14日目「ネーミングセンスまではボク、ないからね!?」
「……で、アンタはなんでアタシを襲ったの?」
「……やだ。答えたくない」
「…ッ、へぇ?そんなに早く死にたいのかしら?」
「……お前じゃ、私は殺せないよ」
さっきから、ずっとこれだ。
「まあ、動機なんてどうでもいいのだけれど。それに…おそらくアンタはアタシと別の世界から来てるみたいだしね」
「……それは思った。体内を構成する魔素の性質が違う」
なんだろう。今、朱音たちはわたしの部屋で牽制し合っているのだが次元が違う。話している内容が非現実的だ。吸血鬼と氷の精霊と言うのだから当たり前だけれど。
そして、碧は逃げた。おねーちゃんに任せるね!とのこと。
「覚えておきなさい。アンタにはその内痛い目に遭ってもらうから」
「……上等」
あーあ。あの二人、すごくバチバチしてる。
視線に殺意を感じるもん。
飛び火がこっちに来ないといいなー。
「…そう言えば、アンタってなんて名前よ?」
「私?名無しよ。名前なんて精霊にあると思った?馬鹿なの?」
「はぁ?余程アンタの方が馬鹿じゃないの。凍らすしか脳のない単調な生き方じゃない」
「…ふざけないで。お前なんて、私の氷だけで十分よ。それに、慎ましいって言ってくれる?この貧乳」
「それはアンタもじゃない!アンタの胸よろしく、性格も慎ましければよかったのにね!」
うっ…心にグサグサ刺さる。わたしも決して大きいわけではないのだ。
「でもまさか、あの吸血鬼が人と馴れ合うなんて。落ちぶれたものね」
「なに?アンタはのぞみたちの良さも知らないのにそんなこと言うの?嗚呼、これだから精霊は嫌いなのよ……でも、名前がないのは可哀想ね……」
「……なんで私のことをそこまで気にかけるの?私はお前に対して何もしていないのに」
そこで、思いつく。覚悟しろ、弟よ。復讐の時間だ。
こっそり部屋を抜け出して、碧の部屋に突撃。
「…えっ!?なになに!?ちょっ…」
無理矢理手を引いて、わたしの部屋に放り込む。
「はい!碧、そこのペンギンちゃんの名前を考えてあげて!」
「…はあ?なんで、私が人間なんか……に……」
声の方向に顔を上げる彼女は、碧の姿を見て固まった。
「え?ボク、何かやった?ねえ、待って。この空気どうにかして?」
「…いいわ。その人間なら私の名前を預けてあげる」
彼女の中で何があったか分からない。でも、確かに許可をした。
「はぁ……拒否権は…なさそうだね。ええっとね…」
それから碧はこの世界での名前の仕組みを説明した。
「なるほど……つまり、姓と名が必要なのね」
「そう言うこと。それで、ボクのところは…」
「姓と名、両方考えて。それと、この貧乳短気幼女と同じ姓は嫌よ」
「なっ……アンタねぇ!」
「いや、でもそれでいいよ。これ以上倉橋を使わせるのはちょっと…」
「ちょっと!?ボクの身にもなってよ!」
頭を抱えて考え込む碧。数分後、何かを思いついたように彼女を指差す。
「空渡瑠凛!どうかな?」
「……なるほど、ブルースターの日本語名をもじったのね…いいんじゃない?」
「からわた…るり…いいわ。認めてあげる」
「ほんと!?よかったぁ」
「じゃあ、これからよろしくね。あおいおねーちゃん?」
おまけ
「ちょっと…離れてくれないかな?瑠凛ちゃん?」
「やだ、離さない」
「その…冷たいんだけど。物理的に」
「気のせいよ」
「ちょっとぉ!おねーちゃん、朱音ちゃん、助けて!」