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夜の灯火  作者: 隠居 彼方
第5楽章
45/135

聖夜 13



テアはライナルトの話を興味深く聞いていた。

彼の話に登場するディルクはライナルトの認識を反映してかとても活き活きとしていて、話を聞くテアの脳裏に描かれる幼いディルクも眩い笑顔で活発に動く。

テアに対するライナルトの話は、宮殿の複雑な人間関係にはあまり触れない、主にディルクと重ねた冒険話が主だったので、そのせいもあるのかもしれないが。

「……僭越かもしれませんが、その頃のあの方に、私もお会いしてみたかったです」

テアは笑みを零しながらそう告げる。

「あいつも、そう言うんじゃないかな」

「え?」

ディルクは、テアのことなら何でも知りたいと思っているだろう。

きょとんとしたテアに、ライナルトは意味深に笑った。

「もしかしたらすれ違うくらいは、していたかもしれないぞ。テア、城下へ行ったことは?」

「数度、ありますが……」

「あいつは頻繁に宮殿を抜け出していたからな。気付かずともそういうこともあったかもしれない」

「そう言われると、逆に何だか悔しくなってしまいますね」

テアは苦笑する。

それにライナルトは軽く笑って、もうあれから八年も経つのか、と思った。

あの出会いからこれまで、様々なことがあったけれども、二人は支え合ってここまで来た。

おそらくこの関係は変わらないだろう。

例え将来、距離は離れても、互いに支え合うような存在であれる。

そうでありたいと、ライナルトは思うのだ。

ディルクがライナルトの存在を明るく照らしてくれたように。

いつでも、何があっても、彼の力になれる人間でありたいと。

――そんな風に、ライナルトとテアが談笑していた時だった。

大きな鐘の音が響いて時刻を知らせる。

二人が顔を上げて窓の外を見やると、外は夕闇に包まれていた。

「……長居してしまいましたね。そろそろ閉館ですか」

「昔話が過ぎたな。少しの邪魔のつもりが、すっかりお邪魔虫になってしまった」

「いいえ、そんな。とても楽しい時間でした。こうした機会は……なかなかないでしょうし」

――あいつも自分の常識外れなやんちゃぶりは、特にテアには知られたくないだろうしな。

ライナルトはそう思い少々人の悪い顔で笑う。

「寮に戻るか? そろそろディルクたちも帰ってくる頃だろうし、食事時でもある」

「そうですね」

二人は立ち上がり、図書館を出ようと足を向けた。

「今日は本当に、色々とありがとうございました」

「礼を言われることじゃない。だが……、また機会があれば、話せるといいな」

「そうですね、楽しみにしています」

テアは本心から言って微笑む。

ライナルトはその繊細そうな横顔を見て、ディルクとテア双方の抱える問題が早く片付いてしまえばいいのだがと思った。

テアはディルクを過度に美化もせず、幼い頃の常識外れな行動を聞いても変な理由をつけたり否定敬遠することなく、ただあるがままのディルクを受け止めてくれている……、そうライナルトは感じた。

ディルクの想いが前提としてあるのはもちろんだが、テアがディルクの相手であることは理想的だとライナルトは考える。

テアの本心をはっきりと聞いたわけではないが、彼女のディルクへの想いが人並ならぬことは確かだ。

それならば、ディルクの想いを受け止め、彼と結ばれて欲しい、とライナルトは思う。

――しかし、ままならないものだな……。

ライナルトは内心嘆息しながら、先ほど思い浮かんだ問いを、心の中だけでもう一度繰り返す。

――きっと、お前だと思うのに。

城下に何度か足を運んだことがあると言ったテア。

ディルクが出会った運命の音は、やはり彼女のものなのかもしれない。

それをライナルトは、今すぐにでも確認することができた。

だが、その答えを聞くべきは彼ではない。

いつかディルクからその話を聞ける時が来るだろう。

それを待って、ライナルトはその問いを封じた。






ローゼとディルクは、薄暗い夕空の下校門をくぐった。

特に立ち寄るところもないのでそのまま、二人は寮へと足を向ける。

寮の玄関から冷たい風の遮断される屋内へと足を踏み入れて、二人はすぐに慣れ親しんだ二つの顔を見つけた。

「テア、ライナルト」

ローゼが声をかけると、声を交わしていた二人は同時に振り向き、帰ってきたローゼとディルクに気付く。

「お帰りなさい」

テアは柔らかに微笑んで、それにローゼとディルクは何となくほっとさせられ、顔を見合わせた。

二人には、テアのことで同じように考えていたことがあったのだ。

それは、つい先ほど、帰り道で遭遇した出来事に端を発している。


学院までほど近い石畳の道を、ローゼとディルクは歩いていた。

太陽が隠れようとする時刻、空気はずっと冷え込んで、早く暖かな場所へとローゼは足を速め、ディルクはそんなローゼに歩調を合わせていた。

その時、そんな二人の前に立ちふさがる一つの影があったのである。

「や、全く彫像みたいに綺麗な男女が並んで歩いていると思ったら、片やディルク元殿下ではないですか。お久しぶりです」

馴れ馴れしい口調で話しかけてきたのは、おそらく三十代くらいの、ひょろりとした痩身の男性だった。茶の混じるくすんだ金髪は癖のある巻き毛で、小豆色の瞳はどことなく印象的な光を宿している。

服装はいたってシンプルなシャツにチェックのズボンで、それだけ見ればどこにでもいそうな男性だったが、その手にある使い古されたペンとノートが特徴的といえば特徴的だ。

見ず知らずの人間に愛想よく笑いかけられ、ローゼは警戒し困惑したが、相手が「ディルク元殿下」と呼びかけただけあって、ディルクは相手と知り合いだったらしい。

「元殿下と言うのは止めてくれ、ディボルト。それに、お前とはついこの間会ったばかりだろう」

「そうでしたね」

あくびれずに相手は笑う。憎めない、愛嬌のある笑顔だった。

「それにしても、あなたが女性と二人連れというのは珍しいですね。例のパートナー殿かと思って声をかけてみたのですが……、フォン・ブランシュの跡取り様だったとは! 申し遅れましたが、オレはロルフ・ディボルトと申します。『クンストの剣』にお目にかかれるとは光栄です。以後、お見知りおきを」

「はあ……」

捲し立てるように自己紹介をされて、ローゼは頷くしかなかった。

しかし、ローゼの顔だけ見て彼女を「クンストの剣」だとすぐに分かるとは、この男は一体何者であるのかと、訝しげな視線を向けてしまう。

ディルクを問うように見上げると、彼はすぐに答えをくれた。

「ディボルトはヴァイス・フェーダーの記者だ」

「ああ……」

ローゼは納得して頷いた。

ヴァイス・フェーダーというのは、民間の新聞社の名前であり、クンストにおける全国紙の名でもある。

見聞の広い記者ならば、ローゼのことを知っていてもおかしくはなかった。またその手にあるペンとノートの理由も分かりやすい。

「ディルク様、この呼び方もあんまり嬉しくないって? ではディルク殿で妥協していただきましょうか――ディルク殿とは、ディルク殿下と呼ばせて頂いていた頃から縁がありまして。先日のシューレ音楽学院の学院祭の様子もオレが書いたんですよ」

「ああ、そういえば署名にR.Diebold、とありましたね――」

「これは嬉しい! 『クンストの剣』にあの駄文を読んで頂けたとは!」

大げさに喜ばれて、ローゼはたじたじとなった。

ディルクは嘆息まじりに囁く。

「こいつは悪い奴ではないんだが……、こういう奴なんだ」

「はあ……」

ローゼは胡乱な眼差しでロルフ・ディボルトを見やった。

相手はローゼの不審そうな眼差しに気付いているのかいないのか、にこにこと微笑んでいる。

「それで、お前はこんなところで何をしていたんだ?」

あまりろくなことではないだろう――と言いたそうなディルクの問いだった。

「正直なところを白状しますと、あなたに首でも絞められそうな気がするんですがね――」

ロルフは少し躊躇うような、もったいぶるような様子を見せたが、続ける。

「実を言うと、あなたのパートナーに少しでもお話が聞けないかと思って張ってたんですよ」

ディルクはそうと予想していたのか泰然と構えたままだったが、その台詞にローゼははっと顔を強張らせて、ロルフを睨みつけていた。

「ローゼ嬢は、ディルク殿のパートナーと懇意にしているのでしたね」

ロルフはたじろぎもせず笑って、ローゼは決まりが悪くなる。

もともと彼女はポーカーフェイスが得意ではないのだ。

だがそれがなくとも彼はそれなりにテアのことを調べていたようで、その口調がそれを物語っている。

「……彼女は、取材は遠慮したいと希望している。余計な詮索をすると身を滅ぼすぞ?」

ディルクは普段と同じ調子で告げたが、それには威圧的な何かがあった。

「怖いですね……あなたにそう言われると。それだとやっぱり、テア・ベーレンス嬢に深入りするなって上に圧力をかけたのは元殿下ですか」

肩を竦めながらもロルフはのんびりと尋ね、ディルクはぴくりと眉を動かした。今の「元殿下」、には先ほどまでとは違う意味が含まれていた。

「……いつも言うようだが、今の俺はただの一般人だ。彼女のことに関して、そういうことがあったのか?」

「ただの一般人にしては雰囲気がありすぎると思いますが……、まあ、そうです。だからこそ余計に好奇心がそそられてしまいましてね。若干十七にして、シューレにこれまで音楽界に影も形もなかった少女が特別入学を果たし、あのエンジュ・サイガの弟子になり、今度はあなたのパートナーときた。隠すのも難しいくらいの存在じゃないですか。それなのに彼女には謎がたくさんある。一体彼女は『誰』なのか、誰がどうして彼女を隠しておこうとするのか、誰だって気になるでしょう?」

同意を求められたが、ディルクもローゼもそれに同意するわけにはいかなかった。例えロルフと同じようなことを疑問に思っていたとしても。

「ローゼ嬢は何かご存じではないですか。それとも、ご存じどころか全てを知っていてテア・ベーレンス嬢のことを秘匿しようとしているのはあなたご自身、とか?」

「私は何も知りません」

白を切るつもり、というのでもなく、正直にローゼは答えた。

もともとそんなに嘘は上手くないし、また好きでもないローゼだ。

「新聞社にそういう圧力がかかっていたことも今初めて聞きました」

「そうでしたか……。それでは、どういう経緯でテア・ベーレンス嬢と懇意になったのか、お聞きしても?」

「あなたはそれを聞いて、記事にして載せるつもりなのですか? 誰もそんなに読みたいなんて思っていないと思いますけれど」

ローゼの切り返しに、ロルフは楽しそうに笑った。

「そこを読みたくなる記事にするのがオレたちの仕事ですよ、ローゼ嬢。けど今のところ記事にしようと思ってもストップがかかるでしょうし、教えて欲しいと言ったのは単なるオレの好奇心です。とにかくオレは、色んなことが知りたくてたまらないんですよ。それこそ病気みたいにね。何かが箱に入ってるけど、中身は開けてみないと分からない。そういうものがあると、開けて悪いことが起こる可能性があっても絶対に開けてしまう。そういう人間なもので」

「……危険、ですね」

「よく言われます」

呑気に笑うロルフを、ローゼは信用ならないと思った。

ディルクは悪い奴ではないと言うけれど、テアに余計な手出しをしてくるような相手は気に食わない。

これ以上根掘り葉掘り聞かれてものらりくらりとかわしてやるとローゼは意気込んだが、相手は飄々として夕空を見上げた。

「……と、そろそろ戻らないとどやされそうなんで、退散することにします。ディルク殿、テア・ベーレンス嬢に関しては、くれぐれもご用心を」

「ああ、分かっている。ありがとう。……だが、お前も近付かないでくれるとありがたいがな」

「難しいことを言いますね。オレの性格はよく知っているでしょうに」

「知っているからこそ言おう。俺は敵と認めた相手に容赦はしない」

「……肝に銘じておきます」

最後にわずか苦笑を見せて、ロルフは二人に背を向けると雑踏にまぎれていった。

ローゼは何となくほっと息を吐いて、それから唇を尖らせてディルクを見上げる。

「どうして、彼にお礼なんて言ったんです?」

「わざわざ忠告に来てくれたからさ。あいつのように、テアのことをこそこそと嗅ぎまわっている連中がいる、とな」

「それは……」

答えを聞いても、ローゼは腑に落ちない顔をする。

「けれど、彼こそテアのことを色々暴いてしまおうとしている輩の一人でしょう。どうしてそんなに落ち着いていられるんです?」

「あいつは中身の知れない箱を開けずにはいられない人間だが、開ける前に出来得る限り中身のことを調べるし、それで危険だと分かれば他人を巻き込まないようにする配慮を持っているからな。何よりも、箱の中身が爆弾だった場合、あいつは自分自身でそれを解体して誰にも知られずに処分する賢明さも持っている」

「それは……」

ローゼはその比喩に眉を顰めた。

「彼は、迂闊に情報を漏らすような人間ではない、と?」

「そうだ」

再び歩き出しながら、ディルクは頷いた。

「それでも、彼自身が知ろうと動くことは変わらないじゃないですか。私はああいう輩がテアに対して無神経なことまでずかずか聞いてきたり探ろうとしたりするのが気に食わないんですよ」

声を高くしたローゼに、ディルクはわずかな苦笑を見せる。

「気持ちは分かるが、ああいう人間を上手く使うことも必要だと俺は思う。警戒して全てを寄せ付けないというだけでは、敵の弱みさえ分からないだろう?」

「確かに……、そうですけど……」

諭されるように言われて、ローゼは渋々納得するように頷いた。

「何より、少なくとも、テアが学院の中にいればディボルトも……、他の記者連中も手が出せない。外出する時に俺たちが目を光らせておけば問題はないだろう」

「まあ、そうなんですけどね。危うい芽はついつい先に摘んじゃいたくなるんです」

「お前にとっては初対面の相手だからな。神経を尖らせても仕方がない。俺も、一応信用はしているが、そこまであいつに信頼を置いているわけではないからな。だが、ヴァイス・フェーダーは他の低俗な新聞雑誌よりは余程ましだ。その記者だと思えば、少しは気も和らがないか?」

「そうですね……。学院祭の記事も、至極まともなものでしたし。……それに、確かに彼の警告は貴重でした。記者などにも気をつけていなければならなかったんでしょうけど、実際にはあまり気にしていませんでしたから」

ようやく気持ちを切り替えて、ローゼは言った。

しかし、ローゼは記者連中のことをあまり気にしていなかったようだが、ディルクの方は生い立ちもあって、彼らの存在には敏感だった。学院祭に関しても、ディルクのパートナーであるテアはもっと取りあげられ騒がれるかもしれないと危惧していたのである。例え取材を断っても、低俗なゴシップ誌はあることないこと書き連ねるのが常であるし、そういうことがあるならばテアをフォローできるようにしておかなければと思っていた。

だが実際には、ディルクのことは何やかやと書かれていても、テアに関してはほとんどのところで触れられておらず、ディルクは拍子抜けしていた。誰かが裏で手を回したのかと、ロルフに教えられる前から疑惑を持っていたのだが、どうやらその通りだったらしい。

「ですけど……、テアのことに深入りするなと圧力をかけたのは、一体どこの誰なんでしょうね」

ディルクの思考を読み取ったようにローゼは呟き、ディルクは隣で歩くローゼに視線を向けた。

「事件のことを公にしたくない学院が伝手でその辺の貴族にでも頼んだんでしょうか」

「そう……だな」

二人はしばらく、それに関してそれぞれの考えを巡らせた。

事件のことを公にしたくないという学院の立場は分かるが、それがテア自身に深入りするなということには直接は繋がらない。事件のことだけ隠しておけば済むのだから。

やはり、テアの背景には容易に触れられない何かがあるらしい、とディルクは確信を持って思った。

そして、それを隠そうと働きかけた誰かは、相当の権力の持ち主だ。

そうでなければ、ここまで徹底してテアのことが書かれないということは、まずなかっただろう。

どこのゴシップ誌でもディルクはテアの名前すら見かけなかった。シューレ音楽学院の学院祭のコンサートで、あそこまでの演奏をした彼女が、エンジュの弟子だとかディルクのパートナーという形ですら紹介されなかったのはやはり腑に落ちない。

――ローゼは知らずとも、モーリッツ卿が動いたということは考えられるな。他の誰かとすれば、明らかになっていないテアの後見人か……。後見人イコールモーリッツ卿なら、確信が深まるところだが、違うという話だからな……。俺の全く知らない『誰か』という可能性も低くはないわけだし……。

ここでも謎は深まるばかりかとディルクは嘆息したいような気持ちになった。

テアのことを知りたい、と思う。何よりも、彼女を守るために。

しかしそれもディルクのエゴでしかない。

もっと距離が縮まれば、テアはディルクに打ち明けてくれるのだろうか。

けれど、距離が縮まるということは、テアをディルクの運命に、危険に巻き込むということをも意味していて――。

ジレンマを覚えるディルクの一方で、ローゼも頭を悩ませていた。

もしかしたら父が動いたのかもしれない。それとも、テアの後見人だろうか、とディルクと同じようなことを考える。しかし、テアの後見人はロベルト・ベーレンスの楽団の一団員だという。一楽団員がそこまでの力を持っているということはまずないだろう。それならば、やはり父であるモーリッツ・フォン・ブランシュか。しかし、彼がそこまで手を回せるかというと、娘であるローゼは首を傾げたくもなるのだ。別にモーリッツの力量を低く見ているわけではない。モーリッツは一領主として政治も担うし頭も切れる方だが、結局は武の人であるから、そこまで新聞やら雑誌やらのメディアに対して強いかというと少々疑問を覚えるのである。

――けれど、それならばもしかして『彼ら』が……? けれどそんなことがあるのでしょうか……。いえ、もしそうだとしたなら、一体何がどうなって……。

分からない。多少なりとも事情を理解しているローゼだからこそ、中途半端な把握のために余計に事態が分からなかった。

「……まあ、でも、ともかく」

嘆息しながら、ローゼは口を開いた。

「誰が新聞社に圧力をかけたのか分かりませんが、当面は安心できる……というわけですよね」

「そうだな……。テアが直接取材を受けずとも、生徒たちが余計な噂を彼らに吹きこむ可能性などもあるが、何らかの圧力が本当に存在しているなら、しばらくテアのことを追究するような記事はどこの新聞雑誌にも見られないはずだ。テアがその気にならない限りは」

二人は前向きに事態を考えることで同意する。

「とりあえず、ディボルト氏のことはテアには内緒にしておきましょう。余計な心配をかけることはないでしょうから」

誰に言われるまでもなく、テア自身既に警戒をしているだろうし、それがいいだろうとディルクは頷いた。


そんなことがあって、ますます早足で帰路を辿ったローゼとディルクだったのだが、穏やかなテアの様子を見る限り、今日一日特に妙なことはなかったようだ。

お帰り、と告げるテアとライナルトに、ただいま、と返しながらローゼとディルクは近付き、いつもの四人が顔を揃えることになったのだった。




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