第2話 幼馴染のキャシー
続きです。
えっ?ちょっと待って!
一回落ち着こうじゃないか。
まず、ジョンはキャシーに告白をしにきたわけだ。
そして出てきたのは、小学校高学年くらいの女の子。身長は145㎝くらいかな。
それでだ、いまの俺はジョンになる前の外見より少し若くした感じ・・・黒髪を短く切り整え、ツーブロックを入れ前髪を少し立てさせることで、彫が深い顔つきを際立てさせつつも幼い頃に大人っぽく見えた印象を髪形で若々しさを出しているおかげで18歳ぐらいに見えるはずだ。身長は175㎝。
つまり・・・アウトだな。
いや、ちょっと待てよ。
まだ本人から名前を聞いていないではないか。
よくよく考えれば「幼馴染」というパワーワードが出ただけで、もしかしたら妹かもしれない。
さて、どうやって確認「やぁ、キャシー。今日も一段と可愛いね。」
どうやってコイツを仕留めてやろうか・・・
はぁ?なんなんだジョン。
お前の頭は沸いているのか?
急にこんなちっちゃい子相手に可愛いとか言い出すし、しまいには告白するつもりでいるし、もうヤバい奴だぜジョン君よー。
「ふ、ふんっ。そんなこと言っても騙されないんだからね!ジョンはいっつもそんなこと言うけど、ほんとはそんな事思ってもいないんでしょ?」
亜麻栗色を二本の輪ゴムのようなもので縛ったツインテールのキャシーがいかにもツンデレっぽい感じでそんなことを言った。
ジョンよ、確かに可愛いかもしれん・・・。
だがな、それは数年後の話だ。
今から告白はお前ぶっ飛びすぎだぞ!!
それに、ツンデレかよ!!
属性持ちすぎだろ!!
「そんなことないよ愛しのキャシー。僕はね、君のことが大好きなんだ。愛してるんだ。だから今日僕は、君に大切な事を伝えに来たんだ・・・。僕とお付き合いしていただけませんか?」
そんなキザで真っすぐなセリフが自分の口から漏れている事に鳥肌をたてながら、いつの間にか手に持っていたバラの花束をキャシーへと差し出す。
もう私のライフはゼロよ!!
「も、もうっ。そんな、世界一愛してるなんて・・・恥ずかしいじゃない。も、もちろん、私もジョンとなら・・・・・・いいわ。」
顔を真っ赤にした少し吊り目の可愛い女の子が、もじもじしながら上目遣いでそう言う。
もちろん可愛い少女です。はい。
でも、とても幼いですね。はい。
そして、世界一愛してるとまでは言ってない。
「ほんと!!やったぁー!これでキャシーとお付き合いできる!!」
ジョンは、ものすごくうれしくなって飛び上がり、ガッツポーズを決める。
「もうっ、はずかしいんだから・・・。」
キャシーはそう言うもののとてもうれしそうな顔をしていた。
こうして、18歳の一般男性と12歳くらいの小学生カップルというとても社会的にアウトな構図が出来上がった。
もちろん、本人の意思とは関係なく勝手に身体が動いていく。
そんな時―――――
ギャッギャッギャッギャッギャ――――
と町の入り口側から奇怪な声が聞こえてきた。
「あ、あれはっ――――ゴブリン!!」
キャシーちゃん?はそういうと急におびえ始めた。
それもそのはず、まだ12歳ぐらいなのだ。
おびえてしまってもしょうがないと思う。
「大丈夫だよキャシー、僕が君を護ってあげるからね!」
そう言って、ジョンはキャシーを隠すようにゴブリンの前に立ちはばかった。
もちろん、ジョンですらもゴブリンなどの魔物と戦うことは初めてだ。
足が震えてしまうのは、しょうがないことであった。
背丈は70センチぐらいであろうか。
身体は緑色に染まっており、見た目はちっちゃい人間に鬼のようなちっちゃい角が生えている感じだろうか。
いくら小さいとはいえ、見たこともない生物・・・そしてこちらに対してはっきりと殺意を向けてきている。
こんなのは怖いに決まっている・・・。
すると・・・急に身体が硬直した。
あれっ?どういうことだ??
こんな場合は、先手を取った方が有利になるというのに・・・
『緊急クエスト!!ゴブリンを倒せ!』
はいっ??
なにこれ?
★
なんだか、凄いことになってきた・・・。
お父さんはこれを日記として書いてるってことは、この変な世界にいたのかな?
それとも・・・・・・ただの妄想?
だったら・・・面白い!!
ササっと続きでも読もうかな!
「おーいっ!龍!そろそろ楓が飯作り終えるらしいから、食事を並べるのを手伝ってくれ!!」
リビングからお父さんの声が聞こえてくる。
しょうがないけど、続きはごはんの後かな?
「はーい!わかったー!」
僕はそう返事をして、本を閉じた。
しかし、その日記は人知れず先に進む・・・。
☆
なにっ!!
緊急クエスト?だって?
ということは・・・ここはゲームの中なのか?
それにしても、俺はなぜジョンの中に入ってしまっている。
とりあえず、この場を何とかしなければ先に進めないらしい。
それにしても、このタイミングでの戦闘は大体負ける。
もしくは勝ってもあまり意味がないパターンが多い。
おそらく、今はチュートリアル的な状況に違いない。
そのためにも、早く自由度の多い状態へと移行せねば・・・。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『ゴブリンを倒して、幼馴染を死守せよ!』
いきなり戦闘が始まった。
ってあれ?俺ってば何も持ってなくねえか?
●ジョンの攻撃
拳を振りかぶって殴りつけた!!
(イッてぇぇええーーーー)
ゴブリンに3のダメージ!
(いやいや、ジョンにも2のダメージだよ!)
●ゴブリンの攻撃
こん棒を振り回す!
(あっぶねぇーーー)
ジョンは回避した。
(いやっ!そりゃぁよけるだろ!!)
●ジョンの攻撃
拳を振りかぶって殴りつけた!
(おいおいおいおい!さっきと同じ右手かよーーー!痛ぇーーーよ!!)
ゴブリンに2のダメージ!
(ダメージ下がっちまったじゃねぇか!)
ゴブリンを倒した。
(いやいやいや!あいつ割とピンピンしてたぞ!!ただ殴っただけだし!)
『戦闘が終了した。ジョンは10の経験値を得た。レベルが2に上がった。』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「キャシー!大丈夫か!僕がゴブリンを倒したぞ!!」
右手は完璧にいかれちまったけどな・・・。
そう言って後ろを振り返る・・・。
「きゃーーー!」
そこには、2体のゴブリンに連れ去られるキャシーがいた。
「助けて―!!ジョン!!」
涙を流しながら必死に泣き叫ぶキャシー。
「待ってろ!!許さんぞ!!ゴブリンめ!!」
そう叫んだジョンは、2体のゴブリンに向かって走り出した!!
しかし、その行く手をふさぐように別のゴブリンが現れた。
「くそっ!!お前らの相手をしている暇はないんだ!!」
ジョンは、目の前に現れたゴブリンを回避すべく、迂回した。
〈ゴツンッッ!!〉
後頭部に強い衝撃と痛み・・・。
「キャ・・・キャシー――!!」
ジョンの悲痛な叫びがその場に響く。
「ジョ・・・ジョーーンッッ!!」
キャシーは必死に手を伸ばすが、ゴブリンに抱えられ自由の利かない身体では届かない。
ゴブリンに抱えられ、森の奥へと消えゆくキャシーの泣き叫ぶ姿を見ながら、自分にもっと力があれば・・・と思いながらジョンはその記憶を最後にゆっくりと瞼を閉じた。
基本的にこの時間帯の更新です。
更新ペースは1週間で1話をノルマで頑張ります。