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夜の灯火  作者: 隠居 彼方
第5楽章
46/135

聖夜 14



休日の夜。

図書館で一緒になったテアとライナルト、そして共に出かけたローゼとディルクが帰ってきて、寮の玄関で偶然四人揃うことになった後。

当然のように、彼らは部屋に荷物を置くと食堂に集まって共に夕食を囲んでいた。

「そうだ、お前と初めて夏の祭に行った時のことをテアに話していて思ったのだが、二十三日、どうせなら早めの時間に出かけて神誕祭のマーケットに顔を出してみるのはどうだ?」

いささかわざとらしく意地悪く、そう口にしたライナルトに、過敏に反応したのはディルクである。

「……なんだって?」

「マーケットに行くのは不満か?」

「そっちじゃない。テアに話したのか?」

いささか憤然とした様子を見せ、ディルクはライナルトに詰め寄る。

それに「すみません」とおろおろとしてみせたのはテア、「珍しく二人揃っていたと思ったらそんな話をしていたんですか。私も聞きたかったです」と言ってのけたのはローゼだ。

テアがやはり聞いてはいけなかっただろうかと眉を下げたのに、ディルクは慌てて表情を和らげる。

「いや、お前が謝る必要はない。ただ……、昔は色々と、やったものだから……」

本当にディルクが話してほしくないことならば決してライナルトは口にはしないだろうから、話の内容は無難なものにおさまっていただろうが、それでもテアに色々と聞かれて呆れられるのが、ディルクは嫌だったのだ。

ディルクが本気で怒っているわけではなく、照れくさいのを隠そうとしているらしいので、テアはほっとした。勝手に話を聞いてしまったことにほんのわずか罪悪感を覚えるが、忘れたくなかった。ライナルトから聞いた、ディルクの少年時代の話を思い返しながらテアは思う。

「今も昔も、お前は人を驚かせることばかりしている。そう変わらないさ」

ライナルトは嘯き、面白がるなとディルクは親友を軽く睨んだ。

「……そう、そうですね」

しかし、ライナルトの言葉を受けて、テアが同意するように頷いたので、ディルクは目を見張った。

確かにディルクは、今も昔も人を驚かせるようなことをやってのける――だがそれは決して悪い意味ではなく、とテアは思ったのだった。

テアの同意がディルクにとって不本意なものではないというのは、ディルクにもテアの表情を見れば分かった。そしてテアはなお、続ける。

「それに、昔も今も、ディルクはその、揺るがない、信念を持っているのだなと……、少なくとも私はライナルトの話を聞いてそう感じて……。そういうところも、尊敬せずにはいられないと思いました」

テアは静かに、そして無自覚にディルクに爆弾を落とした。

「……ありがとう」

ディルクは数秒の間、硬直する。

が、何とかテアに不審を与える前に復活した。

しかしテアも何となくそのぎこちなさに気付いて、慌ててディルクに頭を下げる。

「いえ、あの、でも、勝手に色々と聞いてしまったことは本当に申し訳ありませんでした」

「いや、いいんだ」

ディルクは苦笑して首を振る。

「どうせライナルトが話し出したんだろう?」

「また機会があれば、という約束もしてある」

テアの落とした爆弾に平静を装うとする親友に同情を覚えながらも、ライナルトは言った。

ディルクはそれにまた若干顔を引きつらせる。

「……テア、昔話をするのは別にいいんだ。だが、こいつは時折面白がってあることないこと吹き込みそうだから、またの機会がある時は俺から直接話させてくれないか」

「いいのですか?」

「ああ」

テアは嬉しそうに微笑んで、昔話をするのに複雑な気持ちのディルクも何となく喜ばしいような気持ちにさせられる。

――このくらいは、刺激してやってもいいだろう。

ライナルトは親友とそのパートナーをちらりと横目で見つめて思った。

ディルクは自らの危険にテアを巻き込むことを恐れて一定の距離を保とうとしているし、その気持ちはライナルトもよく理解している。またテアの事情も分かっているが、二人が双方を慮りすぎて離れてしまうことは、距離を近付けるよりもマイナスなのではないかと感じられるのだ。テアがディルクに害をなすのならば、と思っていたライナルトだったが、図書館でテアと一対一で言葉を交わして、やはりディルクにはテアの存在が必要だと結論付けたのだった。もちろん、テアがディルクを守ろうとする限りにおいてではあるが。それでも、こういう方法で、多少なりとも、二人には絆を深めて欲しかった。

こうした一連の流れをローゼは興味深く聞いていて、ライナルトの意を悟り、ほんのわずか苦笑のようなものを彼にだけ分かるように見せる。ライナルトもそれに同じような笑みで返し、ローゼは話を元に戻した。

「それで、マーケットに行こう、という話でしたよね。私は賛成です。隣町と言ったらそれなりに大きな市が開かれるそうですし……。コンサートは夕方からですから、早めに出発して立ち寄ればちょうどいいと思いますよ」

「俺も否やはない」

「そうですね。良いと思います」

ライナルトの提案に三人とも賛成して、二十三日――ロベルト楽団のコンサートが開催されるその日は早めに寮を出ることになったのだった。






そのように――シューレ音楽学院では、冬休みを控え、穏やかな日々が続いていた。

冬休み、そして神誕祭を前に、学院祭とはまた違う、待ちきれないようなちょっとした浮ついた雰囲気もある。だが、年が明ければ試験もまた控えていて、それが多少抑制剤になっているらしく、生徒たちが羽目を外し過ぎているということはなかった。

そんなある日、テアとディルクは二人揃って学院長に呼び出しを受け、放課後、学院長室に赴いた。

揃って呼び出されるなど一体何事だろうかと首を傾げていた二人が、入室して勧められるままソファに並んで腰かけると、正面に座った学院長は早速用件を切り出す。

「学院祭で起きた事件の犯人が分かった」

その言葉にはっとして、テアとディルクは表情を改めた。

学院祭で起きた事件とは、言うまでもなく、コンサート直前にテアがコンサートホールの一室に閉じ込められた事件である。

「それについて、順番に話そう」

学院祭が終わり、学院長はすぐに調査を開始した。学院の対面を保つために事件のことは内密にという方針がとられたため、警察等外部に協力を要請することはできなかったが、これまでの人脈等を駆使し、犯人を見つけるために労は厭わなかった。

犯行は複数人で行われ、学外者の実行犯と学内の黒幕がいるということは、明白。

テアが顔を覚えている実行犯を見つけることができれば自然に黒幕の姿も明らかになるだろうが、テアの証言に当てはまる風体の人物をただ闇雲に探しても時間を無駄にするだけだ。

学院長はまず、テアが閉じ込められた部屋の鍵を比較的持ち出しやすい立場にあった学院祭実行委員とその周囲を中心に調べていくことにした。

「全く、入学試験の時ですらこんなに真剣に生徒の情報を集め眺めたことはない」

と、自嘲気味に学院長は呟いたものである。こんな事件が起きることを許してしまった自分が、そして生徒を疑わねばならない立場になってしまった自分が何とも情けなかったのだ。

だが、そうして調べていくうちに、ふと気にかかる情報を目にした。

それは、事件後貴族出身の生徒の実家で一人の使用人が解雇されたという、内容から見れば変哲もないものであったが――。

――もしかしたら、という推測は簡単に成り立った。

もしかしたら、テアを閉じ込めた実行犯を、切り捨てたのではないか、と。

学院長はその解雇されたという使用人を探させることにした。見当違いでも良かった。一つの可能性が消えれば、後は他の可能性に絞り込める。

もちろん、それと同時に他の実行委員の周囲にテアが言ったような女性がいないか、生徒たちの周囲に変わったことはなかったかなど、様々なことに手を尽くした。

そうするうちに、やがてその解雇されたという使用人と接触することができたのだが――、彼女はテアが証言した、そのものだった。

そう、学院長の不審は当たっていたのだ。

その使用人こそ、テアを閉じ込めた実行犯だったのである。

学院長が自ら赴いて用件を切り出せば、彼女は青くなりながらも、思いの他あっさりと自分の犯したことを白状した。あれからずっと罪の意識に苛まれて、黙っていられなかったらしい。

主人に命令されて、仕方なくテアを閉じ込めたと、彼女は震えながら告白した。

しかも主人はテアを閉じ込めてコンサートに参加できないようにするだけではなく、本当はステージから逃げたのではないかという疑惑を周囲に植え付け、テアを学院から追い出そうとしていた、と。

――どうして、そこまでして。

とディルクは話を聞いていて思わずにはいられない。テアに嫉妬羨望の思いを抱く気持ちは分かる。だが、それならば正々堂々音楽で勝負すればいい。姑息で陰惨な事件を企むくらいならば、己の血を流すほどに練習を重ねればいい。その方が余程健全で、前向きであるし、何よりも自分のためになる。

「それで、その方に命令を下した主人というのは?」

強く拳を握ったディルクの隣で、当事者のテアはむしろ淡々と学院長に尋ねた。

「三年ピアノ専攻の、ゾフィー・フォン・ハッセという女生徒だ」

テアにとっては知らない名前だった。だが、ディルクは何度か言葉を交わしたことがあり、その姿が脳裏に浮かぶ。

学院長がその使用人を証人として呼び、ゾフィーに話を聞いたところ、自分は何も知らないと彼女は最初、容疑を否定した。解雇にした逆恨みかと元使用人を罵り、誰かが自分をはめようとしているのだとまで言い出した。

だが、学院長はその使用人の証言だけではなく、確固とした証拠もきちんと手に入れていたのである。実行犯だったその元使用人は、全てが終わった後は学院祭実行委員の腕章も、部屋の鍵もきちんと始末するように言いつけられていたが、下手に捨ててしまえば見つかってしまいそうで怖く、ずっとそれを手元に持っていたのだ。その鍵を見せて、学院長はゾフィーに告げた。

『君が犯人でないというのなら、指紋を取らせてほしい。この鍵には、実行犯である彼女にこれを渡した共犯者の指紋がついているはずだ。この鍵に君の指紋がなければ、君の言うとおり君をはめようとした事実があるということになるだろう……』

ちなみにこの時代、指紋による捜査は警察で取り入れられてはいたが、まだ一般的には常識というほど浸透してはいなかった。そのため、ゾフィーも全く考慮に入れていなかったらしい。指紋を取らせて欲しいという学院長に頷けなかった彼女は、ようやく自分が企んだことだったと肩を落として小さく白状したのだった。彼女はその動機も口にしたが、それはわざわざ説明するまでもないだろう……。

「ひとまずゾフィー・フォン・ハッセには謹慎を命じてある。学院側としては、被害者であるテア、コンサートへの不参加を余儀なくされようとしたディルク、その他事件関係者への謝罪を求めた後、彼女には退学してもらうつもりだ。また実行犯である彼女には、今後ケーレに足を踏み入れないことを約束させるだけに止めている。彼女が証拠を手元に持ってくれていたおかげで主犯を確保できたし、何よりも本人が恥ずべきことだったと反省しているようだったから、情状酌量の余地があった。だが、ここで二人の意見を聞いておきたい。……これらの処分で君たちは納得できるか?」

学院長はそう言って真っ直ぐテアとディルクの二人を見つめた。

怒りの感情のまま、それくらいでは足りない――というのは簡単だ、とディルクは学院長を見返しながら思う。だが、人が人を裁くということは、そう簡単なことではないだろう。感情のままやり返しても、ただ憎悪を重ねるだけだ。それに、彼女たちがテアへした行いを、ディルクは容易に許すことはできないが、しかしまず犯人たちを許すか否かの決定権を一番に握っているのはテアだ。

ディルクはそっと隣のテアを見下ろした。それを意識してかしないでか、テアは静かに唇を開く。

「意見をお許しいただけるのなら……、謝罪は必要ありません。少なくとも、私には。もしあちらが心から謝罪をしたいと足を運んでくれるのならば受け入れますが、そうでなければ無用のものです。それから、フラウ・ハッセへの退学処分は、適切ではないと考えます。一ヶ月程の停学処分が適当ではないかと」

少し意外そうに、学院長は片方の眉だけを器用に上げて見せた。

「停学処分で構わないのか?」

「不遜ながら、退学にして終わり……とするほど優しくして差し上げることはないと考えます」

テアの言葉は穏やかに聞こえたが、内容は酷薄なものを孕んでいた。

束の間、学院長もディルクも言葉を失う。

テアの言葉が指すところはつまり、こういうことだった。停学処分にするということは、彼女は停学期間が過ぎればこの学院に戻ってくる。事件のことは公にはなっていないものの、把握している生徒は多くはないが少なくもない。犯人であると公表はしなくとも、噂は巡り、彼女は遠巻きにされるだろう。また全ての教師は事情を知っているから、どうしても先入観が残る。これまでのように普通の学院生活はどうしても送れないはずだ。しかも来月には試験があり、一ヶ月の停学処分が下されれば、彼女は試験を受けられず、必然的に留年することになる。彼女はまた一年を最初からやりなおさなければならず、それは退学よりも余程屈辱的なことだろう……。

退学であっても何かしら後ろ指を指されることはあるだろうが、学院に残るよりも、直接それを身の上に感じることはないはずだ。音楽の勉強ならばここでなくともできるし、宮廷楽団にも本当に入りたいならばシューレ音楽学院だけが唯一の手段というわけではない。貴族である彼女が学院を退学になったからといって、大きなダメージを受ける可能性はむしろ少ない。

淡々として見えるテアだが、ディルクの思いを踏みにじろうとしたことに関しては、腹に据え兼ねていたらしい。ゾフィー・フォン・ハッセがより苦しむであろう罰を、彼女は口にしたのだった。テアもこれから犯人と同じ学生生活を送ることになるのだが、そんなことはささいなことだと言わんばかりに。

学院長はそれらを全て分かって小さく溜め息を吐くと、頷くように目を伏せて言った。

「こちらとしても軽々しく生徒を放り出してしまうことは本意ではない。彼女の処分についてはもう少し考えることとしよう。……ディルク、何かあるか」

「いいえ。俺はテアが良ければそれで構いません」

ディルクはそう言うが、テアの方はむしろ、ディルクにこそ犯人たちを糾弾する資格があると考えていた。コンサートであの曲を演奏することをずっと望んでいたというディルク。それなのに、それを妨害されそうになったのだ。ディルクはもっと、犯人たちを――そしてテアを、責めていい。それなのに彼は、閉じ込められたテアを気遣うばかり。テアはそれが心苦しく、それと同時に――。

テアがぎゅっと唇を引き結んだ時だった。

学院長が椅子から立ち上がる。

「今回の事件が起こってしまったことは学院長として誠に遺憾であり、反省を覚えるばかりだ。被害者であるテア……、それにディルク。君たちにはいくら頭を下げても足りない。本当にすまなかった」

真摯に頭を下げられて、テアもディルクも驚いた。

「学院長、あなたが謝ることは……」

「そうです。状況から言っても未然に防ぐということは難しかったですし……」

「いや、だが、テアに対する生徒たちの反感は分かっていたことだった。時間が経てば認識は変わってくるはずだと思い、実際にそういう流れにはなってきていたが……、まさかここまでの行動に移してくるとは考えられなかった。私の甘さだ」

「手出し無用としてもらったのは、私の意思です」

悔やむような表情の学院長に、テアはきっぱりと言った。

「いつか自分の力で、と。それは今も変わりません」

強く煌めくような黄金の瞳に、一瞬マテウスは気圧される。

やがて彼は苦笑して、再び椅子に腰を落ち着けた。

「……それでは、護衛をつけるという提案には、賛成してもらえそうにないな」

「護衛?」

テアの目が驚きに見開かれる。

「……学院祭の事件の犯人は判明したが、彼女ひとりだけが不穏分子ではなかろう。お前の後見人からも、護衛をつけた方がと言われている」

後見人、という単語にテアの肩がかすかに揺れた。

しかし彼女は、それでも首を振る。

「必要ありません。自分の身は、自分で守ります。何より、そんなことをすれば余計な刺激になるだけです」

それはテアにしては不遜な物言いだった。それだけ護衛を認めたくなかったのだろう。

そしてディルクも、進み出るように言った。

「……確かに、護衛は大げさに過ぎると俺も思います。――テアに護衛が必要と言うならば、俺ができる限り側にいて彼女を守りましょう」

「ディルク……! それは、」

テアは言いかけたが、それを遮ってディルクは人差し指をテアの唇の前に差し出した。

それをするディルクは、優しい微笑みを浮かべている。テアは何も言えなくなった。

「その責は俺にもあるが……、テアへ嫉妬の目を向ける生徒たちはまだ多い。けれどその一方で、彼女を大切な仲間だと思っている者も当然いる。俺もそうだし、ローゼやライナルト、フリッツ……、皆テアを守りたいと思っています。力になりたいと」

ディルクの誠実な言葉に、学院長の瞳が興味深そうに光る。

「……仕方ない」

学院長は苦笑交じりに提案を退けた。

「ここは譲ろう。……今日は突然すまなかったな。後日また、事後処理のことで呼び出すことがあるだろうが、その時も悪いがよろしく頼む」

学院長は二人を解放しようとして、ふと机の引き出しに手をかけた。

「……それから、これを忘れるところだった。その使用人の彼女から、手紙を預かっていたのだった」

「手紙、ですか?」

「ああ。どうしても、テア、お前に詫びねば済まないと……。本当は直接お前の元まで行くのが良いのだろうが、また見たい顔ではないだろうし、もうこの地を踏むことはできないからと、手紙を託された。受け取ってくれるか?」

テアはほんのわずか目を丸くしたが、やがて微笑んで学院長が差し出した手紙を手に取った。

「はい……、受け取りましょう」



学院長室を退出し、テアとディルクは教員棟の外に出た。

「ディルク……」

どう声をかけたものか迷い、テアは唇を閉ざす。

しかし、ディルクは屈託なく笑い、何事もなかったかのようにテアを誘った。

「泉の館に行かないか?」

「え?」

「そろそろピアノのところに行かないと、お前が禁断症状を起こすのじゃないかと心配だ」

「ディルク……!」

テアは顔を赤らめたが、それはからかわれた、というだけでなく、見抜かれているという恥ずかしさも混ざっている。そう、今のテアはピアノに触れたいという衝動に抗いがたい状態だったのだ。"こういう時"にはまずピアノ、なのである。

そんなテアを見つめ、とにかく犯人が見つかったことは良かった、とディルクは思った。

覚悟していたとはいえ知っていた顔が犯人であったことに対して、苦い気持ちは抑えきれないが、少なくとも今後彼女がテアに手を出すことはないだろうから……。

先ほど言ったように、また同じような卑怯なことを考えるような輩が出てきても、必ず彼女を守ろう――ディルクは愛しい存在を白藍の瞳に映して、もう一度心にそう誓った。

「――行こう」

そうして二人は、いつものように並んで泉の館へと歩き出したのだった。




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