚ばかりとはいえ久しぶりの対人戦に血を滾らせていたローゼとしては、いささか不満を抑えきれない。が、悪戯に血を流すこともあるまいと剣を持った手をおろした。

「……とりあえず、あのチンピラたちのことは後にするとして――」

「この残ったゴミが問題か」

さりげなく辛辣なライナルトだった。

ローゼとライナルトの視線の先には、ひとり置き去りにされた貴族の青年。

彼は集めた輩に逃げ去られ蒼白になり、ローゼが手にした剣に目を向けて腰を抜かしていた。何とも情けない様子である。

「……お前にパートナーの申し込みをしていた奴だろう。こいつが首謀者か」

「そのようです。ですが、何故それを?」

「お前を狙ってこんなバカげたことをしたのだろう?」

ライナルトはローゼの質問には答えず、意味深に笑った。

ローゼはそれで何となく理由が分かった気になり、こんな時ではあるが、動揺する。

そんな自身を叱咤するように、ローゼは真面目な顔をつくった。

「……迷惑なことに」

「どう始末をつけたい?」

「私としてはこの場で刻んでやってもよいのですが――」

ローゼが少し剣を持った手を動かしてやると、男は「ヒッ」と情けなくも短い悲鳴を上げ、腰を抜かしたまま後ずさる。

ローゼは鼻白み、侮蔑の視線をくれてやった。

「……それは冗談としても、無罪放免にしてやるにはやりすぎましたからね。学院長に直訴して退学処分にでもしてもらいますか。その後父に再教育を任せるのも手ですね。見習いたちが大層世話を焼いて更生してくれることでしょう」

「それが一番妥当か。警察に任せるより再犯を考えなくて済みそうだ。……許すなら、私が始末してやっても構わないのだが――」

「こんな幼稚で感情的で独善的で卑怯なゴキブリ以下の人間、あなたが手を下す価値もありません」

冷ややかにローゼは言い、ライナルトは笑った。

「身に釣りあわないものを求めた弁えないゴミにそれなりの報いをくれてやっても良かったが、お前がそう言うのなら、その通りにしよう」

「おっ、お前ら――!」

散々な言われように怒るくらいの脳と度胸はあるらしく、尻餅をついたまま男は顔を歪めて見苦しい抗議をしようとした。

味方もおらず、二対一で、剣の存在があるということを考慮しない浅慮を見せつけたという見方もできるが。

「僕は貴族だ! 元皇族だからといってそんなことを口にしていいと思っているのか!? 僕の父もこんなこと許すまい。君も君だ、いくらフォン・ブランシュだからといって、そんな風に剣を持ってはしたないとは思わないのか! せっかくの生まれも容姿もそれでは――」

汚く喚く男のために聞いてやる言葉も、返してやる言葉も二人にはなかった。

情動を動かしてやる価値もなかったが、ローゼはその手の中の剣を強く握り、そして。

「ガッ!」

ライナルトは物も言わず、男の顔面を蹴りつけ、その体をふっとばして、黙らせた。

その余りのスピードと威力にローゼが目を見張るほど、鮮やかで、乱暴だった。

地面に体を強かに打ちつけた男だが、それよりも前に気絶したらしく、呻き声も立てず、ただオブジェと化す。

「……自分の足でゴミ捨て場に行かせられなくなったな。運ぶ面倒を増やしたか」

「……喚くのを持っていくより運びやすいんじゃないですか?」

「それもそうかな。"彼"にとっても都合がいいか」

ライナルトと同時に、ローゼも空き地の奥、木材が捨ておかれた方へ目を向けた。

「出てくるといい。悪いようにはしない」

しばし無言で二人が待っていると、木材の影から、一人の壮年の男性が現れる。

諦めの宿る瞳の持ち主は、貴族の男の付き人だった。

ライナルトもローゼもそこに人が隠れ潜んでいることに気付いていたが、物騒な気配を感じなかったので、これまで放っておいたのである。

彼は我儘な主人を諌めたが、若い主人は彼に従わず、こういう結末を迎えてしまったということだった。

使用人の男は二人に敵意を向けず、むしろ面倒をかけてしまったことを申し訳なく思っているようだ。

相手が言葉の通じない人間であることはローゼもよく知っていることであったから、責めるよりも同情がわいた。

こんな不始末になってはどうなってもいたしかたないと腹をくくっている使用人に、ローゼは労わりの声をかけ、多少の処罰は覚悟しておいてもらわねばならないが、職を失うことはないよう口添えすることを約束し、貴族の男を連れ帰ってもらうことにする。

貴族とその使用人が逃げてしまう可能性もあるが、そんなことをしても「クンストの剣」の反感を余計に買うだけで、いずれ見つかることは容易く想像できることであるので意味がない。

自分たちで運んでいくのも正直嫌だったので、二人は使用人にこれからのことを話し、貴族の男を連れて先に学院に帰らせた。

「……これで後は全部学院に帰ってから、ですね」

「そうだな」

「せっかくの休日が、あいつのせいで散々になってしまいましたね、全く……」

「だがお前に怪我もなくて良かった。どうせなら真剣を振るうお前も見てみたかったが、それはまた今度の機会に、楽しみにしておいてもいいかな」

ライナルトは何事も無かったかのように微笑み、ローゼはそれがとても。

とても、嬉しくて、それから……。

微笑みを返し、ローゼは手の中の剣をライナルトに差し出した。

「そういえば、借りっぱなしでしたね。ありがとうございました。――ですが、どうしてこれを?」

少なくとも別れる前まではないものだった。

ライナルトは受け取り、実は、と告げる。

「……この先お前といるならば必要かと思ってな。宮殿を出る前に使っていたものを打ち直してもらっていたんだ。先ほどの男にそれが仕上がったことを教えてもらったので、つい気持ちが逸ってしまった。受け取るだけならすぐだし、お前にも見てもらいたいと思ったんだ。だが、少しでも離れるべきではなかったな。こんなことになって」

「いいえ……いいえ」

二度、ローゼは否定した。

「こうして来て下さいましたし、何事もなく首謀者も捕えられたのですから。あなたがそんな顔をすることは全くありません。それにしても、よくここが分かりましたね」

「お前が見ていた店の者が、連れていかれたのを見ていたんだ。私が戻ってお前を探していたら、誰かを呼ぶべきかと案じてくれていたようで、連れていかれた方を教えてくれた」

「そうでしたか……。後でお礼に行かなくてはいけませんね」

「そうだな」

そして、わずかの沈黙の後、ライナルトがローゼの前で膝を折り、ひざまづいたので、ローゼは仰天した。

「ライナルト!?」

「ローゼ」

ローゼの狼狽に対し、ライナルトの声は冷静だった。

冷静だったが、わずかに硬さも含んでいた。

彼は返された剣を鞘から抜き、その切先を自身の喉に向ける。

自身に向けられた柄に、ローゼは息を呑んだ。

「……此度は遅れをとってしまったが、次はない。私はお前を守る。お前が剣をとる時は共に戦おう。友人としてでも構わない。どうか、私の忠誠を受けて欲しい」

ライナルトは、この時、ローゼは剣をとらない、とも思っていた。

だが、ローゼはわずかな躊躇の後、その柄を手にした。

「……その忠誠、確かに受けました」

ライナルトの肩に剣の刃を触れさせ、ローゼはその刃に口付けを落とす。

彼女はそれから、決意を言葉にした。

「パートナーとして……、これからも私と共にいてください」

ライナルトは目を見開き、ローゼを見つめた。

ローゼは恥ずかしげに顔を赤らめながら微笑して、剣をライナルトに返す。

それを半ば反射的に受け取って、ライナルトはただ愛しく想う相手の名を呼んだ。

「ローゼ……」

「はい」

「……いいのか? 調子にのっても」

その言い方に、ローゼはおかしそうに笑った。

「どうぞ」

その笑顔が、ライナルトには眩しく輝かしく、かけがえのないものに映るのだ。

「……では、そうする」

彼は立ち上がり剣を鞘に納めると、今度はローゼの手をとり、その甲に口付けた。

「ありがとう」

そのライナルトの嬉しそうな笑顔も負けず、ローゼにとって大切なものになっていて。

「……どういたしまして、というのもなんだか変な気がしますが……」

ライナルトの唇の感触が残る手に、熱が集まっていくのをローゼは感じた。

「よろしくお願いします」

「こちらこそ」

面映ゆそうに赤面したままのローゼは、それを誤魔化すように、告げる。

「さしあたっては……、この辺りの治安向上につとめたいと思うんですが……。付き合って、いただけます?」

首を傾げられ、ライナルトは色気に欠ける誘いについふきだした。

「笑わないで下さいよ、もう」

「……すまない、喜んで付き合おう」

だが笑いの余波は残って、いつまでも笑っているライナルトの背中をローゼは軽く叩いてやったのだった。




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