転生
人。いや、生物は、
自らの身体を売り、金銭を稼ぐ。
身体を動かし、時に頭を使い、
時間や場所に拘束される事により、
我々はその代償として、通貨を獲る。
私の職業は、あまり表では良く思われていない。
だが、私のような者が居なければ、
"今日"という日を生きられない者もいる。
神々は我々に知恵を与えたが、
同時に格差も与えられた。
今日を生きれぬ者が物乞いをしていれば、
裏ではその者等が半年は暮らせるであろう金を、
一瞬にして、汚水に捨てる者もいる。
何とも理不尽な世界だ、
まあ、昔よりは良い。
私は"俗に"言う、転生人だ。
前世では、薄汚れた人間共に、
蔑まれ、追い込まれ、精神までも壊され、
挙げ句の果てに、、自殺した。
自殺が正しかったとは、言わないが、
私にはその選択肢以外は無かった。
弱かったのだ。
確実に。
弱く、
荒み、
憎み、
僻み、
己を、
『呪った』
私の話などどうでも良い。
私はこの世界に産まれる際、
ひとつの能力を授かった。
前世にも"それら"はあった。
だが、大半は気付かずに、一生を終える。
何故ならそれを見付けるのも、
また。
人生なのだから、、
有難い事に私は今。
現在に至るまで、"それ"を理解している。
それは、、
『罪に囚われない能力』
とでも言えるだろうか、、
何度も理不尽な思いをし、
卑劣な行為を繰り返し受け、
私の精神はどんどん磨り減った。
何度も殺す妄想を繰り返し、
そうして、終いには自らを殺した。
行動のみが罰せられ、
言葉や行為は煙と化す。
『死ななければ、
殺さなければ、
罪にすらならない。』
どんだけ苦しかったか、
どんだけ辛かったか、、
していた奴等は何とも思わない。
きっと今も平気で暮らし、
当たり前の様に次のターゲットを決め、
私の様に同じ事を繰り返すのだろう。
そんなものが通って良い訳がないのだ。
だから私は願った。
「どうか、、私に、
罪を取消す、力を下さい。
殺しても、何をしても、、
"罪に囚われない力"を、、」
こうして私は、今へと至る。
奴隷商人に拾われた私は、
奴隷として遣われた。
しばらく大人しくしていたが、
私はまず始めに商人を殺した。
何とも汚い液体がただ流れた。
臭く、醜く、ただの物体となった。
奴隷として捕らわれていた者を解放した。
「好きな所へ、自分の好きな様に、
己の残りの時間を自由に生きろ。」
そう言ったが、大半が残った。
私にはそれが理解出来なかった。
だが、答えは直ぐに出た。
何故なら彼等は自分が何をしたら良いのか、
それすらも分からなくなってしまったのだ。
正常な判断自体、出来ない様になってしまった。
「可哀想に、」
私は彼等をもてなした。
住処を与え、食事を与え、服を与え、、
彼等に自由を与えた。
そうすると、次々と私の元から去った。
「ありがとう。」
と、言い残し。
それでもまだ残っていた。
理由は様々だった。
デカイ角のある男は
「帰る場所が無い。」
と。
小柄の女は
「ここが良い、、」
と。
小さな子供は
「恩義の為」
と。
まあ、別に居るのも勝手だ。
自由に放っておく事にした。
こうして、現在に至る。