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どうしてこんなに嫌われる…!?

※作中特定の方々が不快になるような表現が出る事が多々あるかもしれません。ご注意下さい。

未完結作品の為、まずは完結目指して頑張って投稿して行きたいと思います。

宜しければどうか、お付き合い頂ければ幸いです。

  ※

 



「どうしてこうなった…」



 その男はこれまでも数え切れない程口にしてきた言葉をまたも呟いた。

 ここは荒野で、それに応える者が存在しない事など、始めの数日でわかり切っていた。



  「一体…どうして…」



 飽きもせず譫言の様に繰り返す。

 荒野に放り出されて二週間にはなろうか…。既に思考は鈍化しており、体の反応も鈍く、それでも、足を動かせば誰かに出会えるかも知れないという希望だけがその体を支えていた。

 結局の所、男が欲しているのは問いに対する回答では無く、旅の疲れを癒す為の安全で暖かな寝床で有り、血を作る為の食事なのかも知れない。

 歩きながら肩に掛けた布袋から小袋を取り出し、中身を弄る。

 僅かに中身の入った水袋を取り出して、口に運んだ。乾き切った喉が悲鳴を上げて要求するのも気付かぬふりをして、ほんの一滴だけで口中を湿らす。こうして節約していながらも、水袋の中身はもういくらも残っていない。食糧はとっくの昔に尽きている。

 生憎の快晴続きで、その日差しが容赦なく体力を奪いにかかる。



  なぜ…



 そればかりが思考を支配する。

 死した魂が異世界に放り出され、たまたま出会いに恵まれ、保護を得ることができた。

 にも関わらず…、追放された。

 手に入れたはずの平穏だった。そこで出会った適当な相手と結ばれて、子供達に囲まれて寿命まで気ままに生きようと思っていた。

 創作の世界ではそうだった筈なのだ。折角手にした【異世界転生】という大きな転機。自分には明るい未来が待っている。そう信じていたのに…。



  「どうして…こうなった…」



 その声はすっかり掠れて自分でも聴き取れない程小さな物だったが、声がまともだった所で、どうせ聞こえる範囲になど人は居ないのだろう。と、自嘲気味に小さく息を漏らした。

 どうやら、ここまでの様だ、と感じる。実を言えばもう何度も感じてはいたのだが、その都度、あと少し、あと少しだけ歩けば、と自分に言い聞かせて来た。

 が、既にその気力も尽きた。

 もう一度手にした水袋に目をやる。



  「どうせ、大して残ってはいないが…」



 死ぬならせめてこの渇きは幾らか癒したい。

 思い切り噛みつく様に飲み口を咥えると、一気に煽る様に飲み下した。

 日も経ち、臭う気もするが、それでも体には少しばかり力が戻った。

 霞んでいた目に視力が戻った為か、遠くに村の輪郭のような物を見た気がした。



  あそこまでなら歩けるかも知れない。ダメならそのまま死ぬだけだ…



 そうしてまた自分を励ましながら足を再び踏み出した。

 前世の記憶も無いまま、この世界に「転生」させられたあの日から、もう直ぐ40日、簡素な荷物だけで村を追放されてから10日を数えようとしていた…。


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