親父には殴られまくってる系主人公
相手は三人。圧倒的に不利。
……なんてのは、実力がそれなりに見合ってる場合の話であって。
「で、まだやるか?」
「ひゃりません」
「かんべんひてくだはい」
「かあちゃんにしかぶたれたことないのに」
とりあえず相手の攻撃を避けながらひたすら顔面ビンタしまくってみたのだが、こいつら意外に根性があったらしく、顔全体が赤く腫れあがるまで音を上げなかった。
というか母ちゃんにはぶたれてるのか。
そりゃぶたれるようなことしまくってそうだけど。
「というかおまえ鬼か!? なんで人の顔をそんなにバンバンバンバン気軽に殴れるんだ!?」
「正当防衛だから」
「チクショウ反論できねえ!」
反論しないのかよ。
こいつら妙なところで素直だな。
やっぱりごろつきというよりただの不良か。
「というかさっき案内とか言ってたけど、観光客相手に案内できるようなもの、この辺りにあるのか」
「観光客? 誰が?」
「俺」
「ハハッ。ナイスジョーク」
「よし、顔出せ」
「ごめんなさいもう殴らないで!?」
手を叩きながらニヤニヤ笑いで言うのっぽがうざかったのでこっちも手を叩きながら言えば、余程痛かったのか顔を抑えながら後退った。
でも多分俺が観光客に見えないというのは真っ当な意見だよなあ。
そもそも教皇に観光して来いと言われただけで、俺自身の意思で観光しに来たわけじゃないし。
「えーと、坊ちゃ……お兄さんは何でこんなところに?」
「教会のお偉いさんにこの街を見て回れ的なことを言われてんだよ」
「やっぱ坊ちゃんじゃん」
「いや俺ただの農民だし」
「ただの農民がこんな強いわけないだろ!?」
「ぐう!?」
あまりにも真っ当な指摘にぐうの音が出た。
戦い慣れはしてなくても、喧嘩慣れはしてるであろう同年代とこんなに差があるとは思ってなかったし。
いやでも流石に子供の頃から訓練してる騎士の家系の人間とかならもっと強いんじゃないかなあ。
クラウディアさんとか俺と同年代の頃でも鼻歌うたいながらドラゴンなぶり殺してそうだし。
「しかし教会のお偉いさん? だったらアレ見せたいのかなあ」
「え? 心当たりあるのか?」
「一応ここにも教会あってさあ。歴史だけはこの街でも一番らしいんだけど」
「なるほど。案内してくれないか。駄賃程度なら払う」
「マジで! じゃあ銀貨10枚で!」
「よーし。受け取れ」
「やめて!? ふりかぶらないで!?」
明らかにぼったくりな額を提示してきたので、全力でお望みの銀貨を投げつけようとしたら三人揃って頭を抱えてうずくまった。
なんでこいつらは調子に乗って余計なことを言いまくるんだ。
「それレオンが言うなってつっこまれると思うよ」
なんかこの場に居ないはずのルーナのつっこみが聞こえたような気が。
……見渡してもどこにも居ないから気のせいだな!
というか気のせいじゃなかったら、こちらから見えないだけで常時監視されてるという事になるから恐いわ。
「冗談だよ。銅貨10枚くらいでいいよ」
「まだ微妙に高くないかそれ」
「やっぱ坊ちゃんだなあ」
「ここ結構物騒だから、俺たちが一緒にいるだけで少しはマシになるのも含めてだよ」
「なるほど」
つまり案内無しで進んだらこいつらみたいなのと次々とエンカウントする羽目になるわけか。
それなら多少割高でも仕方ないか。
そもそも観光案内の相場がどれくらいかとか知らないが。
「分かった。案内してくれ」
「へへ。毎度あり」
「お代は前払いで」
「信用できねえ……」
信用できないが、ここでごねて時間潰すのも無駄だし、どうせ教皇の金なのではらっておいた。
さて。この街で一番歴史のある教会とやらはどんなものなのやら。




